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相談室

このページは乳がんに関する不安や悩みを解消していくことを目的としています。皆様からの乳癌に関する情報、体験談、意見、質問などをお待ちしております。 なお、個人および病院への攻撃や中傷に関してはお答えできませんので、あらかじめご了承下さい。ご相談内容は  info@kbcts.gr.jp   まで、メールでご連絡下さい。
なお当相談室にお寄せいただいたメールについては、編集・引用・公開させていただく権利を当会(神奈川乳癌治療研究会)が有するものとします。また、名前、メールアドレス等個人情報保護の観点から、皆様から頂戴したご相談のメールは、一定期間の後、アドレスも含めて削除させていただいております。再度ご相談いただく際はその旨ご留意いただき、掲載No.を書き添えて下さるようお願い致します。

 

目 次
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No

日 付

名 前

件  名

担 当

400 01/02/13

くみ

ハーセプチン

須田
399 01/02/09

sumiyo

胸のはりについて

千島
398 01/02/09

arai

術後のこと

千島
397 01/02/06

Y.O.

胸の痛みについて

千島
396 01/02/06

K.Y.

葉状腫瘍の手術後に注意することは?

千島
395 01/02/04

katsura

病院へいったほうがいいですか?

千島
394 01/02/03

kazaha

ノルバデックスを服用中ですが・・・。

千島
393 01/02/03

T.M.

補助化学療法について

千島
392 01/02/02

K.K.

乳腺内リンパ腺炎

千島
391 01/01/31

H・M

術後の生活についてアドバイスをお願いします

須田
390 01/01/31

M.O.

しこりとただれ

須田
389 01/01/31

T子

抗癌剤をやめたい

須田
388 01/01/31

Y.H.

母の再発について

須田
387 01/01/24

A.H.

原因不明の痛み

須田
386 01/01/21

K.M.

他臓器転移の心配

須田
385 01/01/21

Y.W.

生検後の乳房・肩・首の鈍痛&不眠について

須田
384 01/01/21

H.E.

病理検査結果について

須田
383 01/01/20

yocha

左胸の痛み&炎症性乳癌

須田
382 01/01/20

MRE

乳がんでしょうか・・・。

須田
381 01/01/20

E.N.

乳腺症について

須田
380 01/01/18

りょう 

乳癌病期&妊娠について

須田
379 01/01/18

tanaka

痛いのですが…。

須田
378 01/01/18

S.M.

しこりと痛みがあるのですが・・・。

須田
377 01/01/18

H.M.

リンパ節転移について

須田
376 01/01/18

H.S.

私のケース

須田
375 01/01/16

Y.K.

術後抗癌剤について

須田
374 01/01/14

Y.O.

ホルモン療法他

須田
373 01/01/14

M.S.

南部病院の受診について

須田
372 01/01/14

A.S.

骨への転移及び術後治療

須田
371 01/01/12

H.H.

乳癌検査について

須田
370 01/01/12

いづみ

しこりはないと言われましたが・・・

須田
369 01/01/12

H.S.

乳房の分泌物について

須田
368 01/01/12

けい

手術後のしこり

清水
367 01/01/11

J.N.

左胸の下の痛みについて

須田
366 01/01/10

まき

胸のかゆみについて

須田
365 01/01/09

みっきー

乳癌検査について

須田
364-1
364-2
01/01/06
01/01/08

Y. O.

皮膚の湿疹、再発でしょうか?
皮膚の湿疹、再発でしょうか?(2)

須田
須田
363 01/01/03

S.T.

乳房からの分泌物

須田
362 00/12/31

A.T.

経過観察について

清水
361 00/12/23

みい

乳ガン?

清水
360 00/12/23

hisako

右胸の痛み

清水
359 00/12/22

H.M.

母親が乳癌の宣告をうけました

清水
358 00/12/22

A.I.

祖母の乳癌について

清水
357 00/12/22

Miki

手術後の傷口について

清水
356 00/12/22

hisa

母の状態について

清水
355-1
355-2
00/12/21
00/12/25

M.I.

骨への転移の治療方法について
骨への転移の治療方法について(2)

清水
清水
354-1
354-2
00/12/19
00/12/23

Y.M.

乳癌でしょうか?
乳癌でしょうか?(2)

清水
清水
353 00/12/17

M.I.

乳房外パジェット病

清水
352 00/12/17

mura

胸のしこりと痛みについて

清水
351 00/12/15

kei

9月に乳癌の手術をうけたのですが・・・

清水
350 00/12/13

N.O.

抗癌剤の効果について

清水
349 00/12/12

A.K.

乳癌検査について

清水
348 00/12/12

M.N.

右胸のしこりについて

清水
347 00/12/07

わた子

線維腺腫の経過観察中の妊娠について

清水
346 00/12/07

yumika

叔母の乳癌の再発について

清水
345-1
345-2
345-3
00/12/06
00/12/21
01/04/30

M.U.

九州でのハーセプチン療法
ハーセプチン療法について
心臓への転移

清水
徳田
福田
344 00/12/05

ayaaya

乳癌の可能性はありますか?

清水
343 00/12/04

M.T.

全摘・温存手術の選択について

清水
342 00/12/04

H.I.

咳をすると胸が痛みます

清水
341 00/12/03

Kyrie

悪性度について

清水
340 00/11/30

K.N.

妻の腹部のしこりについて

片山
339 00/11/28

AK

炎症性乳癌について

片山
338 00/11/28

Y.H.

手術後の分泌液について

片山
337 00/11/27

naka

ローヤルゼリーについて

片山
336 00/11/26

dori

右胸横のひきつれがあるのですが

片山
335 00/11/24

しお

しこりについて

片山
334 00/11/24

M.H.

抗エストロジェン剤の服用期間について

片山
333 00/11/17

M.S.

乳癌の骨転移について

片山
332 00/11/16

E.I.

右胸の痛み

片山
331 00/11/16

eriko

乳癌治療について

片山
330 00/11/14

M.O.

乳腺線維腺腫

片山
329 00/11/10

JIN

乳癌再発の心のケアーについて

片山
328 00/11/10

T.M.

乳癌患者の下着等について

片山
327 00/11/10

M.S.

抗癌剤投与後の白血球減少に関して

片山
325-1
325-2
00/11/05
00/11/07

S.Y.

診断書について(1)
診断書について(2)

片山
片山
324-1
324-2
00/11/03
00/11/05

ゆう

右胸の痛みについてお伺いします
微小石灰化って何ですか?

片山
片山
323-1
323-2
00/11/03
01/05/21

たの

断乳後のしこりについて
乳頭のしこりについて

片山
福間
322 00/11/01

K.Y.

姉のことなのですが---

片山
321 00/10/31

さとみ

乳房の痛み

稲葉
320 00/10/30

M.Y.

乳癌の治療方法について

稲葉
319 00/10/30

あゆみ

乳癌でしょうか?

稲葉
318 00/10/29

なつ

しこりと分泌物について

稲葉
317-1
317-2
00/10/29
00/10/31

Y.K

マンモグラフィ & エコーの写り方について
乳腺症と診断されました

稲葉
稲葉
316 00/10/29

syuumai

乳癌術後の治療方法について

稲葉
315 00/10/29

NISHI

良性だといわれたのですが...

須田
314 00/10/29

makichama

石灰化

稲葉
313-1
313-2
00/10/26
00/10/27

INA

乳癌だと宣告されました(1)
乳癌だと宣告されました(2)

清水
清水
312 00/10/26

K.M.

ノルバデックスについて

稲葉
311 00/10/26

K.N.

術後療法について

稲葉
310 00/10/26

C.M.

左胸と左脇の痛みについて

稲葉
309 00/10/25

Y.I.

乳癌の疑いがあります

稲葉
308-1
308-2
00/10/22
00/12/03

K.T.

乳癌と宣告されて(1)
乳癌と宣告されて(2)

稲葉
清水
307 00/10/22

K.S.

乳房のチクチクした痛みについて

稲葉
306 00/10/22

サリー

乳頭異常分泌の生検について

稲葉
305 00/10/18

K.Y.

乳癌手術と検査日程

稲葉
304 00/10/17

みかん

骨髄移植について

稲葉
303 00/10/16

J.T.

母乳なのか乳汁なのかわかりません

稲葉
302 00/10/16

M.S.

脇下リンパ腺の腫れ

稲葉
301 00/10/15

ゆん

乳房の変化

稲葉

 

No.400】 01年02月13日 くみ
ハーセプチン

新聞でハーセプチンについて載っていました。まだ日本では臨床実験中のようですが、これは抗がん剤の一種と考えて良いのでしょうか? 6ヶ月前に乳癌温存手術をうけ、今はノルバティクスを予防用に服用していますが、ノルバティクスの代わりになりますか? 教えて下さい。

乳癌には、癌細胞を増殖させるタンパク質(Her2/neu)が過剰に作られ、癌が増殖するタイプのものがあります。ハーセプチンは、このタンパク質の働きだけを効率的に攻撃するもので、正常な細胞にもダメージを与える従来の抗がん剤と比べて副作用も少なく、全く新しいタイプの抗がん剤です。しかしハーセプチンの効果が期待できるのは、この特定のタンパク質を多く持つ患者の場合だけで、まず、この薬が使えるタイプの乳癌かどうかを調べる必要がありますが、Her2/neu の過剰発現の頻度は、乳がんの約25〜30%と言われています。また欧米での臨床試験では、ハーセプチン単独では15%、抗がん剤との併用で平均60%(アドリアマイシン+シクロホスファミドとの併用で64.9%、パクリタキセルとの併用で57.3%)に効果があったと報告されています。
日本でも、現在臨床試験が行われているので、近い将来、新しい抗がん剤として承認されると思いますが、現時点では非承認薬であるハーセプチンを使うことのデメリットも考慮しなければなりません。承認されれば、患者の癌の特性に応じて、治療の選択肢が拡がり、治療効果も期待できるはずです。
また、ノルバテックスの代わりになるかとのご質問ですが、ホルモン療法剤であるノルバテックスとは作用機序も全く異なりますので、無理があると思います。術後療法については、それぞれの状態によって選択するものが異なってきますので、ご心配や疑問がある場合は、直接診察なさっている主治医の先生に充分お話しを伺ってください。(文責 須田)

 

No.399】 01年02月09日 sumiyo
胸のはりについて

32歳の既婚者、子供なしです。生理の予定日2週間前ぐらいからバストが張りだすのですが、昨年の11月頃に、知人が乳癌の疑いがあることを知り、それから神経質に気になりだして、自分も「乳癌になるのではないか」とか、「しこりがあったらどうしよう」とか、不安感も一緒に襲うようになりました。ほとんど、やる気もなく、食事もあまりできない状態になってしまいます。思い切って産婦人科で、子宮癌検診と乳癌検診(触診と、エコー)を受けて、異常はありませんでした。その他は、自己検診という形で自分で触ったり、主人にも触ってもらったりしています。でも、自分で触っても、あまりしこりというものにピンときません。ここまでしても生理の時になると、また不安感に襲われます。そこで、質問ですが、
@しこりの特徴を教えてください。
A手を上に上げると、骨みたいなのが、バストに乳首の上方にでます。これをよくしこりと間違えそうです。手を下げるとないです。
B一年に一回定期検診を受ければ大丈夫でしょうか。
このような相談を周りにすれば、考えすぎとか、心配ないとか言いますが、自分にしてみれば、生理の度このような気分になるのが、不安です。アドバイスお願いします。

知人の方が乳癌になられてから、「乳癌になること」をかなり気になさっているようですが、産婦人科で触診とエコーによる検診を受けても特に異常は認めなかったようなので、あまり神経質になりすぎないほうがよろしいと思います。日本人女性の乳癌罹患率は、約10万人に20〜30人と言われています。30歳前半の女性ならば、それよりもやや低いと考えてください。日本では1987年から老人保健事業計画により、30歳以上の女性は乳癌検診を受けるように勧告されています。おそらく貴女のところへも、市役所、保健所等からの乳癌検診の案内が送られてきていることと思います。そういう機会を利用して、最低一年に一回は検診を受けるように心がけてください。また、しこりの気になる症状を認めたときは、早めに近くの外科医院、もしくは総合病院の外科で検診を受けることをお勧めします。ちなみに乳癌は婦人科疾患ではなく外科疾患になるので、受診する際は外科へ受診することをお勧めします。
自己検診法についてですが、乳癌は一般に「痛みを伴わない石のように硬いしこり」として触知します。乳房が大きい人や、やや太りぎみの方は、「石のように硬い」というよりは「布団の下に石を置いたときの感じ」に近い感触です。生理前1週間くらいは乳房が張り、痛みを伴い、乳腺が硬く触れることが多いので、通常は生理終了日頃から2〜3日の間が自己検診に適しています。この時期に月一回のペースで自己検診をすると良いでしょう。自己検診法については、検診施設においてあるポスター、パンフレットを参考にして、一度専門の医師、看護婦に教えてもらうことをお勧めします。ご質問の中に「乳首上方の骨のようなもの」があるとありましたが、もしそれが左右両乳房に存在するなら、肋骨の可能性が高いと思います。もし左右差があるようでしたら、早めに近くの検診施設、もしくは外科を受診することをお勧めします。貴女の場合は、かなり乳癌について気を使っているようなので、もし乳癌が出来てきても早期に発見することが可能だと思います。これからも毎月の自己検診と、毎年一回の乳癌検診を続けていってください。だだしあまり気にしすぎると、精神的に疲労し、胃潰瘍、過敏性腸炎、ノイローゼなどの身体・精神症状が出るといけないので、検診で異常が無ければ、普段は乳癌のことを忘れるよう心がけてください。(文責 千島)

 

No.398】 01年02月09日 arai.
術後のこと

44歳、主婦子供なしです。よろしくお願いします。しこりの大きさ1.6センチで、リンパの転移なし、ホルモンレセプター両方共陽性です。核異型度2、核分裂は低いとの事でした。以上が検査の結果ですが、その他の検査の結果に断端陽性とか、陰性とか、というのが有るようですが何ですか? 硬癌なのですが割合おとなしいものだということです。硬癌は予後が悪いらしいですがおとなしいのも有るのですか?異型度、悪性度2というのは、おとなしい癌と言えるのでしょうか、1なら本当に安心ですが2というのは普通の癌でしょうか?
閉経前なのですが、術後の補助治療は、放射線25回とホルモン剤のタモキシフェンだけです。インターネットなどで調べると閉経前だとゴセレリンとタモキシフェンを組み合わせたり、軽い抗がん剤といっしょにしたりする所もあるようですが、私の場合タモキシフェンだけで大丈夫でしょうか? ゴセレリンというのもよくわかりません、どういうものなのですか、又軽い抗がん剤と組み合わせるとしたらどういうもので、先生ならどんな抗がん剤を使いますか。担当の先生は、たちの悪い癌ではなく転移もしにくいのでタモキシフェンだけで大丈夫とおっしゃいますが不安です。閉経前でも若い30代より44歳のほうが予後がいいということあるのですか、同じですか、担当の先生に聞いてみようとも思うのですが、薬のことしつこく聞いても失礼ではないのでしょうか? リンパのことなのですが13個取れたようなのですが、リンパ郭清というと全部取るのですか、担当の先生に聞くのを忘れました。13個だと全部ではないと思うのですが、残りのリンパに癌が残っているということはないのですか。リンパ何個取るというのはどういうことで決まるのですか、その人の病期にもよるのですか。以上よろしくお願いします。違う先生の意見もお聞きしたいのでこのような相談室があり感謝いたします。

手術術式に関しての記載が無いのですが、質問の内容から判断すると、貴女は乳房温存術とリンパ節郭清を受けた患者さんのようですね。リンパ節郭清にはLevelT〜Vの3段階に分かれています。どの程度まで郭清するかは、乳癌病変の位置、大きさ、進行度等から主治医の判断で決定されます。通常、腋窩(腋の下)には乳癌が初めに転移をしてくると考えられているリンパ節(見張りリンパ節という)があります。見張りリンパ節の多くは、LevelT郭清(一番簡易なリンパ節郭清術)で切除されるリンパ節の中に含まれています。貴女の場合は主治医の先生がどのレベルまで郭清されたか不明ですが、少なくとも郭清された13個のリンパ節には転移が無かったようなので、さらに奥のほうのLevelU、Vのリンパ節に転移がある可能性は低いと思われます。通常、リンパ節は周囲の脂肪に包まれるように存在しているため、手術中は腋窩の神経、血管以外の脂肪を可能な限り全て切除してきます。手術終了後に、その脂肪の中に含まれているリンパ節を拾い上げて、顕微鏡で癌の転移が無いかを検索します。リンパ節の数は人によって異なり、少ない場合は5〜10個、多い人は40個以上にもなります。

病理学的検索は、リンパ節転移の有無を含め、腫瘍の大きさ、癌の組織型、癌細胞の浸潤度(リンパ管、血管、周囲の脂肪・皮膚などの組織へ癌細胞が食い破って入り込んでいるかどうか)を調べます。施設によっては貴女の質問にあるように、癌細胞の組織学的悪性度を調べてくれる病理学の先生もいらっしゃいます。また、貴女のように乳房温存術を施行された患者さんは、切除断端(切除してきた乳腺の四隅)に癌が残っていないかを検索する必要があります。特に乳頭直下には癌が残りやすいので注意が必要です。断端陽性というのは、残された乳腺の中に癌が残っていることを、断端陰性というのは、残っていないことを示します。ただし断端陰性の場合でも、稀に離れたところに別の乳癌(多発乳癌という)が残っていることがあるので、一般的には残りの乳房に放射線を照射することになっています。乳癌の組織型の一つに硬癌というものがありますが、硬癌が必ずしも悪いとは限りません。現在、明らかに予後と関係している病理学所見は、リンパ節転移の有無と考えられています。これに関しては、貴女の場合は転移を認めていないようなのでご心配には及びません。年齢に関しては「若年者ほど進行が早い」と言われがちですが、乳癌の発見時期、大きさ等にも左右されるのではっきりした見解は得られていません。

術後にどのような追加治療を行うかは閉経前後で大きく異なります。その他の参考所見としては、前述のリンパ節転移の有無、ホルモンレセプターの有無、腫瘍の大きさ、組織学的悪性度等を考慮しながら補助療法(抗癌剤、ホルモン剤の投与法)を決めていくことになります。ここで出てきた「ホルモンレセプター」というものは、乳癌の女性ホルモンへの依存度を示しています。ホルモンレセプターを多く持つ乳癌細胞は、女性ホルモンにより増殖を誘発されるので、体の中の女性ホルモン量を少なくすればするほど癌の発育を抑えることができるのです。特に閉経前の女性では、卵巣機能が活発なため体内の女性ホルモン濃度が高くなっています。昔は女性ホルモンを排除するために、閉経前の女性の両側卵巣を摘出する手術を行っていましたが、最近はゴセレリン、リュープロレリンというホルモン剤を使って卵巣摘出と同じレベルまで体の中の女性ホルモン量を下げることが可能になりました。薬理作用については脳からのホルモン分泌をとめることによって、卵巣機能を廃絶させるもので、「化学的閉経」と呼ばれています。この薬は保険上は閉経全患者の再発乳癌(どこかに癌が転移してきた場合)とされています。術後の再発予防に関しては賛否両論があるので、貴女のようにリンパ節転移が無く、手術で切除できている乳癌には使用することは少ないと思います。そのために貴女の主治医の先生は、ホルモン剤としては女性ホルモンと競合して抗癌作用を示す、タモキシフェンだけを使用しているのだと思います。

貴女のお手紙から推測する限りでの一般的な術後治療について記載します。参考にしてください。

閉経前女性、腫瘤(1.6cm:T1c)、リンパ節(なし:N0)、転移(なし:M0)=病期T(早期乳癌)、切除断端(不明:一応陰性と考えます)、ホルモンレセプター:陽性、細胞学的悪性度:Grade2

これらの所見から判断しますと、放射線治療(50Gy(単位):通常25回のことが多い)、タモキシフェン、抗癌剤(主治医の判断で追加)ということになります。抗癌剤については、通常は5FU系の経口抗癌剤を使用しますが、貴女の病状では「投与しない」を選択する先生も多いと思います。

以上、一般的に言われていることを記載しましたが、患者さん一人一人で癌の性質、症状、体質、合併疾患等がまったく異なるので、画一的にどの治療法を選択するかは、必ずしも決まっているわけではありません。貴女の事情を一番良く把握しているのは、あなたの主治医の先生なので、疑問や心配事があったら積極的に主治医に相談することをお勧めします。決して主治医の先生も迷惑とは思わないことと思います。私たちは患者さんの質問に答えることで、患者さんがわかりにくいこと、心配していることなどが理解できるので、今後の診療に役立つことも多いのです。(文責 千島)

 

No.397】 01年02月06日 Y.O.
胸の痛みについて

23歳の独身です。最近、左胸の痛みが気になるんです。生理が始まる3日くらい前から急に痛みはじめて、生理が終わった今でも、たまに左胸がズキッと痛みます。乳輪が少し腫れているようにも感じるんです。また、前から胸の大きさは左右違っていたんですが、乳頭の向きも形も少しだけ違うんです。両方の胸の乳首の近くに湿疹のような出来物もあります。しこりも、はっきりとは分からないんですが、あるみたいです。かゆみや分泌物等は無いんですが、とても心配です。病院に行った方が良いのでしょうか? ぜひ、教えて下さい!

胸痛、乳房痛についてのQ&Aは、相談室に多数掲載されているので、いくつか参考にしてみてください。
貴女がご心配なさっている乳癌は、「痛みを伴わない石のような硬いしこり」として発見されることが多いようです。一般に若い女性の性周期に伴って生じる乳房痛は、女性ホルモンの影響から来るものがほとんどです。生理開始前(人によっては2週間くらい前)から生理終了後(人によっては1週間くらい後)までの痛みについては、多くの女性が抱えている悩みのようです。痛みの程度は片側であったり、両側であったり、また乳房全体の鈍痛から、一部分がチクチク痛むまで、人によって様々です。毎月同じような痛みが続くのであれば、まず心配には及びません。我慢できないような痛みの場合は、鎮痛剤等を飲んでコントロールしてみてください。
ほとんどの女性は乳房の大きさに左右差があります。人によっては片方の乳頭のみがくぼんでいたりすることもあります。長い間変化が無ければほとんど問題はありません。乳房、乳頭といえどもあくまで皮膚の一部です。汗腺(汗を分泌する器官)や体毛は、他の皮膚面と同じように存在します。特に乳頭の周りは毛根や汗腺が多いので、多少でこぼこしていても心配はありません。「最近片方の乳首が引っ込んできた」、「最近片方の乳頭から赤い液体が出てくる」、「片方の乳輪の周りがただれている」等の変化が起こってきたときは、早めに専門医の診察を受けるようにしてください。(文責 千島)

 

No.396】 01年02月06日 K.Y.
葉状腫瘍の手術後に注意することは?

25歳の大学院生です。22歳の時、右胸(乳首と脇の中間くらい)にしこりを見つけました。1年後に近所の総合病院の胸部外科で検査を受け、レントゲン、マンモグラフィー、超音波、細胞検査(針を刺して細胞を採取)の結果、線維腺腫とわかりました。その時の大きさは1.5×2cmで、経過観察することになりました。3cmを越えるか、いきなり大きくなってきた時は、すぐ来るようにと言われました。昨年7月、しこりが大きくなっていると気付き、慌てて病院へ。触診の結果、「今後、しこりが大きくなることはあっても、小さくなることは考えにくい。今なら傷口も小さくて済む。摘出しよう」と言われ、頭の中が真っ白に・・・、悩んだ末、8月に外来で、局所麻酔で1時間の手術を受けました。組織学検査の結果、葉状腫瘍。局所再発しやすいので取り残しがないように正常な乳腺も余分に取る必要があり、全身麻酔で2時間くらい、3泊4日の入院で手術を受けました。また、1回目の手術後、同じ右胸(乳首と鎖骨の間、乳首寄り)に、ごく小さいしこりを見つけ、超音波でも確認しにくいものの触れば確かにあるということで、一緒に摘出してもらいました(「線維腺腫のなりそこね」だった)。結局、8月の間に2回も手術し、2ヶ所の傷ができてしまいました。
手術後、気になる点がいくつかあるので質問します。
@傷口が目立たなくなるのに、どれくらい日数がかかりますか? 葉状腫瘍の方は4cm、小さい方は2cm、いずれも5mm幅で、紫がかった茶色です。お風呂に入ると赤くなります。
Aしこりを見つける前からの話ですが、乳輪のいぼ状の部分から白くて細いものが出てきます。例えるなら、鼻の角栓(こめど?)のような物体です。乳首をつまむと出てくる時もあるし、何もしていないのに出ている時もあります。しこりと関係あるのでしょうか?検査の必要はありますか?
B夏に手術を受けたこともあり、術後しばらく手術した右側の乳房を中心に、にきびがいっぱいできてしまいました。今でも胸から背中まで、びっしりにきびがあり、治りません。手術で、体内で溶ける糸を使ったと聞いていますが、にきびと何か関係があるのでしょうか?
C術後、生理の周期が少し乱れ、基礎体温もばらばらです。以前は生理の前から胸が張る感じがあったのに、それもありません。排卵日と思われる日(生理と生理の間)と生理の前日、倒れるほどの腹痛と、水道の蛇口をひねって出すくらいの水下痢もあります。自分ではホルモンバランスの乱れではないかと思っています。以前は健康食品(粉末のざくろエキス)を飲んでいて、生理の周期も安定していたので、また飲んでみたいのですが、乳腺腫瘍や乳がんには女性ホルモンが影響するとも言われる一方、これらの植物性女性ホルモン様物質の摂取は乳がんには無関係(あるいはがん予防になる)とも言われているため、飲んでいいものか心配しています。主治医には「何でも食べていい」と言われていますが、大丈夫でしょうか?
D「胸が大きくなる」と言われる健康食品があります。前述のざくろエキスもそうですが、乳腺を発達させる効果のあるハーブをブレンドして作った錠剤などがあるそうです。これらの物質は植物生まれだから安心だとうたわれており、ちょっと試してみたいなぁと思っています。ただ、その影響で再発やがんのリスクが上がっては困るので、正しい情報を得た上で使用したいと思います。女性ホルモン様物質と乳がん(または乳腺腫瘍)との因果関係はあるのでしょうか?大豆にも同じようなイソフラボンが含まれているそうですし、大豆を食べてて乳がんになったなんて話は聞きませんが、どうなのでしょうか?
Eちょうど傷口がブラの上部分にあたることがわかり、汗をかくと傷口がかゆく感じることもあって、術後しばらくはノーブラで過ごすこととなりました。今年の4月から社会人なので、夏場にノーブラで出勤するのは抵抗があります。何か対策はないですか?
F私の姉も線維腺腫(約4cm)です。線維腺腫は比較的、若い人に多いが原因はわからない、と聞きました。遺伝性のある病気なのでしょうか?また、姉は年に2回通院し、大きさが変わらないので摘出していないそうです。無事に出産し、母乳も普通に出ているとのこと。私は手術を受けているので将来、妊娠した時のことも心配です。主治医は「手術を受けたことが原因で母乳が出ないことはないよ」と言っていますが、妊娠を機に再発する可能性はありますか?その際、手術はできるのでしょうか?
G寒い時、いらいらし始めた時、高い所の物を取ろうと腕を伸ばした時、かなり痛みます。古傷はいつまでも痛むと言われますし、この傷の痛みもかなり長く続くのでしょうか?
以上、大変長くなりましたが、お返事を頂ければ助かります。ご多忙中とは思いますが、よろしくお願い致します。

貴女がお悩みの事項についてまとめてみると、主に2つの悩みに分類できると思います。
1.健康食品などの予防を含めた乳腺葉状肉腫および線維腺腫の病気に関すること
2.術後の傷口、肌の状態、服装に関する美容的なこと
まず病気についてお答えします。乳腺線維腺腫は一般に若い女性(20〜30歳代)に好発する乳腺腫瘤であり、この物自体の悪性化は非常に稀だと考えられています。線維腺腫は癌のようにたった一つの細胞が起源になっているのではなく、いろいろな種類のいろいろな細胞が集団で増殖している”しこり”と考えられています。一方、葉状肉腫は比較的高齢(30〜40歳代)の女性に多く、”しこり”の起源はたった一つの細胞から始まっていると考えられています。それゆえに増殖速度も速く、一つの細胞でも残っていれば再発してくる可能性があります。主治医の先生が追加切除をなさったのも、取り残す細胞がないように慎重に治療を進めたためと思います。
一般に線維腺腫は女性ホルモンの影響を受けると考えられています。つまり閉経に達するまでは増殖する可能性があります。症例によっては妊娠で大きくなることもあるようです。前述のように悪性化することは稀なので、基本的には経過観察でかまわないのですが、貴女の主治医もおっしゃったように、あまり大きくなると乳房の形が変形したり、摘出したときの傷が大きくなって目立つので、通常は2cmくらいの大きさをメドに摘出することが多いようです。葉状肉腫については女性ホルモンとの関係は定かではないようです。しかし葉状肉腫は、1)閉経後の高齢者にも発生すること。2)高齢者ほど悪性化率が高くなることを考えると、線維腺腫ほどはホルモン環境に依存していないのかもしれません。
大豆と乳癌の関係ですが、大豆に含まれるイソフラボン(ゲニスタインとダイゼイン)は植物エストロゲンの一種で、理論的にはエストロゲンの受容体で生体内のエストロゲンと競合することで、エストロゲンによる乳癌の増殖作用を抑制する可能性があるようです。作用機序としては乳癌術後に使用するホルモン剤の「タモキシフェン」という薬に似ているところがあります。またイソフラボンはエストロゲン作用だけではなく、細胞への直接作用(チロシンキナーゼという酵素の阻害)によっても癌を抑制する可能性もあるといわれています。しかしこの研究については一定の見解は得られていないようです。最近までに閉経前の女性について、大豆と血清女性ホルモンに関する研究は報告されていますが、血清女性ホルモンが減少したものが2つ、逆に増加したとするものが2つ、変化が無かったとするものが1つです。閉経後の女性について、大豆と血清女性ホルモン(エストラジオール)に関する研究では、大豆摂取によってもエストロゲン値に変化はないとのことでした。理論的には血清エストラジオールが減少すると、乳癌のリスクは下がりますし、上昇すればリスクがあがることになります。いずれにしてもこれらのことについては理論上の問題であり、乳癌患者の術後、もしくは乳癌リスク患者に対しての予防等に関して大規模な臨床研究で明らかにされた事実はまだありません。結局のところ、植物性エストロゲンを含めたホルモン様作動物質と乳癌の発癌リスク、予防効果に関しては、あくまで理論上の問題なのではっきりとしたことは言えないようです。健康食品摂取の可否については、医学的には良いとも悪いともいえないのが現状です。少なくとも販売する側からは、”良い”と言われる部分しか強調してこないので、最終的にその食品を受け入れるか、受け入れないかは個人の判断にゆだねるしかありません。ちなみに蛇足ではありますが、私の友人であるアメリカ人研究者が、大豆とホルモンの関係を信じて毎日毎日豆腐ばかり食べていましたが、結局、上記のような理由から、今は豆腐の摂取は止めたようです。最近は理由は特に聞いていないのですが、はと麦とニンジンばかり食べているようです。
質問Fについてですが、線維腺腫と遺伝については明らかな関係は報告されていないようです。遺伝因子というよりは食料や生活習慣等の社会因子のほうが関係しているかもしれません(これについてもはっきりとした研究はされていませんが・・・)。ただ線維腺腫に関しては前述の如く、妊娠を契機に増大傾向を示す症例もあるようなので、再発、もしくは新しい発生のきっかけになる可能性はあるかもしれません。母乳に関しては、今回の手術創の位置が乳頭に近ければ、母乳の分泌に影響することもありえます。逆に乳房の端のほうならば、まず母乳の分泌に影響することはないと思います。
次に傷口に関しての質問にお答えします。この領域は美容形成外科の領域なので知り得る知識の範囲で簡単にお答えします。傷口に関しては体質によって傷が広がりやすい人と、目立ちにくい人がいるようです。もちろん手術のときの縫合方法にもよりますが、貴女の主治医は「溶ける糸」を使用して下さったようなので、可能な限り形成外科的に縫合して下さったのだと思います。質問@に関してですが、人によっては半年くらいで傷が目立たなくなりますし、何年経っても肥厚性瘢痕が残る人もいます。また患者さん自身の受け取り方でも違ってくるもので、ある人は気にならない傷でも、ある人にとっては我慢ができないこともあります。一般に傷を目立たなくするためにはいくつかの方法があります。
 1)傷が蚯蚓腫れのようになりやすい人には内服薬、もしくは貼り薬等があります。
 2)傷の幅を広くしない、傷の色を濃くしないためには、美容形成で使用するテープを張って予防する方法があります。
いずれにしても、傷口に刺激を与える(日光、化学物質等)ことは避けたほうが無難だと思います。質問Eのように下着が機械刺激になることもあるので、あまり傷口にぶつかるようならば、下着のつけ方、形等に気を使われるほうがよいと思います。傷自体は乳房でも腹部でも基本的に同じで、質問Gの様に緊張がかかるとひきつれることもあると思います。昔から「古傷が痛む」という言葉があるように、梅雨時のように湿気が多かったり、冬場の寒いときなどには違和感を感じることも多いようです。いずれにしても、気になるような傷が形成されているようならば、形成外科の先生に相談してみることをお勧めします。
最後に質問A、Bについてお答えします。乳輪の近くにはアポクリン腺という、皮脂性の分泌物を産生する器官があります。貴女がおっしゃるように、この器官は腋の下、鼻など油分を分泌するところには体中のどこにでもあるものです。乳房のしこりとはまず関係はないと思いますが、もし気になるようでしたら一度主治医の先生に診察してもらうことをお勧めします。にきびに関しても乳房のしこり、ましてや縫合糸との関係は無いと思います。しばらく薬用石鹸などを使用して改善傾向がないようでしたら、一度皮膚科の先生に相談してみることをお勧めします。
私は文章からの推察でしか質問にお答えすることはできないので、もしお悩みのことがあるようでしたら、手術治療、術後の経過観察をしてくださっている主治医の先生にも相談してみてください。きっとよい解決方法を見つけてくださることでしょう。(文責 千島)

 

No.395】 01年02月04日 katsura
病院へ行ったほうがいいですか?

29才で子どもが一人います。平成11年4月に出産し、1ヶ月くらいして母乳が出なくなり、胸がだんだんはらなくなって小さくなっていったころに、胸の内側(谷間のあたり)に1センチくらいのしこりのようなものがあるのを見つけました。その時は気になり、とりあえず婦人科でみてもらいましたが、はっきり何かわからず、看護婦さんが「脂肪のかたまりじゃないの、私もあってとったことがあるんよ」といわれ、それから何ヶ月かしてさわってもわからなくなったのでそのままにしておきました。今もさわってもしこりはわかりません。しこりはなくなることはないですよね。何なのでしょうか?最近乳癌ではないのかと気になるようになりました。病院に行ったほうがいいでしょうか。

直接診察させていただいてはいないので正確なことは言えませんが、質問の内容から推察すると、貴女の「胸のしこり」は比較的やわらかかったのではないでしょうか?もし胸のしこりが乳癌ならば石のように硬く触れることが多く、一般的に消失することはありません。若い女性、特に授乳中、授乳後の乳房内に出現する比較的やわらかい腫瘤に「乳瘤」というものがあります。これは乳腺内で作られた母乳の一部が、乳頭からうまく排泄されず、乳房内で「溜まり」を作ることによってできたしこりです。このようなしこりの多くは、自然に吸収されて消失してしまいます。その他若い女性ならば、性周期の時期によって正常乳腺が「しこり様」に触知することもあります。現在もしこりは触れず、しこりが消失してからかなりの期間が経過しているようなので、乳癌の可能性は少ないと思います。しかし、20歳代の乳癌患者もゼロではないので、「最近乳がんではないのかと気になるようになりました」ということならば、不安を解消するためにも、一度専門の先生に検診していただくことをお勧めします。(文責 千島)

No.394】 01年02月03日 kazaha
ノルバデックスを服用中ですが・・・。

はじめて相談させていただきます。2年まえの7月、乳がんのため温存手術をうけました。進行度は、皮膚浸潤があったため、(大きさは、1センチくらいでした)bと診断されました。リンパ節の転移はなし、ホルモンレセプターはプラスでした。術後の治療は、放射線治療と、その後、フルツロンの服用、そして4週間おきにお腹に皮下注射を、去年の6月まで行っていました。その後、ボストンに転勤が決まり、その時点で先生と相談して、皮下注射からノルバデックスの服用に変え、現在はフルツロンと、朝、晩の1錠ずつのノルバデックスを服用しています。12月一時帰国して病院で検査しましたが、異常ありませんでした。しかし、先週、突然生理がはじまり、出血も一週間くらい続きました。お腹のいたみは特にありませんでしたが、なるはずのない生理があり、不安になりメールで相談させていただきました。現在、私は、まだボストンにいるため、病院にいって先生に相談できない状況です。6月には帰国予定ですが・・・。私の年齢は46歳です。こういうことは薬を服用していてもあることなのでしょうか?

おなかの皮下注射は人工的に閉経状態を作るホルモン剤と考えられます。これは脳にある下垂体というホルモンの中枢に作用して、女性ホルモンの産生を根本的にブロックしてしまいます。つまり卵巣を摘出してしまったのと同等の効果があるため、生理は完全に消失します。ただし、ホルモン剤の注射を止めると、6ヶ月以内に生理が再開することが多いとされています。一方、ノルバデックスは末梢において女性ホルモンと拮抗する薬で、基本的に卵巣での女性ホルモン産生は続いているので、閉経前の女性のように血中女性ホルモン濃度が高い人では完全に生理が消失しないこともしばしば見られます。 貴女の場合は、去年の6月で皮下注射を中止しているので、6〜7ヶ月経った最近、生理が再開しても何ら不思議なことではありません。特に生理が再開し始めた頃には、生理不順、不正性器出血等を認めることが多いので、一週間ほど出血が続いても心配する必要はありません。ただし、あまり出血が続くようでしたら、婦人科疾患も否定できませんので、一度婦人科で診察を受けることをお勧めします。もし不安が強く残るようならば、早めに帰国して主治医の先生のご意見を聞いてみてはいかがでしょうか?
言語、習慣、社会環境が異なる異国の地で、いろいろと心配なことが多いと思いますが(私も2年間 San Diego に留学して苦労しました)、最近はインターネットという「文明の利器」で世界中がつながれているので、一人で悩みを抱え込むようなことが無いように心がけてください。私たちもできる限りお力になれるよう精進いたします。(文責 千島)

 

No.393】 01年02月03日 T.M.
補助化学療法について

私の妻(48歳)についてご相談します。妻はBRCA1の異常を持つ家族性乳癌で、両側乳癌となり、右側がT2N0M0、左側がT1N0M0で、右はER(−)、PGR(−)、左はER(+)PGR(+)で、組織型はsolid tubular carcinomaです。卵巣も予防的に摘出しました。術後の化学療法が必要と考えられますが、以前からWBCが少な目で、3000ー3500/cmm程度しかありません。主治医の先生はCEFでいきたいとのことでしたが、WBC2600の値をみて、躊躇しております。私は、レジメの7割程度でどうでしょうかと相談していますが、確信はありません。CEFなどにおいて、WBCの減少の程度は、私には経験がなく感触がつかめません。現在は、G-CSFなどの支持療法が発達してきていてこの程度の白血球減少ではあまり問題はないものでしょうか。また、正規のレジメの7割とか6割とかでCEFをやるのと、UFT、タモキシフェンなどの経口剤とではどちらが再発予防に意味があると推測されますでしょうか。ほとんど回答不能のような質問ですが、ご意見お聞かせ頂ければ幸いです。なお、私は以前白血病を専門にしていた内科医です。

BRCA1乳癌に関してはaneuploidyなどが多く、生物学的悪性度が高い乳癌といわれています。その一方で、散発性乳癌との予後に差が無いとの報告も見られます。幸い奥様の場合N0であったとのことですが、再発のリスクを憂慮するならば、主治医の先生が勧めるように補助化学療法を施行することも一つの考え方だと思います。予防的化学療法は施設によってプロトコールが異なります。一般的にはCMFかCEFを施行する先生が多いようです。もし白血球減少を気になさるのであれば、first line として比較的副作用の少ないCMF(CPA, MTX, 5FU)を試してみるのもよいと思います。CEFに関しては一般的にhigh dose CEF(入院) (例;CPA 100mg, epirubicin 40mg/m2,5FU 500mg/m2)と、low dose CEF (外来)(例;CPA 100mg, epirubicin 30mg/m2,5FU 250-300mg/m2)とがあります。doseに関してはそれぞれの施設で差があると思いますが、「レジメの7割程度」ということであれば、low dose CEFを試してみるのも一つの方法と考えます。白血球は4000/cmmあることが理想的ですが、2000/cmm以上あれば化学療法を行う施設もあるようです。G-CSFのバックアップを必要とする可能性も否定できないので、初回は入院治療とし、採血を頻回に末梢血液像をモニターしながら投与することをお勧めします。いずれにしても主治医の先生とよく相談されてから化学療法を施行することをお勧めします。
奥様の場合は乳癌取り扱い規約第14版によると右がStageUA、左はStageTということになります。この場合、low dose CEFとUFT、タモキシフェンなどの経口薬による予防効果に関しては、どちらが有効かということは判断しかねます。ホルモン化学療法としてlow dose CEFを施行しながらタモキシフェンを投与しても可能なので、主治医の先生に相談してみてください。
先生も充分承知と思いますが、化学療法を施行するにあたっては、患者自身が「病気と闘うぞ!」という気力を持っていることが一番大切だと思います。先生のご経験、奥様のお気持ち、主治医の考えを十分に理解した上で、最も適した化学療法を選択してください。(文責 千島)

 

No.392】 01年02月02日 K.K.
乳腺内リンパ腺炎

しこりに気づき近所の病院へ行き、乳腺専門の先生がいらっしゃる病院を紹介していただきました。検査は触診・マンモグラフィー・エコー・細胞診をしました。マンモグラフィーでは乳腺がつまっていてしこりは見えませんでした。エコーで2個みつかりました。合わせて2cm×1.5cm位とのことでした。細胞診の結果はClass2のマイナスでした。所見として、「乳腺内リンパ腺炎」と書いて?してありました。先生は首をかしげてらっしゃいました。そして、「リンパ球が多数見受けられるが気になるので生検をすすめる」と書いてありました。リンパ球が多数あるというのはどんな場合が考えられるのでしょうか。またどういうことが気になるのでしょうか。関係ないかもしれませんが、だいぶ前から左首にしこりがあり痛みます。内科で診てもらったら、これくらいは誰にでもあるから気にしなくてもいいと言われました。左後頭部と首の間(うなじ辺り)にも2個程しこりができ、3〜4日微熱が続いたこともあります。それはウイルスに感染したのだろうとのことでした。左側ばかりしこりのようなものができるので少し気になります。何か関係あるのでしょうか。それと、先生は特に病名をおっしゃらず(乳腺炎や線維腺腫や水が溜まっている等)「1と2は良性です」とだけでした。これは良性だろうと思われるしこりがある、つまり特に病名は考えられず「しこり」いうことでしょうか。1か月後再診し、生検するかどうか決めようと思います。先生は「突発的にできたもので、小さくなればそのままにしておいてもいいと思う」と言われましたが、小さくなったら悪性の可能性はないのですか。また、そういうことはあるのですか。いろいろ質問してしまいましたがよろしくお願い致します。

細胞診でリンパ球が採取されることは少なくありません。今回の検査ではリンパ球が多数認められたとのことですが、細胞診でリンパ球成分を多く認める時は、次のようことが考えられます。
1.正常乳腺内のリンパ節組織を穿刺した場合。
2.乳腺が何らかの原因(細菌感染、乳汁うっ帯等)により炎症を起こしている場合
3.良性、悪性を問わず、腫瘍が増殖して周囲にリンパ球が集まってきている場合
検査所見を拝見していないので、はっきりとしたことは言えませんが、細胞診の結果でリンパ球成分が多いとのことなので、主治医の先生は診断として上記1か2を考えていらっしゃるのだと思います。乳腺炎や単なるリンパ節の腫大であれば、抗生物質、抗炎症剤の投与で消失する可能性もあります。しかし非常に稀ではありますが、乳腺から発生する悪性リンパ腫(リンパ球細胞がガン化したもの)もあるので、主治医の先生はそのことを心配なさっているのだと思います。頻度的には少ないのですが、しこりが大きくなってくるようならば生検等の検査が必要となる場合もあります。上記3の場合、乳癌(悪性リンパ腫を含む)にしても良性腫瘍にしても増殖性疾患なので、原則的には縮小、消失することはありません。経過を見ていて縮小するようならば炎症の可能性が高いので、主治医の先生がおっしゃるようにしばらく経過観察するというのも選択肢の一つだと思います。いずれにしてもしこりの状態が気になるようでしたら、早めに再診して主治医の先生に相談、質問みることをお勧めします。
首のリンパ節腫大との関係ですが、もし乳癌やリンパ腫の転移だとすると、乳腺内の腫瘤と同様、増殖して大きくなることはあっても消失することはありません。左の首から後頭部にかけてのリンパ節はリンパ流の関係から、虫歯(歯槽膿漏)があったり、扁桃腺が大きい人などでしばしば腫大を認めます。もし出現、消失を繰り返しているのならば、今回問題となっている「乳腺のしこり」との関係は少ないと思います。(文責 千島)

 

No.391】 01年01月31日 H・M
術後の生活についてアドバイスをお願いします

母(47歳)が病理検査の結果T1M0N0(期?)だとわかりました。しこりの大きさは8ミリで手術では乳房温存療法で5分の4ほど残してもらえました。放射線治療はするようですが、抗癌剤はうたないそうです。今後10年間、再発を抑えて上手に付き合っていくために、日常生活でした方がいいこと、してはいけないこと、また気をつけなければいけないこと等、アドバイスをよろしくお願いします。

病期を考慮しない場合、一般的に乳癌の手術症例の約25%に再発が認められると言われており、主な転移は骨、肺、胸壁、肝等です。また逆の観点から再発した患者さんを調べてみると、3年以内の再発が70%、5年から10年が20%、10年以上での再発が10%となります。主治医の考え方によっても異なりますが、今後10年間というのではなく、長期にわたってfollowすることが望ましいと思います。術後は、3〜4ヶ月毎の診察と腫瘍マーカーの検査、年1回の胸部X線撮影、肝エコー、骨シンチ等、定期的に検査を致します。主治医の先生の指示に従って術後の定期的なfollowを怠らないようにすれば、日常生活に関しては、あまり神経質にならず普段通りの生活を行って大丈夫です。ともすれば過敏になりがちな患者さんにとってはご家族や周囲の人達のささえがとても心強いもの、お母様の精神的支柱として、がんばってください。(文責 須田)

 

No.390】 01年01月31日 M.O.
しこりとただれ

最近右側の乳首の上部あたりが硬い気がして、横に寝てそのあたりを触るとコリコリしています。しこりの大きさ等は、そのあたりがコリコリしているのでよくわかりません。(その中で特に出ている部分はいくつかあるような気がしますが)ただ横に寝そべって人差し指で色々触っているとそのあたり全体が少し移動します。触っていると、どこだったか分かりにくくなることがあります。以前から皮膚が弱く乳輪部分がただれたりするのですが、これはステロイド軟膏でよくなったりします(悪くなったりの繰り返し)。皮膚の慢性的な疾患が直接ガンなどに結びつくことはあるんでしょうか?

頻度は低いですが、乳頭自体にも乳癌が発生いたします。症状としては、乳頭部がただれたり、治りにくい湿疹様の変化が起こります。また湿疹と同様に痒みを伴うこともあります。このような乳頭部の癌をパジェット(Paget)病といいますが、乳頭又は乳輪直下に発生した乳癌細胞が乳頭部に波及し、上記の症状を呈するものです。これは皮膚の慢性的な疾患が乳癌に移行するのではなく、乳癌の特殊な進展によって、皮膚の慢性疾患に似た皮膚症状となるのです。
貴女の場合、「乳輪部分がただれ、ステロイド軟膏でよくなったり,悪くなったりの繰り返し」とのことですので、勿論直接診察しなければ分かりませんが、Paget病の可能性を否定できません。不安を取り除く意味からも専門医(外科)の診察を受けることをお勧めいたします。(文責 須田)

 

No.389】 01年01月31日 T子
抗癌剤をやめたい

タキソテールを1年半やっています。効果はあるのですが脱毛、性、容姿の衰え、外見の変化に女性として精神的にうつになり、ノイローゼになりそうです。今後も効果のある限り使う予定ですが、やめたいと言ってもいいですか?

貴方の場合、副作用の出現が思った以上に強く出現し、苦しんでいらっしゃるようですが、術後療法における抗がん剤の効果と副作用の関係については、両者は相反するものであり、難しい問題です。効果と副作用を充分に検討して抗がん剤を使うことになりますが、乳癌のstage、病理、ホルモンレセプター等の予後因子についてのことも含めて、主治医の先生は根拠のある治療を考えていらっしゃることと思います。今一度、先生と充分にご相談なさって、「タキソテールをやめたいと思うほど悩んでいる」というお気持ちを正直に話してみて下さい。現在の状態を一番把握なさっているのは主治医の先生ですので、他の治療法も含めて、善処し、検討して下さるはずです。あきらめずに、前向きに治療を受けることをお勧めいたします。(文責 須田)

 

No.388】 01年01月31日 Y.H.
母の再発について

私の母は、H12年3月に左胸と脇の下のリンパ節を施術しました。術後は、2週間に一度のペースで、半年間抗がん剤を投与しました。その後の3ヶ月検診で再発(切除した傷の下に、赤い湿疹のようなものと、イボのような腫れがありました。どんどん広がりもう一方の乳房にも湿疹のようなものが出てきました)していることがわかり、今は放射線治療を週3回と、毎日朝と夜、食後に錠剤の抗がん剤を飲んでいます。炎症性乳癌だと思うのですが、今のところ他の骨や肺などには転移はないようです。放射線の先生は、良く効いています言っていますが、それにしても広がり方が早いのが気になります。また炎症性乳癌は予後が悪いそうですが、今の母の状態はどんな状態なのでしょうか。

メールの内容から推測しますと、皮膚に癌の転移が起こって、その病巣を中心に胸壁全体に癌が広がり、進行してきているものと思われます。直接拝見していないので詳しいことは分かりかねますが、乳癌病巣が胸壁でどのように進展していくかについては、一般的には以下のように考えられています。
1)癌が皮膚に向かって進行してくる前に皮下のリンパ管を食い破って進入し、癌細胞の塊がちぎれてリンパ管内に詰まることを“塞栓”と言います。このような状態になるとリンパのうっ滞が起こり、皮膚に限局性のむくみ(浮腫)が出現し、夏みかんの皮の表面のような感じになります。また細小血管に同様な事が起こると、血管が拡張し、赤く炎症を起こしたようになります。リンパ管や細小血管で以上のようなことが広範囲で起こり、更に進展していくものを「炎症性乳癌」と呼びます。
2)病巣より他の部位に飛び火することを“転移”と言いますが、この転移が病巣の周囲に起こると、皮膚にいぼのような腫れ(娘結節)を作ります。更に増殖していくと最終的には中心部の細胞が死んでしまい(壊死)、癌組織が脱落して潰瘍を作ります。
3)一方、病巣より更に深部へ癌が進展していくと、胸壁を巻き込み、癌が胸の壁に硬く固定されていしまいます。
今後の治療方針も含めてお母様が現在どのような状態であるかは、主治医の先生に納得のいくまでご相談なさって下さい。患者さんにとっては、周りの人達の支えが大きな力になりますので、前向きに治療を受けることをお勧めいたします。(文責 須田)

 

No.387】 01年01月24日 A.H.
原因不明の痛み

34才で出産経験はありません。1年ほど前から右胸に違和感を感じ始め、ここ半年くらいは痛みとなっています。右胸の上半分から脇の下にかけて、つっぱるような感じとズキズキする感じ(不定期)があります。また、強く押すと、筋肉痛のところを押したときのような痛み(常時)があります。痛みは、生理とは関係ないようです。(右胸のみで左胸には何の痛みもありません。) 昨年の9月に近くの病院で検診を受けましたが、触診のみでX線検査は行いませんでした(年齢がもっと高ければ行うとその医師は言っていました)。そのときの結果は、「乳腺のところにポコポコしたものがありますけど、心配ないでしょう。半年たってまだ心配なようだったら、また来てください。」とのことでした。その後も症状は変わりません。少しですがひどくなったような気もしますので、再び検診に行こうと思っているのですが、「もし癌だったら・・・」という恐怖感から、先延ばしになってしまっています。 私の症状は、癌の可能性が高いでしょうか?

胸痛については、相談室No.74に詳細に記載してありますので、そちらを参考にして下さい。ご相談の痛みの原因としてはメール内容から判断して、ホルモンの影響による「乳房痛」であることも考えられますが、「体性痛」の場合もありえると思います。乳房の痛みが乳癌の症状であることは稀ですので、おそらく乳癌の心配はないと思いますが、「体性痛」の場合も考えて、今一度主治医と充分相談なさることをお勧めいたします。不安を解消する意味からも早めに受診なさってください。(文責 須田)

 

No.386】 01年01月21日 K.M.
他臓器転移の心配

43歳子供1人(11歳)、現在配偶者なし。初潮14歳で生理はほぼ定期。2年前に腹部膨満感が強く婦人科を受診したとき、1センチほどの筋腫が見つかり、細胞診では核が肥大しているが正常範囲内とのことでした。乳房のしこりは若い頃からありましたが乳腺が張っているのだと油断して検査したことはありませんでした。もともとグラマーなのですが生理前は乳房全体が少し大きく硬くなり、特に排卵日ごろは触ると痛みが強いようです。1年程前恋人から「こりこりがあるよ」といわれましたが、いつもの乳腺の腫れと思って気にしていませんでした。今回、マンモグラフィーで左乳房に陰影が見つかり、細胞診の結果待ちです。自分でもいつから出来ていたのかわからず、なぜあの時すぐに検査しなかったのか後悔していますが、もしかして子宮筋腫と関係があるのではないかと心配です。今回の外科の受診では腋下リンパ節と甲状腺には異常はないようです(触診・エコー)といわれましたが、マンモで陰が2箇所あったのでもう目の前が真っ暗、娘一人残して死ねないと、最悪のことを覚悟しつつ検査結果を待っています。乳房が大きいので気づくのが遅れたことを反省し、今後もし悪性だった場合、他臓器転移をなんとしても食い止めたいので、留意点をご指導願いたくメールした次第です。また、乳房の腫瘍のうちどれくらいの割合が悪性の可能性があるのか先生の感触(とても答えにくい質問かもしれませんが大雑把な割合)をお聞かせくださればと思います。よろしくお願いします。

1)今回の症状と子宮筋腫との直接的な関係はないと思います。
2)ご質問の「乳房腫瘍の悪性の割合」についてですが、年齢によって割合が異なってきます。外来受診者における主な乳腺疾患(乳癌、線維腺腫、乳腺症)を年齢階級別に示した表が、【相談室No.83】に掲載しておりますので参考にして下さい。乳癌は35歳以上で増加傾向を示し、閉経後は、乳腺に腫瘤があれば、まず乳癌を念頭においた診察をした方がよいことが分かります。
3)他臓器転移(遠隔転移)について
乳癌の場合、腋窩リンパ節、胸骨傍リンパ節等、乳房周囲のリンパ節転移と区別するため、肺、骨、肝臓等の乳房以外の他臓器への転移を遠隔転移といいます。この遠隔転移があるということは、全身病になっているということを意味します。
乳癌は乳腺組織から発生するわけですから、当初は乳房内に留まっているはずです(局所病)。しかし、しこりとして認識して手術を行う時点での乳癌(臨床的に発見された乳癌)が、局所病であるかどうかについては、議論が分かれます。以前は局所病であるとの考えが主流でしたが、最近では全身病になっている可能性が十分あると考えられるようになってきています。従って乳癌の治療の基本は、局所療法(手術、放射線治療)と全身療法(化学療法、内分泌療法)の組み合わせで行うことになります。最近様々な薬物療法の新薬が開発され、全身療法を重視する傾向にありますが、手術だけでコントロールできる乳癌が50%以上存在することも事実です。術後は、1年に一度は胸部X線、全身の骨シンチグラム、肝臓の超音波検査等を行ってフォローしていくことになります。

以上、一般的な見解を述べましたが、貴方の場合、まだ検査結果が出たわけではありません。万が一、乳癌であったとしても、主治医の先生と充分ご相談の上、前向きに治療なさって下さい。(文責 須田)

 

No.385】 01年01月21日 Y.W
生検後の乳房・肩・首の鈍痛&不眠について

私の妻のことでご相談させてください。3年前に右側乳房にしこりがあったので病院で診察したところ左側にもしこり(生理のとき)が見つかりました。癌かどうかの検査(X線・細胞診・生検)を行いました。細胞診の結果、「左側が1%位がんの心配ありとのこと、37歳までなら生検の必要ないが」とのことであったが、後日両方のしこりを全部摘出し、検査の結果は良性の線維腺腫とのことでした。しかし今現在、左側乳房の鈍痛・左肩周辺の懲り等・左腕のつねられているような痛さと熱さが続いています。左側乳房(内)は、ブラジャ−をしていると痛さのため外さないとその場に居られないとのことです。日常ブラジャ−はしていません。尚、右側のしこりはとったはずが、術後同じ場所にあります。なぜかわかりません。鈍痛が治らない為、術後病院の先生に見てもらったが特に治療はなく痛み止めの薬をもらい、痛みは半年も過ぎればなくなるとのことでした。他の大学病院等で診てもらっても(X線検査)特に悪いところがないとのことです。妻のように痛みが続く人はいるのでしょうか?どのような治療をすれば治りますか、ご返答お待ちしています。
追記:鈍痛等の為、不眠が続きます。昼寝などはできません。

痛みについて“つねられているような痛さと熱さ”とありますが、これは灼熱痛(カウザルギー)と呼ばれるものと考えられます。外傷性の末梢神経の損傷後にみられる痛みです。奥様の場合、おそらく左乳房の線維腺腫が乳腺の末梢神経と接して出来ており、線維腺腫を摘出した際に、末梢神経の損傷が起こったのではないでしょうか。線維腺腫と神経があまりにも近くにありすぎて、やむを得ず神経に触れなければ線維腺腫を摘出することが出来なかったのではないかと推測されます。この灼熱痛は、神経損傷後、不定の時期を経て患部に灼熱的疼痛が起こり、ちょとした刺激で増悪しますが、冷却、加湿、安静によって多少は軽快致します。治療については、@安静、湿布等の物理療法、A罹患神経に対しての神経剥離、神経腫摘除、アルコール注入、B交感神経の遮断(麻酔科、ペインクリニックにて)等の方法がありますが、痛みを完全にコントロールするのは難しいかもしれません。(文責 須田)

 

No.384】 01年01月21日 H.E.
病理検査結果について

母がT1(7ミリ、遠隔転移の確率はほぼ0%との事)の乳癌を手術しました。病理検査の結果待ちです。病理検査の結果を聞く時に聞かなければいけない事、聞いておいた方がいい事を教えて下さい。また、専門用語についても疎いので例えば「ホルモンレセプターが陽性か陰性かを聞く」と言われてもそれが一体どういう事でなんのためなのかがわかりません、詳しくわかりやすく教えてもらえませんでしょうか? また、病理検査の結果が出るまでに抗癌剤治療が始まることってあるのでしょうか? この2つについて教えて下さい。

手術後1〜2週間で病理検査の結果が判明致します。また、手術による手術創が治癒するまで1週間程度かかりますので、一般的には、手術創の治癒後、病理の検査結果を踏まえて抗がん剤の選択を行い、治療を始めます。
次に病理検査についてご説明いたします。手術によって切除された乳腺及びリンパ節を含む腋窩の脂肪は、ホルマリン固定の後、専門の病理医が病変部を切り出してパラフィン包埋標本を作成し、次のような検索を致します。
1)リンパ節転移の個数
切除された腋窩脂肪組織の中には、一般的に10〜20個程度のリンパ節が含まれおり、これらのリンパ節のプレパラートを作成して、顕微鏡で癌転移の有無を調べます。リンパ節転移の個数が多いほど再発の確立が高くなるので、この転移個数は術後の再発の有無(予後)を予測する最も重要な情報となります。
2)乳癌の病理組織型
顕微鏡で見た乳癌のタイプ(病理組織型)を決定すると共に、浸潤度(癌の乳房内への広がりの程度)、癌細胞の分裂・増殖像、血管・リンパ管への浸襲像などを観察する。これらの情報は、癌の悪性度を判断する手がかりになります。
3)ホルモンレセプター(estrogen receptor, progesterone receptor)
エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター等のホルモンレセプターは、病理学検査とは別に、生化学的に判定されます。ホルモンレセプター陽性の癌は、陰性のものに比較して予後のいいことが分かっています。また、術後、再発後のホルモン療法の効果を予測する上で非常に重要な情報となります。
4)その他
腫瘍組織の癌遺伝子、癌抑制遺伝子の異常等を検索することもあります。このような検査はすぐには役立ちませんが、将来的な癌治療の進歩につながります。(文責 須田)

 

No.383】 01年01月20日 yocha
左胸の痛み&炎症性乳癌

35歳の2児の母です。最近左の胸が張ったように痛くて不安です。痛みも、授乳していたころみたいに時々すごく痛くなります。1日数回症状が出ています。でも触ってみると思ったほど胸は張っていません。先日、近くの婦人科に行き、触診ではしこりはなかったのですが、血液検査をしました。血液を取ってガンとかがわかるのですか?炎症性乳がんではないかと心配しています。炎症性乳がんとはどういうものでしょうか?

メールの内容から判断する限り、貴方の乳腺の状態と炎症性乳癌とは全く異なっていますので、心配はないと思いますが、不安を解消するためにも一度専門医の診察を受けることをお勧めいたします。またご質問の血液検査についてですが、炎症の程度を調べるためのものか、腫瘍マーカーをcheckしたのか等、詳しいことが分かりませんので、検査なさった先生に伺ってみてください。
次に炎症性乳癌について簡単にご説明いたします。進行性の乳癌では、癌細胞がどんどん増殖して、周囲の組織に対し砂に水が染み込んでいくような発育の仕方をします。これを「浸潤性の発育」といいますが、血管やリンパ管にこの浸潤性の発育が及ぶと、管を食い破って、癌細胞の塊がちぎれて流れ出し、皮内のリンパ管がつまる(栓塞)ことがあります。それによってリンパの流れがうっ滞し、稀に上部の皮膚に限局性のむくみ(浮腫)が起こります。また癌浸潤によって皮膚の微小血管にうっ滞充血が起こると、その部分の皮膚に限局性の発赤が生じます。以上のように皮膚の発赤や浮腫が広範囲に、急速に進展していくと、豚皮様またはミカンの皮様になり、急性乳腺炎に酷似した症状になります。このような特殊な進展を示す乳癌を「炎症性乳癌」といいます。(文責 須田)

 

No.382】 01年01月20日 MRE
乳がんでしょうか・・・。

31歳で6歳の子どもがいます。H8年、H10年に流産しました。そのときに、おっぱいを止める注射をしています。何年も前から左胸にしこりがあります。4年前に一度痛みが出て、乳腺外科でレントゲンと超音波で診察していただいたのですが、特に何もなかったので、そのままにしていました。去年の夏ごろから、またしこりが気になりだし、左肩が腫れてきています。もともと胸がかなり大きいほうで、排卵日〜生理までは更に胸が大きくなりしんどいくらいです。生理が終わると胸も小さくなりますが、最近は生理が終わったあと、右胸より左胸のほうが大きいです。しこりは、乳輪の中(奥)の方に細かいのがたくさんあり、乳輪の上の方には1cmくらいのしこりがいくつかあります。それは、左右どちらにもありますが、左胸の方がたくさんあるように思います。「主人は乳腺に触ってるだけちがうか?」と言いますが、右胸より左胸の方が全体的に硬いように思います。しこりはでこぼこしているように思います。乳がんの硬さがどんなものかよくわかりませんので、硬いかどうかがわからないのですが、どれも動きます。最近は気になって触ってばかりいるので、少し痛みがでてきました。乳首からの分泌液などは全くありません。もし乳がんであれば、左肩の腫れも関係ありますか? 深呼吸をすると、左背中の方も違和感があります。
田舎に住んでいて、近くの病院では乳腺外科の診察が火曜日の午後しかありません。来週の火曜日に一度受診するつもりでいますが、生理前でも大丈夫でしょうか? 子どもも小さいので、いろんなことを考えると不安でしかたがありません。これぐらいの説明しかできませんが、だいたいの病状はわかりますでしょうか? よろしくお願いいたします。

メールの内容を総合的に判断すると、貴方の場合は乳腺症だと思われます。乳腺症は30〜40歳代に多くみられ、乳腺組織の中に水のようなものがたまったり(のう胞症)、乳腺組織を構成する細胞そのものが増殖したり(腺症、乳頭腫症)、また両方の病変が混在するものもありますが、臨床的には硬いしこりとして触れます。硬いしこりとして触れた場合は、マンモグラフィーや超音波検査、穿刺細胞診を行っても乳癌との区別が難しいこともありますが、このような時は癌でないことを確認するために、乳腺の一部を切除して検査いたします。乳腺症の中でも細胞が増殖する病変では、乳癌の発生と関係のあるものもあり(乳腺症の10%程度)、生理後の乳腺の軟らかい時期に専門医の診察及び検査を受けることをお勧めいたします。また、痛みについてですが、痛みには周期性があって、生理前に強くなり、生理が始まると治ることが多いようですが、稀に生理とは無関係に痛む場合もあります。しかし、乳房の痛みが乳癌の症状であることは少なく、痛み自体はそれほど心配するものではありません。(文責 須田)

 

No.381】 01年01月20日 E.N.
乳腺症について

27歳、独身女性です。数週間前から、乳房に痛みがあり、最近しこりがあることに気づきました。気になって近くの個人病院に行ったところ、乳腺症と言われました。私は癌ではないかと気になったのですが、癌には痛みがないと言われたので少しホッとしています。治るのにどれくらいかかるのか、なぜ乳腺症になるのか等、乳腺症について教えてください。そんなに気にする事ではないのでしょうか?? よろしくお願いします。

乳腺は女性ホルモンの影響を受けているので、女性ホルモンの変化によって乳房が張ったり、硬いしこりになったり、痛みがあったりします。30代から40代へと年齢が進むにつれて乳腺組織も変化し、顔にしわが出来るのと同様に、乳腺組織の線維化が進み、乳腺組織の脱落が起こったり、増殖が起こったりして、乳腺が部分的に硬くなり、でこぼこした状態で触れるようになります。このような状態を一般的に「乳腺症」と呼んでいます。病理学的には、乳腺組織が老化する変化(退行性変化)、一部の細胞がある程度規則性を持って増える変化(増殖性変化)の混在した病変で、年齢と共に女性ホルモンの変化の影響を受けて起こったもので、治療が必要な病変ではありません。しかし、乳腺症の中で増殖性の病変には、将来的に10%程度は乳腺症から乳癌に移行するので、そのまま放置せず、定期的に検診を受ける必要があります。乳癌も硬いしこりなので、マンモグラフィー、超音波検査、細胞診検査を受けても、場合によっては乳腺症と区別がつきにくいことがあり、このような場合には、検査のために組織の一部を切除し、癌でないことを確認します。
次に「治るのにどのくらいかかるのか?」というご質問ですが、一般的には閉経後5〜6年で軟らかくなります。また、しこりがある場合は、良性であると診断されていても、最低年1〜2回の検診と、月1回の自己検診を行うことをお勧めいたします。(文責 須田)

 

No.380】 01年01月18日 りょう 
乳癌病期&妊娠について

99年10月に29歳で乳がんの手術(広範囲乳房切除・広背筋脂肪弁による乳房再建術)を受けました。 腫瘍は5×6cm ホルモンレセプター(−) リンパ節転移なし 
1)私の病期は何期なのですか? 放射線療法28クール CMF療法6クール(昨年の1〜6月まで)受けました。ホルモンレセプターがないためホルモン療法はしていません
2)これから妊娠・出産を考えてもいいのでしょうか?何か気をつけなければいけないことはありますか?

1)病期について
病期は主腫瘤の大きさ(T)、リンパ節の転移(N)、遠隔転移の有無の組み合わせにより決定いたします。貴方の場合、主腫瘤の大きさが5×6cmですので (T3)です。リンパ節転移がないので(N0)、遠隔転移もないと思われるので(M0)、すなわちT3 N0 M0病期StageIIBということになります。

2)乳癌治療後の妊娠について
妊娠すると胎盤より大量の女性ホルモンが出ますが、一般的に女性ホルモンは乳癌の発育を促します。手術でとりきれない乳癌があった場合は、妊娠することによって残った乳癌の発育を促すことになるので、妊娠はよくないと考えられています。リンパ節転移が陰性で、術後補助療法の必要がなければ、患者さんの希望に添う方向で考えますが、その場合でも一応術後6ヶ月程度は間隔をあけていただくようにしています。また、術後補助療法を行う場合には、2年間は避妊していただき、治療終了後1ヶ月程度あけることが望ましいとされています。それぞれの病状によって対応が異なってきますので、納得のいくまで主治医とよく相談なさることが大切です。(文責 須田)

 

No.379】 01年01月18日 tanaka
痛いのですが…。

38歳、既婚、子供1人。3日前から、右胸に触ると乳首の真下あたりが、じ〜んと結構長く、強く痛みます。しこりは無いように感じます。ふつうに触っても痛みは無く、下から上に向けてこするように触ると痛みます。生理前の胸の張りとは少し違います(生理が終わった直後です)。些細な事かもしれませんが気になります(こんな変な痛みは、初めてなので)。もし受診するのなら外科ですか? 婦人科ではダメでしょうか。宜しくお願いします。

ご質問の「胸痛」に関しては、相談室 No.74の回答を参考になさって下さい。多少なりとも乳癌のことを心配しているのであれば、外科を受診することをお勧めいたします。不安を解消する意味からも、一度見てもらってください。一般的に乳癌は外科で取り扱っています。(文責 須田)

 

No.378】 01年01月18日 S.M.
しこりと痛みがあるのですが・・・。

私は未婚の28才(女)で、喫煙者です。数量は3日で1箱ぐらいで、吸いはじめで8年ぐらいです。今日気づいたのですが、右胸の下の方に1cm位のしこりの様のものがあり、コリコリとしていて触ると少し移動し、痛みがあります。仰向けになって右腕を伸ばし、脇の下などを触りましたが、そこにはしこりのようなもなはなかったのですが、右胸のしこりが気になります。家族や親戚に乳癌になった人はいなかったと記憶しているのですが、一度検査をした方がよいかと思うのですが、すぐに診てもらう方がよいのでしょうか? また検査を受けるのは婦人科なのでしょうか? 教えて下さい。

乳癌患者の90%以上は、乳房に限局性の腫瘤(しこり)を触知します。地方自治体が行っている乳癌の集団検診は35歳以上の女性が対象になっていますが、理由は35歳以下では乳癌の発生が少ないからであり、貴方の場合は28歳とのことですから、乳癌の可能性は少ないと思われます。典型的な乳癌の腫瘤(しこり)は、単発性、一側性で、硬く、移動性はあまりありません。痛みについては、ある場合も、ない場合もあり、それぞれです。乳癌以外の腫瘤(しこり)性病変には、線維腺腫、のう胞、外傷性の脂肪壊死等が考えられます。しこりがある場合、一般的には乳房撮影、超音波検査、吸引細胞診を、更に必要であれば切除生検を行い、癌であるかどうかの診断を致します。少しでも疑わしい腫瘤を見つけた場合は、一連の検査をする必要があります。不安を取り除く意味からも、外科を受診し、専門医の診察を受けることをお勧めいたします。なお喫煙とは直接関係はありません。(文責 須田)

 

No.377】 01年01月18日 H.M.
リンパ節転移について

母のコト(47歳、5mmのしこりを1年前から半年ごとに観察、5月以来やはり半年ぶりの昨年11月に受診、5mmから8mmへ大きくなっていたので細胞診、結果、良性と思われた8mm強のしこりを切除(12月12日)、そのしこりの中から癌細胞が見つかり入院(1/11)、手術(1/16))で相談があります。
母が今日乳癌の手術を受けました。術前のインフォームドコンセントでは先生からT1のガンだと言われ、生存率も高い事を聞き(「遠隔転移の心配もほぼない」とのこと)、ほっとしながら母の手術が終わるのを待ちました。ところが術後、先生から手術の内容を聞いた時、「リンパ節をとった時に腫瘍が10コ見つかった」と言われました。この腫瘍はそのまま転移の数ではないようなのですが、初期だ初期だと思い続けて、今になってリンパ節に10個も腫瘍があったと聞かされ、ショックです。2週間後の病理結果で詳しい事がわかるそうなのですが、普通リンパ節にそんなに腫瘍はできるものなのですか?それともやはりそれらの腫瘍は乳癌が原因でできた物なのでしょうか?という事は「転移の数」と数えられる腫瘍がその10コの内にある確率が高いという事なのでしょうか? 2週間待たないといけない事はわかっていますが、リンパ節への転移というのがどういうことなのかわからないので教えて下さい。

乳癌の細胞がどんどん増えて、周囲の組織に対し木の根のように分け入っていく発育の仕方を「浸潤性の発育」といいますが、血管とかリンパ管にこの浸潤性の発育が及ぶと、管を食い破り、細胞の塊がちぎれて流れ出ていきます。リンパ管の場合、流れ出た細胞がリンパ節にひっかかり、そこで乳癌と同様の細胞が発育します。このように乳癌がリンパ節に“とびひ”することを“リンパ節転移”といいます。
お母様の場合、「リンパ節をとった時に腫瘍が10個見つかった」とのことですが、全体的な流れから推測すると、主治医の先生は以下のように説明されたのだと思います。
「乳腺と共に取り出した腋窩のリンパ節を触って調べたところ、硬く触れるリンパ節が10個ありました。乳癌がリンパ節に転移を起こすと、転移したリンパ節は硬くなるので、これら10個のリンパ節は、癌の転移の可能性がありますが、がん細胞は小さくて肉眼での判別が困難なため、専門の病理医がリンパ節のプレパラートを作成し、顕微鏡でリンパ節にがん細胞があるかどうかの確認を致します。リンパ節に転移があるかどうかの結果が出るまで2週間ほどかかります。」
病状を一番正確に把握されているのは主治医の先生なのですから、不安や疑問を解消するためにも納得のいくまでお話しを伺うのがベストだと思います。(文責 須田)

 

No.376】 01年01月18日 H.S.
私のケース

2度目のメールです。明日から入院します。7才、3才の子供がいます。ちょうど1年前に線維腺腫の手術をしました。大きくなっていた為(卵大)、細胞検査の結果良性との診断が出ていましたが、手術しました。その時摘出した腫瘍が、良性か悪性かという最終的な検査の結果を退院後の外来で聞きに行った際に、触診とエコーで胸の下の方に2個、また別なしこりが1cmずつくらいの大きさであることが判明しました。入院して手術したのに、その前になぜわからなかったのかと落ち込みましたが、「これならよく動くし、間違いなく良性の線維腺腫だから、時期を見て外来で処置しましょう」との事でした。その間、実家でたくさんの問題がありまして、しばらく外来に行けず、結局11ヶ月経った頃、大きさも気になってきたので、外来へ。細胞検査をして結果を聞きに行きました。結果は良性。でも前回とは別の先生が、エコーの映像が気になるとの事で組織検査をしました。前回の検査との間は20日しか経っていませんでした。結果は、悪性でした。前々からあることがわかっていて、良性との診断がついていたのに、すごくすごくショックでした。この時点でしこりの1つは、1.5cm、そしてもう1つは4cm位になっていました。細胞検査で良性との診断であっても、組織検査で悪性である事もあるのですね。私の場合、レントゲンでも全くわからないそうです。医師は、「医学の限界で、細胞検査がクラスTでも悪性が見つかる事もある」とのことです。ひどい落ち込みで、告知から1週間経ちますが、何も手につかない状況です。去年の暮れ、身内を癌で亡くしたばかりで、上の息子は「お母さん、死なないよね」と不安を隠せない様子です。このホームページに寄せられる数々の相談の中に、私のようなケースもあるということだけでも、参考にして頂きたいと思います。
@ 私は手術後、どのような治療が考えられるのでしょうか。2個のしこりは、2個合わせた大きさの腫瘍と考えるのですか? わきの下で1つ、あずき粒大のしこりに触れるといわれました。
A 同時に乳房再建手術をとの話がありましたが、金額はどのくらいなのでしょうか。
家族との幸せな生活の真っ最中…。前が全く見据えられない状況です。

メール内容から判断する限り、乳癌又は悪性の葉状腫瘍が考えられます。
1)乳癌の場合
現在、乳癌の標準術式として、2/3の症例で胸筋温存乳房切除術が、残り1/3の症例で乳房温存手術が行われています。乳房温存手術は、一般的には @腫瘍最大径3cm以下、A腫瘍乳頭間距離3cm以上、B著明な腋窩リンパ節転移を認めない、という3条件の下で行われ、広い癌の乳管内伸展、乳腺内多発癌、腫瘍外の広範囲な石灰化像、乳頭に癌が近接している、等のような場合は胸筋温存乳房切除術を行います。また術後はホルモン療法及び化学療法の単独、又は併用による全身薬物療法を行います。
2)乳腺葉状腫瘍の場合
好発年齢は30〜40歳代。腫瘤が小さい場合、触診、超音波検査、乳房撮影では線維腺腫と類似しており、診断は非常に困難です。また発育がとても速く、10cm以上になることも珍しくありません。悪性葉状腫瘍の頻度は約20%です。周辺組織をつけて摘出しますが、再発を起こしやすく、術後は経過を見ていくことになります。

貴方の場合、2つの腫瘍が乳癌であったとすれば、乳腺内の多発癌ということで,一般的には胸筋温存乳房切除術を行い、術後、全身薬物療法を行うことになると思います。
乳癌でないとすれば、前回、線維腺腫であったことから推察すると、今回も同様な構造をもった葉状腫瘍だと考えられます。これは、画像診断上、線維腺腫との区別が難しく、また切除した腫瘍を病理学的に調べても、しばしば悪性か良性かの鑑別さえも困難になっています。今回、悪性の葉状腫瘍であったとすれば、乳腺全摘か、又は乳房切除術を行うことになると思います。
ご質問の乳房再建についてですが、若年者層(40歳以下)では、希望があればシリコンバックや生食バックによる再建を行うことがあります。費用は健保3割負担で20万円程度です。また腫瘍の大きさですが、「乳癌取り扱い規約」では、一番大きいものが腫瘍を代表する大きさとして扱われています。いずれにしても主治医の先生と相談の上、希望を失わず、前向きに治療なさることが肝要です。がんばってください。(文責 須田)

 

No.375】 01年01月16日 Y.K.
術後抗癌剤について

乳癌の術前、術後の抗癌剤投与期間についてお尋ねします。45歳、5cmの乳癌という診断、この大きさになるまでに10年以上かかっています。その後、マンモや針検診後、一月後のエコー検査で、6cmと言われました(検査で大きくなると言われました)。癌が大きいので、私の希望で、術前にタキソールを投与して小さくしてから手術という事になりました。11月から、通院で毎週連続投与という事で始まりましたが、2週投与後白血球が少なくなり2週休みました。その後、白血球は安定して、今6週連続投与中です。このような、ゆっくり進行した癌は抗癌剤が効き無くいと聞きますが、そのようで最初少し小さくなったようですけど、その後は、そんなに変わらない様です。今月27日にエコー検査で大きさを見てから、2月に手術してもらうつもりです。抗癌剤はそれまで連続投与する予定です。全部で11回から12回投与してから手術になります。
お聞きしたいのは、術後の抗癌剤投与期間です。今のところ転移は無く、リンパは手術してみないと分らないそうです。その状態で、術後半年ぐらいタキソールを投与したいと言われました。それは長すぎるような気がします、まだ再発でも転移でもないのにそれ程長く投与して、再発した時抗体のようなモノが出来ないか心配です。勿論、副作用の事もあります。術前の抗癌剤投与は、術後とは別に考えるものなのでしょうか。ホルモン剤、ノルバデックスも補助的に飲んでいます。飲み薬の抗癌剤も5年と言われています。ホルモンレセプターの結果では、ホルモン注射5年も加わると思います。これらは標準より長いのではないでしょうか。以上、宜しくお願いします。

手術に先立って化学療法を行うことを「術前化学療法」といいます。一般的に、術前化学療法を行うのは以下の2つの場合が考えられます。
1)腫瘍が大きく、手術で切除するのが困難なため(stageV以上)、まず薬剤や放射線で腫瘍を縮小させてから手術を行う場合
2)乳房温存療法を行うために腫瘍を小さくさせる場合

術前化学療法では、腫瘍を小さくさせるという当面の目的を果たせても、乳癌の長期的な見通しという観点からの評価は確定していません。通常の治療方法としては、切除可能な乳癌はまず手術を行った後、リンパ節転移、ホルモンレセプターなどの検索をし、その結果によって術後補助薬物療法を行います。ホルモン療法剤の投与期間は一般的には2〜3年間ですが、5年又は一生続けたほうが良いという考え方もあります。たとえばノルバテックスの場合、再発抑制の効果ばかりではなく、反対側の乳癌再発を抑える可能性があるとも言われており、副作用が発現しない範囲で、5年間内服するのが一般的となってきています。また、化学療法剤の投与期間は通常2年間程度です。
貴方の場合、まず術前化学療法を行って、腫瘍を小さくしてから手術に臨む方針とのことですが、術後の抗がん剤の種類や投与期間等については、リンパ節の転移、ホルモンレセプターの有無等によって異なってきますので、術後、主治医の先生と納得のいくまでご相談なさって下さい。(文責 須田)

 

No.374】 01年01月14日 Y.O.
ホルモン療法他

妻の乳癌手術後のことでお尋ねします。浸潤性癌とのこと。昨年11月、K大病院にて左乳房の温存手術を受けています。腫瘍の大きさは2.2cm 。リンパ節カクセイは、Part 1+ 少し、(医師の説明では、1,2程度)。術後、リンパ節転移は認められないとのこと。転移は認められないが、流れた形跡はあったそうです。妻は44歳、閉経前です。今月より放射線治療を開始しており、2グレーX25回の予定。ホルモンレセプターの陰陽性は未確認です。放射線治療と平行してか、あとか、いずれにせよホルモン療法をやると言われておりますが、放射線治療だけでも90%転移しない、とのことなので、できればホルモン療法は避けたいと思います。ただ、大変気になりますのは、カルテを見せていただく機会があり、カルテに英文で Typical hyperplasia の用語があったことです。医師の話の中で、「硬癌ですが、普通の乳癌ですよ」との言葉もあったとのこと。妻も動揺を抑えきれなかったようで、質問もできないままでした。辞書でなんとなく意味するところは分かりますが、これはどういう癌であるのか回答いただければ幸いです。あわせてホルモン療法の件もお願いいたします。

@ typical hyperplasia
typical hyperplasiaとは、「典型的な過形成」ということになります。“hyperplasia”は、病理学で使用する言葉であり、“過形成”とは、臓器又は組織の構成要素である細胞の数が増加している状態をいいます。多くの場合、細胞数の増加の結果として、臓器、組織の容積が増大(肥大 hypertrophy)します。今回の場合は、病理の報告書の中で、何らかの細胞の数が増加している状態の断片的な文章中の言葉であり、癌細胞の分化度とか、悪性度を表現しているのではないと思います。摘出標本のプレパラート上で、何らかの細胞成分の増加が見られたことを示唆する為に、病理医が表記した言葉だと推察いたします。(おそらく癌以外の付随した病変が認められたのではないでしょうか?) 何の細胞が増加していたのかについて、正確な情報を得たければ、主治医に聞かれたほうがいいと思います。
A術後補助療法について
浸潤性乳癌のほとんどは、初期治療である手術又は放射線治療の時までに、すでに“微小転移”が起こっており、全身性疾患となっているので、一般的に術後補助療法は、残存する微小転移のある患者さんに対し、治療を目的として、局所治療(手術、放射線治療)を行った後、直ちに開始いたします。
補助療法を行う目安は以下の通りです。
1)腋窩リンパ節転移陽性の閉経前女性 → 化学療法
2)腋窩リンパ節転移陽性で腫瘍ホルモンレセプター陽性の閉経後女性 → ホルモン療法
3)腋窩リンパ節転移陽性で腫瘍ホルモンレセプター陰性の閉経後女性 → 化学療法
4)腋窩リンパ節転移陰性で以下の条件を満たすハイリスク患者
  a 腫瘍径が2cm以上 → ホルモン療法又は化学療法
  b 腫瘍径が1cm以上でホルモンレセプター陰性 → 化学療法
  c 腫瘍径が1cm以上でホルモンレセプター陽性 → ホルモン療法
5)腋窩リンパ節転移10個以上の女性 → 強力な化学療法

また補助療法を行わない目安は以下の通りです。
1)年齢、腫瘍の大きさにかかわらず、非浸潤性の上皮内癌
2)年齢、ホルモンレセプターの状態にかかわらず、原発腫瘍が1cm以下で、腋窩リンパ節転移がない場合

奥様の場合は、補助療法を行う目安の 4)-a 「腋窩リンパ節転移陰性で腫瘍径が2cm以上」の条件に当てはまり、ホルモン療法又は化学療法の適応となりますので、もう一度主治医の先生と納得のいくまでご相談なさることをお勧めいたします。(文責 須田)

 

No.373】 01年01月14日 M.S.
南部病院の受診について教えてください

以前何度かこちらの相談室で相談にのっていただいた者です。昨年いくつかの医療機関を受診して検査をおこない、とりあえず異常はなかったのですが、半年後の受診ということでそろそろ再検査の時期が近づいています。つきましては、出産等で何度もお世話になっている南部病院でひととおり検査をしていただけたらと思っております。10年ほど前は、週に1回午後に乳腺外来の日があったように記憶しておりますが、現在はどのようなシステムになっているのでしょうか。教えていただけたら幸いです。よろしくお願い致します。

毎週金曜午後に行っている乳腺外来は、予約制で再診の方を中心に乳癌術後のfollowを行っています。新患の場合は、月曜〜金曜の午前中に診察を行っていますが、須田の外来担当は月、木、金です。もし来院されるようでしたら、メールにてお名前と来院日をご連絡下さい。なお保険証を忘れずにご持参ください。新患の受付で外科のカルテを作り、外科の受付窓口で須田と約束している旨、申し出てくだされば、分かるようにしておきます。なお、受付時間は8:30〜11:00となっていますので、宜しくお願い致します。(文責 須田)

 

No.372】 01年01月14日 A.S.
骨への転移及び術後治療

母が昨年6月に左乳房の手術を受けました。リンパ節摘出12個(はっきり覚えておりませんが、11〜12個だったと記憶しております。)のうち、約半分の6個が悪性でした。術後の化学療法1回目で、投与後肝臓の数値が異常に上がり(数値は覚えておりませんが、4桁に上昇)、それ以降投薬を含め化学療法は一切行っておりません。(母は再生不良性貧血を持っております。)
半年経過の検査結果では、腰の辺りにかけて、背骨に薄くて長い影が見られた以外は、他臓器への転移はありませんでした。医者の診断によると、現段階ではこの影が転移とは断定できず、3ヶ月後に再検査するとのことでした。またその際の話では、母の体のことを考えると、もしこれがガンだとしても放射線治療はできず、投薬方法もあるが、その薬は血液の凝固作用があり、血の問題でそれもできないとのことでした。
このような場合は、何の治療法もできないのでしょうか? ただ転移しないようにと望むしかないのでしょうか? 内容が曖昧で分かりにくいかと存じますが、よろしくお願い致します。

@ 術後の治療について
これまでのデーターから、腋窩リンパ節に癌転移が1〜9個認められた場合、術後5年および10年の生存率はそれぞれ約76%、60%であることが知られています。統計的にはおよそ10人中、3〜4人が10年以内に再発すると言うことになります。そこで再発する危険性をできるだけ少なくするために術後、化学療法やホルモン療法を行うのです。このことを術後補助療法といいます。
また乳癌が再発した場合は、再発までの期間、再発部位、患者の年齢、腫瘍のホルモンレセプター等を総合的に判断し、化学療法剤又はホルモン療法剤を単独又は組み合わせて使用いたします。
A 再生不良性貧血について
再生不良性貧血とは、骨髄における血液の細胞成分が作られなくなって、赤血球、白血球、血小板の」減少をきたす病気であり、それぞれの成分によって貧血、感染が起こり易くなる、血が止まりにくくなる等の症状が出現し、時には脳出血を起こす場合もあります。この病気の原因はまだまだ解明途上ですが、放射線の全身照射、血液毒のある薬(サルファ剤、クロラムフェニコール、エンドキサン等)の使用によって起こる場合もあります。
B 薬剤療法による副作用について
化学療法による副作用としては、肝障害、骨髄毒(白血球、血小板等の血液細胞が抗がん剤の影響で減少する)等があります。ホルモン療法剤による副作用は、一般的に重大なものはほとんどないとされていますが、稀に血栓による脳梗塞、高脂血症等が報告されています。

お母様の場合、骨転移による再発があるかどうかはまだ断定できないとのこと、また摘出標本の結果、リンパ節転移が6個認められたとのことですが、上記@のような理由より、術後補助療法を行う必要があると思います。しかし再生不良性貧血であること、また術後に化学療法を行った際、肝障害が起こったとのことから、残念ながら化学療法を行うことは難しく、もう一方のホルモン療法の可能性について、年齢、腫瘍ホルモンレセプター等を参考にしながら、主治医の先生とご相談されることをお勧めいたします。(文責 須田)

 

No.371】 01年01月12日 H.H.
乳癌検査について

昨日母が、乳癌検診に行ったところ、触診にて「しこり」が発見されました。担当医師曰く、「1週間後にレントゲンをとりましょう」と言われたそうです。母は、かなりデリケートな人間で、1週間も待てない、即レントゲンをとってもらえる医療機関はないかということで、他の婦人科に行ったところ、やはり「しこり」が発見され、10日後にレントゲンをとりましょうと言われたそうです。現段階で乳癌なのかどうかは当然わからないと思いますが、できれば直ぐにレントゲンをとっていただける医療機関があればと思いご相談いたしました。実は、母は昨年「突発性難聴」「足の痛み」等、複数の疾病にかかっており、かなり精神的ダメージを受けており、今回は「もう頑張れない」と落胆しております。何卒すぐに、再検診(レントゲン検査等)をしていただける医療機関ございましたら、ご紹介いただきたくお願いいたします。できれば、以前通院した経験のある貴院様であれば理想的なのですが。何卒お力添えいただきたくお願いいたします。

メール拝見いたしました。今月の相談室担当は須田(済生会南部病院)ですが、南部病院でよろしければ明日(1月12日)、拝見したします。9時から11時の間に来院していただければ、乳房撮影、超音波検査、吸引細胞診の検査を致します。吸引細胞診は結果が出るまで1週間ほどかかりますが、その他の検査結果は当日お話しできると思います。もし来院されるようでしたら、メールにてお名前をご連絡ください。なお保険証を忘れずにご持参ください。新患の受付で外科のカルテを作り、外科の受付窓口で須田と約束している旨、申し出てください。手術等で今仕事を終えましたので、ご連絡が遅くなってしまいました。(文責 須田)

 

No.370】 01年01月12日 いづみ
しこりはないと言われましたが・・・

29歳の独身です。8月頃、右の乳房が痛なり、しばらくしてから左も痛くなり、近所の婦人科で触診してもらったら、しこりはないと言われました。痛くなり始めた頃に、たまに触っていると乳汁らしきものが両方からでて、プロラクチンの数値が少し高めだという事でした。それから、何の検査かはわかりませんが、その乳汁らしきものを調べてもらったら、悪いものはなにも見つからなかったので乳癌の心配はないと言われました。検査としては乳汁だけなのですが、以前よりは痛みませんが、まだ痛みがあります。乳癌は痛くないと聞きますが、痛む場合もあるのでしょうか? 乳房は外側が痛く、たまに外側から内側にかけて痛くなるときもあります。脇の下は腫れてはいませんが、時々痛く感じます。また乳房の上あたりが痛く感じる事もあります。関係ないとは思いますが、甲状腺が腫れた(エコー・血液検査の結果特に問題ないと言われましたが)事もあるので不安です。専門のところで検査した方がいいんでしょうか? 乳汁検査をしたから平気なのでしょうか?

「有痛性の乳房」から乳癌を心配する質問はよくあります。一般的には乳癌以外の状態(排卵前、月経前、炎症など)の結果として痛みがあることが多いようです。
乳頭分泌については、この相談室NO.369にもあるように、乳汁様の分泌物の場合、乳汁漏出症であることが多く、乳癌であることは稀であり、貴方の場合もこれに当てはまると思います。
甲状腺腫とは関係がありません。乳癌ではないと思いますが、不安を解消するためにも専門医を受診することをお勧めいたします。(文責 須田)

 

No.369】 01年01月12日 H.S.
乳房の分泌物について

31歳の既婚者です。まだ子供はいません。以前、乳首から黄色い分泌物がでていたのですが、このごろ血のような分泌物が出るようになりました。たまになのですが…。またこの頃、乳房の周りが痛くなるのですが…。やはり乳がんの疑いがあるのでしょうか? とても不安です。

乳頭分泌は、乳腺のしこりに次いで、乳癌の2番目によく見られる症状です。乳癌女性の約3%に出現しますが、分泌液の内容によって癌の可能性がある場合と、ほとんどない場合があります。
1)乳汁様の分泌物の場合は乳汁漏出症であることが多く、乳癌であることは稀です。
2)漿液性(黄色透明)、漿液血性(赤黄色)、血性の分泌物がある場合、約70%は良性の乳管内乳頭腫ですが、残り30%に乳癌が認められます。従ってこの様な分泌物が出る時は、癌の可能性を疑わなければならず、まず分泌物の細胞診、マンモテック『分泌液中CEA(乳癌腫瘍マーカー)測定による乳癌スクリーニング』を行います。またどの乳管から分泌されているのかを確認するために乳管造影や、マイクロドヘクトミー(生検)を行います。更に乳管内視鏡による検査を行う場合もあります。
貴方の場合、血性の分泌液ということですので、乳管内乳頭症の可能性が一番高いのですが、乳癌でないことを確認するためにも、乳腺外来を受診し、上記の必要な検査を行って下さい。(文責 須田)

 

No.368】 01年01月12日 けい
手術後のしこり

9月末に乳房温存療法による手術を受けました。放射線はかけていません。傷口はまだ赤い筋状なのですが、ボディーオイル等ぬって良いのでしょうか? 又、手術あとは乳首周りが固く乳輪が縮んだ状態です。これはどれ位で元に戻りますか?

乳房温存療法の術後で、放射線治療をしていなければ3ヶ月位で傷はよくなります。ですから、もうbody oilを塗ってもかまわないと思います。乳輪が縮んだ状態というのは診ていないのでよく分かりませんが、切開線が乳輪に沿った傷であれば、やはり3ヶ月から6ヶ月位でよくなると思います。そのへんのことも是非主治医の先生に聞いて下さい。手術をした先生が一番よく分かるはずですから。(文責 清水)

 

No.367】 01年01月11日 J.N.
左胸の下の痛みについて

23才です。時々、生理前に左乳房の下を押すと痛みを感じます。今回、生理が終わり、5日たちましたが、生理前と同じ痛みを感じます。しこりがあるようには感じません。乳癌なのでしょうか?また、乳癌には痛みがありますか?

90%以上の乳癌患者に見られる症状がしこりですが、典型的な乳癌のしこりは痛みを伴わない傾向があります。あなたの場合は、直接拝見していないので断定は出来ませんが、乳癌ではないと思います。貴方の痛みについては、女性ホルモンの影響によって、月経前や排卵前に起こる「乳房痛」の可能性が高いと推測されます。相談室のNo.74, No.75の回答を参考にして下さい。(文責 須田)

 

No.366】 01年01月10日 まき.
胸のかゆみについて

1ヶ月程前より両胸の乳頭にかゆみが出てきました。特にしこりはないのですが、ガンの場合、痛み以外にかゆみの症状も出るのでしょうか。かきすぎてしまい、最近では出血することもあります。どういう原因が考えられますか?

乳癌の局所症状には以下のようなものがあります。
1)腫瘤(こぶ)は、乳癌の90%以上に見られる症状です。一般的に圧痛はありません。
2)血性乳頭分泌は、乳癌の3%に出現する症状です。乳頭分泌がある人の70%は、乳管内乳頭腫という良性の病気で、残りの約30%が乳癌です。乳汁様の乳頭分泌がある人は乳汁漏出症で、これがひどくなって乳輪下に乳管の拡張および蛇行腫大が起これば、痒みや痛みを伴う場合があります。
3)痒みについては、上記以外に、特殊なタイプの乳頭部の乳癌である「ペイジェット癌」の症状として、時々出現することがあります。ペイジェット癌は、乳頭の一側性の湿疹様の変化、ないしは乳頭びらんとして現れます。
貴方の場合、乳癌ではないと思いますが、出血することがあるとの事ですので、念のため、皮膚科での受診をお勧めいたします。(文責 須田)

 

No.365】 01年01月09日 みっきー.
乳癌検査について

32歳、未婚です。先日、近くの産婦人科で、30歳以上になって検診対象とされている市の子宮ガン検診、乳ガン検診を受けました。将来、出産を考えているので、一度受けて見ようと思ったからです。乳ガン検診では、触診が横になって、胸を思い切り平らにして、かなり強くごしごしされました。さらに、ぬるぬるしたプラスチック製のものを使ってさらに強くごしごしされました。その後、右側の上に少し堅いものがあるからと言われ、精密検査を勧められました。自分では全然わかりません。そのとき、もう少し具体的にどこか伺えば良かったのですが、十分な説明もなしで、ある病院を紹介されました。
急いで乳腺専科のある病院の院長に診てもらったところ、触診、エコー、乳房レントゲンとも、何も異常がないと言われました。その際、前の医師が指摘する箇所を中心に診ていただきました。触診の仕方が、前の医師と全然異なり、さわり方もやさしく丁寧で、いい印象を受けました。どこにしこりがあるのか、首をしきりに傾げていらっしゃいました。乳房レントゲンは、本当に辛かったです。将来の妊娠に何か影響があったらとすごく心配しています。また、最初の診断で、本当にしこりがあったのかもすごく疑問です。通常の乳ガン検診の仕方は、どのようなものなのでしょうか。すぐレントゲンを撮らせるものなのでしょうか。また乳房レントゲンの将来の妊娠に与える影響など、教えて下さい。

(1)乳癌検診について
厚生省の指針により、21世紀になって日本の乳癌集団検診の検診方法が改善され、50歳以上の検診対象者には、最初の検査として触診と一緒にマンモグラフィー(乳房レントゲン撮影)を行うということになりました。マンモグラフイーを行うことによって、触診では認められなかった癌が石灰化像として見つかり、乳癌発見率の向上が期待できるからです。従来日本で行われてきた集団検診は、主に触診によってしこりを見つけ、更に詳しく調べるために専門の医療機関を受診するというシステムでした。その医療機関では、見つかったしこりについて、マンモグラフィー、超音波検査、吸引細胞診という乳癌診断の基本としての精密検査を実施いたします。
貴方の場合、近くの婦人科で市の乳癌検診を受けた結果しこりが見つかり、それを専門の医療機関で精査したということであり、原則論通りの乳癌検診を行ったことになります。
(2)放射線被爆による危険について
エックス線検査ですから放射線の被曝はありますが、乳房だけの部分的なものであり、骨髄などへの影響はなく、白血病などの発生の心配はありません。1回の撮影で乳房が受ける(吸収する)放射線の量は、飛行機で東京からニューヨークへ行く時に浴びる自然放射線(宇宙線)の量のほぼ半分です。従ってマンモグラフィー撮影に伴う危険はほとんどないか、あっても極めて小さいと考えられます。(「マンモグラフィーによる乳癌検診の手引き」より)(文責 須田)

 

No.364-1】 01年01月06日 Y. O.
皮膚の湿疹、再発でしょうか?

3年半前の平成7年5月に左胸を乳癌で非定型手術により切除しました。2.2cmのしこり、リンパ転移2個、ホルモンレセプターは+でした。半年の抗癌剤の点滴、ノルバティックス経口、昨年夏よりは自分の希望によりゾラティックス注射も併用しています。一昨年夏から去年春にかけて人工乳腺による再建をいたしました。ちょうど一週間ぐらい前から、切った左胸の傷の上に2cm強ぐらいの範囲で湿疹のようなものができました。再建した胸の上です。ちょっと固く、ちょと赤くかさつたものがいくつか出来ています。以前よりひきつるようですが、切除後からずっと手術のためのひきつりがあったのでちょっとよくわかりません。かゆいようでもあります。初めは下着があたったのが原因かとも思いましたが、そっとしておいてもその後症状はかわらず、大変心配になってきました。胸壁への転移、乳がんの症状などに皮膚のかさ付きもあるようですが、いかがなものでしょうか?年末年始であったので、まだ、主治医には相談していませんが、大変不安になってしまい、お伺い致しました。どうぞ宜しくお願いいたします。

〈傷の上に湿疹様のもの、ちょっと硬く、ちょっと赤くかさついたものがいくつかある)とのことですが、湿疹以外では次の3つの状態が考えられます。大部分はケロイド、残糸膿瘍であり、場合によっては再発が考えられます。ケロイドは、傷の一部ないし全部が少し盛り上がりちょっと硬く、ちょっと赤くなり、温まると痛がゆくなりますが、これ自体は悪いものではありません。また、残糸膿瘍は皮下を縫った糸が体に合わなくなり、傷が治った後になって体の外に出て来る状態を言います。従って、糸が排出されない限り赤くかさついた湿疹様のものは治りません。乳癌の再発かどうかは、細胞診か生検により診断致します。貴方の場合、再発の可能性は低いと思いますが,念のため主治医に相談することをお勧め致します。(文責 須田)

 

No.364-2】 01年01月08日 Y. O.
皮膚の湿疹、再発でしょうか?(2)

早々の御返事をいただきまして誠にありがとうございました。大変申し訳ないのですが、湿疹のある位置について間違って書いてしまいました。「傷の上」と書いてしまいましたが、本当は「傷の下」と書くつもりで、傷よりも1〜2cm下の位置のことです。傷の線上にあるのではなく、少し離れた皮膚に湿疹のようなものができています。表現に間違いがあり大変申し訳ありませんでした。となりますと、ケロイド、残糸膿瘍とは違うのではないかと思います。最初の手術のときに、糸が合わなかったため、一部傷口がなかなかつかなかった事があります。また、傷を目立たなくするテーピングは肌に合わず、かぶれてしまいました。手術側の胸の皮膚がかぶれやすいのは確かなようです。今回の「湿疹の様なもの」も、同じようにも思えるのですが、原因がわからず、そっとしているにもかかわらず消えないので心配です。胸の皮膚に再発があらわれた場合、具体的にはどういうふうに現われてくるのでしょうか。

乳癌手術後の術野の皮膚の再発は、具体的にどのように出現するのかというご質問ですが、手術野の皮膚又は皮下に、1個、又は多数、少し硬い結節を作るものから湿疹様のものまで様々ですので、再発かどうかは直接診察する必要があります。湿疹以外、他に考えられる病変としては、テーピングのかぶれ、帯状疱疹などがあります。帯状疱疹は痛みを伴い、通常、肋間神経に沿って赤くかさついた病変がいくつか出現します。いずれにしても早めに受診することが、不安を取り除くことにもなりますので、主治医の先生に相談する事をお勧めいたします。(文責 須田)

 

No.363】 01年01月03日 S.T.
乳房からの分泌物

23歳、独身なのですが、6ヶ月ぐらい前から右の乳房中心部分がとてもかゆいんです。血がでるほどかきむしってしまい下着に黄色い分泌物がついているのですが、これは皮膚科にけばいいのでしょうか。

乳頭部ないし乳輪部に、湿疹様の変化,糜爛(ただれ)等を起こし,時にかゆみを伴う特殊なタイプの乳癌をページェット病と言います。目で見て特徴的なことは、乳頭に糜爛(ただれ)があり、湿疹様の変化を起こしていることです。この様な乳癌は、女性でも稀で,男性では経験したことがありません。
貴方の場合、年齢的に乳癌は考えにくく、このページェット病ではないと思われます。おそらく、右乳輪部の湿疹で、かゆみがあり、手で掻き壊したために分泌液が出たものと思われます。皮膚科でご相談されるとよいと思います。(文責 須田)

 

No.362】 00年12月31日  A.T.
経過観察について

母が今年の1月から、左胸の5ミリのしこりの経過観察を半年ごとに続けてきました。そして先月の11月の終わりに定期検診に行くと8ミリになっており、細胞診を受けました。結果は良性でしたが、先生の勧めもあり摘出手術をうけました。翌週、抜糸と組織検査の結果をききに病院へ行って、腫瘍から癌細胞が見つかった事をききました。年明けに入院して手術を受けるのですが、それまでに様々な検査を受けなければならないようです。そこで質問ですが、経過観察を続けてきたのにすでに他の臓器に転移しているなんてコトがあるのでしょうか?せっかく早期に発見して、病院からも様子を見ようと言われていて“準備万端”の状態だったのに、結構進行しているなんてコトがあるのでしょうか?もちろん「絶対にないとは言えない」という物だと思いますが、家族としては当然リンパ節への転移もないものだと考えていましたので、そういう検査がある事がショックです。これでリンパ節にたくさん転移していたりしたら、何を信じたらいいのかわかりません。もっと早くに手を打てたのではないかと思ってしまいます。それともそういう検査はみんながするのでしょうか?教えて下さい。

1)”経過観察を続けてきたのにすでに他の臓器に転移しているなんてコトがあるのでしょうか?”  
おっしゃる通り、絶対ないとは言えません。経過観察を慎重にしていても、悪性度の高い癌ができてしまえば、しこりが小さいうちから全身に拡がってしまっていて、早期に手術をしたと思っても、術後早期に転移再発が現れる例もありますし、逆に、何年もほおっておいて、もう手後れだと思って手術したのに、再発することなく元気にしている方もいます。ですから、乳癌で助かるかどうかは、一つには早期発見が重要ですが、それだけではなく、できた癌の悪性度も重要な因子なのです。しかし、早期発見は自分で努力すれば可能なことですが、できた癌の悪性度については自分ではどうしようもないことなので、自分で早期発見に努め後は天命を待つことになるのでしょうか。A.T.さんのお母さんの場合、1月に5mmで11月に8mmのしこりということであれば、しこりの大きさが大きくなる速度はそれほど早い方ではないと思います。ですから、全身転移を起こしている可能性は低いと思います。但し、絶対ではありませんが...。
2)全身の検査について  
ちょっと専門的になりますが、乳癌の病期(ステージ)を決めるためにTNM分類を使います。Tはしこりの大きさ、Nは脇のしたのリンパ節の状況、Mは遠隔転移の状況でこの3つの因子を組み合わせてその方の乳癌が第何期に相当するかをきめます。しこりの大きさは、触診、レントゲン、超音波でわかります。脇のしたのリンパ節の状況は触診、超音波で診ます。ですからここまでは、最低でも一回患者さんを診察させてもらえれば、触診で大体分かりますし、レントゲン、超音波検査があればより正確に分かります。ところが遠隔転移の状況については、一つは転移による症状があるかないかで判断しますが、これはかなり大雑把です。そのために、CTやRIといった検査技術を駆使して、遠隔転移があるかどうかを調べます。手術前に必ずこれらの検査をやるかどうかはそれぞれの病院の事情や先生の考え方による部分がありますが、A.Tさんのお母さんの場合は、癌が拡がっていることを疑って検査をしているというよりは、癌と診断がついたので遠隔転移の有無の確認のために検査をしたと考えてよいのではないでしょうか。これらの検査で転移がないということは、”検査で調べられる範囲では転移はない”と考えて下さい。それよりも、これらの最初の検査を基準として、手術後定期的に検査を行なっていくことが大切です。(文責 清水)

 

No.361】 00年12月23日 みい
乳ガン?

14歳です。最近、右胸の乳首の裏に細長いしこりをみつけました。胸を触っていると、しこりのようなものがありました。それは、まんまるじゃなくて長まるなんです。痛みなどは全くないのですが、すごく不安です。乳ガンの可能性はあるのでしょうか? 乳がんは大人の病気だと思っていたのですが、どうなんでしょうか? よろしくお願いします。

14才であれば乳癌の可能性は低いと思います。しかし、冬休みになったら病院へ行って、先生に診てもらって下さい。 (文責 清水)

 

No.360】 00年12月23日 hisako
右胸の痛み

35歳、既婚者です。右胸の上下に10円玉くらいの痛みのあるしこりが2個くらいあります。病院の先生から「しこりですね」と言われました。今、検査の結果待ちですが母も乳癌で乳房を摘出している為に心配です。痛みは触ったり、走ったりすると強くなります。左の胸も同様に痛みがあります。ちょうど排卵期にあたるのですが、月経前の乳房痛に似た痛みです。乳癌の可能性はあるのでしょうか。

残念ながら診察をしているわけではないので、お答えのしようがありません。既に検査を受けていらっしゃるのですから、その結果を聞かれるのが一番だと思います。(文責 清水)

 

No.359】 00年12月22日 H.M.さん
母親が乳癌の宣告をうけました

11/27、経過観察中の母が半年ぶりの定期検診にいき、12/4の細胞診の結果“良性”でした。しかし先生も「もう、取ってしまおうか」とおっしゃり、12/12に腫瘍摘出手術をうけました。今日、抜糸と取り出した物の組織検査の結果を聞きに行って、その腫瘍の一部に癌が見つかった事を聞きました。腫瘍自体は1センチでしたので癌の大きさはもう少し小さい物だと思います。硬癌だそうです。来週、肺、肝臓、骨の検査を受け、来年の1/11から入院1/16に手術という事になりました。先生は「運がよかったんやで」とおっしゃってくださっています。しかし、「乳癌は空気に触れるとリンパ節に転移する」という事を聴いた事があって、その手術、胸を開いたせいでリンパ節に転移してしまっているのではないかと不安です。もちろんその手術のおかげで癌がわかったのですから「しなければよかった」というわけではありませんが、もしそういう事があるなら、できるだけ早く手術をしてもらいたいというのも本心なんです。そこでお聞きしたいのですが、「乳癌は空気に触れるとリンパ節に転移する」というのは事実なのですか?それと、僕の説明からはわかりにくいとは思うのですが、転移している可能性はどれぐらいなのでしょうか。“癌の赤ちゃん”という言葉を聞きました。癌細胞の初期の段階の物で、それがリンパ節ではじけて全身に転移すると聞いた事があるのですが、もしそういう物もあるのでしたら、その辺の事も詳しく教えて下さい。僕自身まだ混乱しているので、要領を得ない文で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

”乳癌は空気に触れるとリンパ節に転移する”というのは全く科学的根拠のない話です。実際に、摘出手術をした後に手術をして、リンパ節転移のない人はたくさんいますから。お母さんの乳癌が転移している可能性は、1cmの乳癌で脇の下のリンパ節が腫れていなければ10%位、もし脇の下に固いリンパ節が触れれば20%位です。”癌細胞の初期の段階の物で、それがリンパ節ではじけて全身に転移する”というのも科学的な根拠のない話だと思います。できるだけ早く手術をという気持ちはわかりますが、乳癌の場合は1-2週間をあせる癌ではないので、今大事な事は、予定通りきちんと手術をして、病理検査の結果を聞いて、その結果によって適切な術後補助療法を行う事だと思います。お母さんが一番不安に思っているはずですし、しっかり支えてあげて下さい。(文責 清水)

 

No.358】 00年12月22日 A.I.さん
祖母の乳癌について

12/19に80歳の祖母が乳癌と診断され、左側全摘出手術を来年1/12に予定されました。祖母は10月中旬脳梗塞で1.5ヶ月入院、手術はしていません。糖尿病もあります。その場合どのような危険が伴うのでしょうか?お教えいただけないでしょうか。

乳癌の手術は、手術時間も比較的短く、内臓をいじらないので比較的安全な手術のひとつで、80才でもお元気なら問題ありません。脳梗塞の影響としては、ひとつは脳硬塞の再発予防のために、小児用バッファリンとか、パナルジンといった血小板の固まるのを防ぐ薬を飲んでいる事が多いので、うっかり手術前まで飲んでいると手術の時に血が止まりにくくて困る事があります。今飲んでいる薬を主治医の先生に見せてcheckしてもらって下さい。もうひとつは手術の時の麻酔の影響で血圧が上下して再梗塞を起こす心配です。しかし、これは麻酔の先生の問題で、気を付けて麻酔をかけてもらうしかありませんし、ある程度の年令の方ではやむを得ないriskだと思います。糖尿病については病気の程度が分からないのですが、乳癌の手術では手術の翌日には食事ができるので、手術前まで今行っている治療を続け、手術後も早くからその治療を再開すればよいと思います。糖尿病は傷が治りにくいと言いますが、しっかり治療して血糖がコントロールされていれば心配ありません。(文責 清水)

 

No.357】 00年12月22日 Miki
手術後の傷口について

母の事で心配な事があるので、ご相談をお願い致します。今年3月に乳癌と診断され、同月に乳房温存で手術を受けたのですが、9月頃傷口のかさぶたがとれ、その傷が今もまだ治らず、ここ1ヶ月は消毒の為、毎日通院しています。肉が上がってきていないので、傷口に消毒のガーゼを詰める治療だそうです。主治医の先生のお話ですと、『難治漏孔』と言われたそうで、心配しております。このような状態で残った乳房などの影響はないのでしょうか?

結論から言うと心配ありません。乳房温存療法では癌とその周囲の正常な乳腺組織を一緒にある程度の大きさで切除します。したがって、切除した後はかなり大きな空洞になります。その空洞をしっかり埋めようとすると乳房の形がかなり変形してしまいますし、逆にそのままにしておくと、そこに水がたまったり、化膿したりする可能性が高くなります。大きな空洞を形よく埋めるためにどの先生も苦労しているのです。更に悪い事に、乳房内再発を防ぐために温存した乳房に放射線をかけるので、肉の上がりや傷の治りが普通の時よりも悪くなってしまうのです。そのために、しばしば乳房温存療法の傷が開いたり、水が出たり、膿んだりする事が起きて、治るのにかなり時間がかかってしまうのです。しかしこれは所詮傷の問題であって、時間がかかっても必ず治りますし、乳癌の経過には何の影響もありません(ただし傷の消毒に通うのは大変ですが・・・)。医者の勝手な言い訳になりますが、再発しないように癌をとって且つ乳房を残すと言う相反する手術をした時に起きる合併症として許していただきたいと思います。(文責 清水)

 

No.356】 00年12月22日 hisa
母の状態について

母の状態についてご相談いたします。ガンということで先週手術をしました。その結果(大きさ、進行状況、これからの事)については、今週説明があります。私が気になった事は、術後から二日目くらいまで軽いボケのような感じだったので、それが「精神的なものなのか、病気のせいなのか、薬を飲んでいるせいなのか、一時的なもので心配ないのかどうか」ということです。昨日の様子は普段の状態に戻っていました。
今まで大きな病気もなく、はつらつ元気な母だったので、その変わりように少しショックでした。私はすべてを受け止めて支えていこうと思っています。ご指導よろしくお願いいたします。

"手術後二日くらいボケのような感じ"という状況はよく分かりませんが、一番考えられるのは麻酔の影響が残っていたのではないでしょうか。もし今お元気にしていられのであれば、心配ないと思います。(文責 清水)

 

No.355-1】 00年12月21日 M.I.さん
骨への転移の治療方法について

私は48歳で乳がんの手術をして2年半経過しました。11月初め頃から恥骨のところが痛くて、12月11日整形外科で診察の結果、レントゲン検査で骨が白い所と、うすい所があり先生は骨の硬化症と言われ、骨の転移だと言われました。骨の転移は、骨がとけてそれが血液に溶けて、腫瘍マーカーが上がるけれども、この症状の場合、血液検査に出ないと言われました。毎月1回外科で、ホルモン剤(ノルバラクス)だけをもらい、3ヶ月に1回血液検査をしていたのにショックでした。整形外科のレントゲン写真を持って外科に行ったところ、もう1度骨シンチをとって、その結果によっては化学療法をしましょうと言われました。実は私は肝炎でHB抗原なので、化学療法をするとすぐ肝臓がおかしくなると思い、あまりしたくないのですが・・・。この転移は骨がとける症状より、重症でしょうか。もし出来たら養子免疫療法というのをやってもらい、その後様子をみて、化学療法をしてもらいたいのですが、この考えは間違っていますか。そんな余裕などないほど大変な状況でしょうか。またいろいろな治療方法があるかと思いますが最良な治療方法を教えてください。よろしくお願いいたします。
1)最初に手術した乳癌で、リンパ節転移は3つありました。
2)最初の乳癌のエストロゲンレセプターは陽性です。
3)38歳の時に子宮筋腫をやって、子宮のみ全摘しました。(卵巣はあります)
4)手術後の治療はノルバデックスと、顆粒の抗がん剤(名前はわかりませんが、一番弱いものです。)を出してもらいましたが、のどの痛みがありましたので、現在はノルバデックスだけです。
5)現在、肝炎の症状はありません。血液検査の数値は安定しているようですが、先生は肝炎だと言います。

まずM.I.さんがやった方がよいと思われる事。 1)骨シンチ:恥骨のところが転移かどうか、他の骨に転移がないかを調べる。 2)骨MRI:骨シンチで診断がつかない場合は必要(骨シンチで診断がつけば不要) 3)CTもしくは超音波検査で肺、肝臓等に転移がないか調べる。4)血液検査で女性ホルモンの値を調べ、卵巣が働いているかどうか調べる(生理がないので本当に卵巣機能があるかないかを血液検査で調べないとホルモン療法の計画が立てられない) 5)B型肝炎とB型肝炎ウィルスを持っているというのは意味が違います。どちらなのかはっきりした方がいいと思います。mailの文面からは後者のような気がしますが・・・。肝機能が正常であれば肝炎のウィルスを持っていても治療には影響ありません。
もし転移であった場合、その治療。女性ホルモン依存の癌である(エストロゲンレセプターが陽性である)ならば、まず最初に選択されるのはホルモン療法だと思います。ホルモン療法を選択する時に卵巣機能が残っているかどうかどうかが問題で、まだ卵巣機能が残っていれば(血液検査で女性ホルモンの値が高ければ)LH-RH agonist(商品名:ゾラデックス、リュウプリン)と呼ばれる卵巣の機能を止める注射(月に1回打つ)が第一選択で、それ単独でいくか、ノルバデックス、アフェマといった他のホルモン療法剤を併用するかは意見が別れます。しかし、ホルモン療法は速効性がありません、したがって、痛みが強い場合は、放射線治療、化学療法も選択肢にはいります。特に他の部位に転移がなく、恥骨の部分だけであれば放射線治療が良いかも知れません。骨意外に肺も肝臓も転移があった等という場合は、初めから化学療法を選択するのが良いかも知れません。その理由は、効果が早く現れ、奏功率が高いからですが、当然副作用も強くなります。養子免疫療法については申し訳ありませんがほとんど知識がありません。10年程前に脚光を浴びた治療法ですが、理論的には正しいのですが、実際に行うとなると難しい問題があって現在はあまり学会等にも発表されない様です。(私の不勉強かも知れませんが) また、この治療法は自分の癌細胞を取り出して、そこに自分のリンパ球を反応させ、そのリンパ球の活性を高めて再び体に戻すと理解しています。となると、どうやって癌細胞を取り出すのでしょうか?(通常は胸水、腹水から細胞を取り出す事が多いのですが、骨からは難しいのではないでしょうか) 検査結果で転移でない事をお祈りしますが、もし転移であれば、これらのことを参考にして主治医の先生と納得がいくまでよく相談して治療法を決めて下さい。(文責 清水)

 

No.355-2】 00年12月25日 M.I.さん
骨への転移の治療方法について(2)

丁寧な回答ありがとうございました。お忙しい中、お時間をとらせてしまって申し訳ありません。こんなに詳しく答えていただけるとは思いませんでした。21日に検査をした骨シンチは異状なしでした。でもこれでは信じられないので、外科の先生がもう1度MRIを撮らせて下さいというので29日に調べてもらうことにしました。それでもとにかく、異状なしだったのでほっとしています。骨シンチで異状がないという結果は信じていていいのでしょうか?どうすればいいのかわかりません。

骨シンチはかなり感度のよい検査です。ですから、ひとまずほっとしてよいのではないでしょうか。しかし100%ではありません。前回お答えしたように、レントゲンや痛みなどの症状から骨転移が疑われたのに骨シンチで異常がなかった場合は、MRIを行うべきだと思います。MRIでも異常なければ、まず安心してよいと思います。(文責 清水)

 

No.354-1】 00年12月19日 Y.M.さん
乳癌でしょうか?

12月9日に右胸の端(身体の中心側)に1cm程の硬くよく動くしこりをみつけ、15日にエコーの検査で腫瘍といわれ、今は生検の結果待ちです。35歳未婚で、一ヶ月前乳ガン検診で触診を受けた時には異常がなかったので、かえって心配です。一週間前に比べると鏡でしこりの位置がわかるようになりました(単に痩せたせいかもしれませんが)。今日はしこりの部分が痛むのですが生検の後だからでしょうか? また中絶の経験がありますが、この事は、やはり主治医にお話しないといけない事なのでしょうか?

質問内容を整理すると、35才未婚の方で、1ヶ月前の触診の乳癌検診では異常がなかったが、12月9日に自分で右乳房内のしこりをみつけて、近くの病院を受診、エコーで腫瘍と言われ(触診やレントゲンではどうだったのでしょうか?)生検(穿刺吸引細胞診:細い針をしこりに刺して、細胞を採る検査:のことでしょうか?)を受け、現在その結果を待っている状態と理解しました。触診やレントゲンの結果等の細かい事は抜きにしても、もし細胞診を行ってその結果を待っているのであれば、ただひたすらその結果を待つしかないと思います。今ここで癌の可能性が高いの低いのと言っても、もう細胞診が行われた後なので、何のadviceにもならないと思いますし、何よりも、しこりに気がついてすぐに病院を受診したという事が一番よい事だと思います。とにかく、結果を聞いて、もし癌と言われたら、1cmと小さいようなので、早期乳癌で生存率も高く、乳房温存療法ができる可能性も高いように思われますので、しっかり主治医の先生と治療法の相談をして下さい。もし良性だったら、しこりを取ってしまうか、しこりを取らずに経過をみていくのかをよく主治医の先生と相談して下さい。
乳癌は女性ホルモンとの関係が深いので、初潮、月経状況、妊娠歴、出産歴、家族の中に乳癌の人がいるか、婦人科疾患の既往、乳腺疾患の既往などを問診で尋ねる事が多いのです。しかし、これらの情報は個人のprivacyにも関わる事なので、どこまで医者に話すかは個人個人で違うと思います。聞かれたら嘘をつくのはまずいかも知れませんが、聞かれなければ、敢えて話さなくてもよいかも知れません。これらの情報はあれば大変参考になりますが、なくて治療に困る情報ではありません。(文責 清水)

 

No.354-2】 00年12月23日 Y.M.さん
乳癌でしょうか?(2)

お忙しいところ早速丁寧なお返事頂きまして本当にありがとうございました。
今日、細胞診の検査結果(+触診、マンモグラフィ、エコー)から良性線維腺腫と診断されました。「確定診断ではないですが、すべての検査結果が一致している」そうです。三ヶ月後にまた来て下さいと言われました。今後どんな事が起こりうるのか、何に気をつけるべきなのかを知るには、相談室の投稿や先生方のお返事がとても助けになっています。
一つ質問ですが、しこりを見つけてから、ついしょっちゅうそのしこりを触って確認してしまうのですが、出来るだけ触らない方が良いのでしょうか?あと、これは関係ないかもしれないので、答える必要がないと思われる場合は無視してくださっていいのですが、一ヶ月前の会社の健診で、白血球が34(通常40−89)でしたが、これは今回の件と関係があるのでしょうか?(数年前も通常以下だったことがありました。)またその時の子宮細胞診でクラス2と報告書に載っていましたが一年後の健診まで何もしなくて大丈夫でしょうか。
何度もお時間をおとりして申し訳ありませんが、急ぎませんので、もう一度お返事をいただけるととても安心いたします。

良性でよかったですね。しこりを見つけると気になって触ってばかりいる人がいます。仕方のない事だと思います。ただし、触ってばかりいてもしこりが消えてなくなるわけではないので、しこりに気がついたら、とにかく病院へ行く事が一番だと思います。白血球の数は個人差があります。全ての人が基準値の中にいるとは限りません。いつも白血球が3000台であるならば心配ないと思います。子宮癌検診については、私達乳腺外科医はしろうとに近いのでコメントできませんが、検診結果がclass2で、"次回は1年後の検診を"と指示されたのであれば、指示に従ってよいのではないかと思います。(文責 清水)

No.353】 00年12月17日 M.I.さん
乳房外パジェット病

先日、某大学病院で乳房外パジェット病と診断されました50才の男性です。数年前より肛門の周囲にかゆみがあり、夜などは特に激しく無意識に血が出るほど掻いてしまいました。それが今回の病気の原因と考えています。先生は初期のガンと言っていました。診断してすぐにガンと言われましたので大変ショックをうけました。現在、細胞の検査中です。結果が心配です。この病気はどんな病気なのか、また完治する確率があるのか教えてください。

この相談室は乳房に関する相談室で、全ての担当医は乳腺外科の医者です。乳房外Paget病は皮膚科の病気で、手術をするのは形成外科の先生が多いので、私達はあまり詳しくありません。医者の一般常識からすると、乳房外Paget病はほとんどが早期癌で、手術をすれば治ると理解しています。いくつかHPをあったってみましたが、慈恵医大の皮膚科のHPにあった乳房外パジェット病の説明がわかりやすかったように思います。(文責 清水)

 

No.352】 00年12月17日 mura
胸のしこりと痛みについて 

23歳未婚の女性なのですが、1年くらい前から胸しこりができて痛みを感じるようになり、触ると痛みを感じます。しばらく放っておくとその場所にしこりが消えて、また別の場所に行ったりします。反対側の胸に行ったりもします。いまは両方の胸に触ると痛いしこりのようなものがあり腫れています。日常生活は問題ないのですが、今回の腫れは階段の上り下りで少し痛みを感じます。半年ほど前、近くの診療所に行きましたが、リンパ腺が腫れているだけとの事で、痛み止めをもらいましたが、その時は、ガンでないという事で、あまり気にもせず忘れているうちにしこりもなくなった気がしたのですが、最近また違うところが痛み心配です。同じ病院に行くとまた同じ事を言われそうだし、心配です。近くに乳腺外科が無い場合は、何処に行けば良いのでしょうか。ちゃんとした検査をしたいのですが・・・。また、乳輪のまわりに生えてくる毛が気になり、毎日抜いているのですが、これも原因なのでしょうか?年齢から考えて確率は低いと思うのですが、まずどうしたらよいのでしょうか?胸に出来るくぼみや変色のようなものは無いです。どうか回答をお願いいたします。 

mailの内容からすると、"23才でくぼみや変色はなく、痛みを伴い場所が移動するしこり"ということで、おっしゃる通り乳癌の確率は低いと思います。多分、広い意味での乳腺症だと思います。心配しないで、念のために専門の先生に診てもらって下さいとお返事したい所ですが、近くに乳腺外科がないといわれると困ってしまいます。一般的に乳腺の診察をしているは外科です(一部、産婦人科の先生が診察をしている所もありますが)。もし、乳腺外科、乳腺外来という看板がみつからなければ、近くで乳癌の手術をたくさんやっている病院の外科を受診されたらよいのではないかと思います。(文責 清水)

 

No.351】 00年12月15日 kei
9月に乳癌の手術をうけたのですが・・・ 

50歳の主婦です。悪性のガンと診断され、9月に非定型的乳房切除術の手術を受けました。幸いにもリンパには転移はありませんでした。骨のレントゲン検査も一応パスしてるのですが、手術をしたほうの胸の痛みが気になります。この痛みは手術をする前からで,骨に転移しているのではないかと随分心配もしていたのですが術後の骨の検査では異常なしと言われ、どこからくる痛みなのかわからず,とても心配です。痛みは胸全体ではなく,あばら骨上の一部分です。このような痛みの場合は,どのような病気が考えられるのでしょうか?   

手術をした人は皆、手術して1年くらいはちょっと痛いところがあるとすぐに転移に結び付けて考えがちです。考えるなといっても無理で、やむを得ないことです。仕方がないので、その度に、主治医の先生に聞いて、心配なら検査をしてもらって、心配ないことを確認するしかありません。今年の9月の手術ということは、この12月は手術後の初めての冬ですね。今の時期のように、急に寒くなってきた時など、これから1年間季節季節の変わり目に、手術をした部分や、脇の下や、腕が痛むことはよくあることです。keiさんの場合も、骨の検査で転移が否定されて、診察で傷の近くの皮膚に何もできていなければ心配ないと思いますが、主治医の先生によく相談してください。(文責 清水)

 

No.350】 00年12月13日 N.O.さん
抗癌剤の効果について 

母56歳、平成11年9月に乳癌末期と診断されました。その後、現在まで抗癌剤タキソテールを3週間に1回使用しています。先日抗癌剤投与の前に白血球の値を調べたところ3000位の為、抗癌剤が投与できず、白血球の値を上げるロイコンとcepharanthinという錠剤を飲んでいます。しかし、なかなか4000に満たない為、現在も様子を見ている状態です。このような状態は抗癌剤を始めてから初めてです。
質問ですが、@なぜ白血球がなかなか上がらなくなったのでしょうか? A癌というのは、抗癌剤に対して抵抗力を持ってしまうのでしょうか?
この抗癌剤タキソテールを投与してから、癌が移転していた大腿骨や骨盤の骨も元通りになって、歩けなかった母が元気に自分で歩けるようになったり、癌による腰等の痛みもなくなって、骨シンチ等の検査でもだいぶ癌の影が少なく薄くなってきて、本当に良かったと思うのですが、この抗癌剤タキソテールが効かなくなってしまう事を考えると心配でなりません。どうぞご助言下さいますよう、お願いいたします。

お母さんにタキソテールが効いてよかったと思います。主治医の先生の薬剤の選択が良かったのだと思います。タキソテールを使う時は、通常は白血球が2000以上もしくは好中球(白血球を細かく分類した時の一つの仲間)が1000以上というのが目安です。したがって主治医の先生は安全性を重視してかなり慎重に投与されていると思います。
ロイコンやcepharanthinといった薬剤の白血球を増やす力はあまり強くありません。ですから、抗癌剤の投与の回数が多くなるとだんだん効きが悪くなると思います。白血球がもっと下がった場合はG-CSFと呼ばれる、白血球を増やす力の強い注射がありますから、白血球のことはあまり心配しなくてもよいと思います。
癌が抗癌剤に対して抵抗を示すようになるのは残念ですが事実です。癌が抗癌剤に対して抵抗性を示すメカニズムとして、癌細胞が薬剤耐性を獲得して、投与された薬剤を細胞の外へどんどん汲み出してしまうという考え方や、ある薬に効く細胞は全て死んで腫瘍が小さくなるが、腫瘍の中には必ずその薬が効かない細胞がいて、やがてその薬が効かない細胞が増殖を始めて腫瘍が再び増大してくるという考え方などがあります。そこである抗癌剤がどのくらいの期間効いているかを示めすために奏功期間(抗癌剤が効果を発揮している期間)という指標ががあります。例えば、タキソテールを進行した乳癌もしくは再発した乳癌の治療の一番初めの薬として使った場合、奏功期間の中央値(奏功期間の短い人から長い人まで順番に並べてちょうど真中の人の奏功期間)は40週前後といわれています。したがって、お母さんの場合は今までタキソテールが効いた人の中では平均より長く効いている方だといえます。今後どこまでその効果が持続するかは分かりませんが、とにかく効かなくなるまでしっかり使う事が肝心だと思います。タキソテールが効かなくなっても、まだ他にも抗癌剤がありますから、まだすぐにあきらめる事はありません。しかし、2番目3番目に使う薬はだんだん効きが悪くなってきます。効きが悪くなってきた時は、抗癌剤は副作用も強いので、効果と副作用を十分に検討して使う事が大事になってきます。乳癌末期と診断されたということは、厳しい様ですが、けっして治る事はないと考えた方がよいと思います。お母さんが、残り限られた人生を、元気で苦しむ事なく少しでも長く過ごせるように家族の皆で考えてあげることが大事ではないかと思います。蛇足ですが、お母さんにはホルモン療法は効果がないのでしょうか?ホルモン療法が有効だとかなり治療の選択肢は広がり生存期間も延びると思いますが...。(文責 清水)

 

No.349】 00年12月12日 A.K.さん
乳癌検査について

今回は二つアドバイス頂きたい事があります。現在36になります。8月の乳がん検診で左胸にしこりが見つかりマンモ・エコー・細胞診と精密検査を受け良性の診断を受け、12月に再検査でも同じ診断を下されました。良性でも手術での組織検査もあるようですが、左はやたらに大きく腫れ気味、右は多少水がたまっているそうで、いずれにしても乳腺症とは診断できないし、今度は3月と3ヶ月毎に経過を見ていかなければならなくなりました。今後今までの検査の他にもっと必要検査は無いのでしょうか?それとも考えられますか?それと実は子供無し、不妊治療中に精密検査が必要になり、今は中断しています。長年の過剰なホルモン治療が影響したのでしょうか?もちろん先の事は100%わからないでしょうが・・・。再開すると悪性にかわるリスクも高くなる。やはりあきらめた方が可能性が少しは減るのでしょうか?アドバイス頂けたら幸いです。

マンモ、エコー、細胞診まで行っていれば、後は局所麻酔下にしこりを切除して病理検査するだけです。どのような場合にしこりを切除するかというと、1)細胞診で癌が疑われた時  2)細胞診が良性でも、触診、MMG(マンモ)、エコーのいずれかでどうしても癌の疑いが否定できない時 3)定期的な検診が受けられない時 4)乳癌の好発年令(40代から50代)である時 5)患者さん自身が切除を希望した時などです。Mailの内容から、3つの検査で良性と診断されたのであれば、念のための定期検診でよいように思います。しかし、不妊症の治療中でホルモン療法を行っているのであれば、切除して癌でない事を100%確認してから、不妊症の治療に専念するという考え方もできると思います。
不妊症のホルモン治療が今回のしこりと関係ある事は事実です。不妊症のホルモン治療をしている方で、乳房が腫ったり、しこりができたりするのは珍しい事ではありません。しかし、不妊症のホルモン治療が乳癌のrisk factorという証拠はありません。それよりも出産の経験がないというのは乳癌のrisk factor(乳癌になり易い因子)ですから、不妊症の治療をして出産するのが乳癌発生のriskを下げることになると思います。但し、もし現在小さな乳癌ができているのであれば、ホルモン治療はその乳癌を育てる事になります。ですから、乳癌ができていない事を確認する必要があります。(文責 清水)

 

No.348】 00年12月12日 M.N.さん
右胸のしこりについて

もうすぐ21歳になる大学生です。ここ最近右胸の谷間より少し上の部分が痛いのです。押して痛くなるときもあれば、ジンジンと痛む時もあるのです。左と比べた時、しこりのようなものがあるような気がしたんです。これって乳がんと関係あるのでしょうか?
また関係ないかもしれないんですが、3年くらい前に精神的なダメージがあり、そのころから精神的ダメージがあったりすると同じようなところが痛くなるときがあるんです。これは精神的なものによるものであって、乳がんとの関係はなさそうですか?なんだか不安になって、自分が所有している女性の医学本で調べると、乳がんなった時の形や色の変化しか載っていなかったので大丈夫なのかなとも思うのですが・・・それに患者の多くは30代以上だとか。どうなんでしょうか?教えてください。

mailの内容からすると、乳癌の可能性は低いと思います。しかし、乳房に関して少しでも気になることがある時は、必ず、専門医の診察を受けて下さい。(文責 清水)

 

No.347】 00年12月07日 わた子
線維腺腫の経過観察中の妊娠について

30代前半の既婚女性です。7月末の市の乳ガン検診で精密検査を勧められ、8月中旬近所の大きな総合病院で検査を受けました。初診時には、レントゲン・触診・エコー検査で、「1.5cm程度の乳腺線維腺腫と思われる」との診断で、経過観察となりました。先月11月末再診時の、触診・エコー・注射針で組織を採取して行う検査の結果も同様でした。「線維腺腫は、良性なので経過観察していけば心配はないが、摘出して確認しない限り、100%そうだとは言い切れない。大きくなる場合もあり、万が一のことを考えると手術で採ることを勧める。しかし、手術のするしないは本人に任せる」との医師の意見。今後出産を希望している旨を伝えると、「妊娠中に万が一、しこりが大きくなったりして手術を行うことになった場合、母乳の影響などで手術や縫合が難しく、傷がきたなくなる場合もある」とのお話で、3ヶ月後にまた受診することになっています。
そこで、以下の質問にお応えいただきたく、よろしくお願いいたします。
@しこりを残したまま経過観察中の妊娠出産は、やはり避けた方がよいでしょうか。
A「同じ診断を受けた方は、ほとんどの人が手術で採ってしまう」との主治医の話ですが、しこりを残したままで、経過観察している人はどの程度の割合でいるのですか。
B手術をせずにこのままで経過観察をしていく場合、大きくならないとほぼ確認できるまでにどれくらいの期間がかかるのでしょうか。それとも、今後いつでも大きくなる可能性はあるのでしょうか。

1)線維腺腫であれば、しこりを残したままで妊娠出産しても何も問題はありません。”わた子”さんの場合大丈夫かどうかは、しこりが癌でないかどうかです。mailの文面からは、1.5cmで3ヶ月経っても大きさが変わらず、レントゲン、エコー、細胞診の全てが線維腺腫の診断に合致しているとなると、99%線維腺腫と考えてよいと思います。但し、主治医の先生がいうように、切除していないので100%そうだとは言い切れませんが。良性の乳腺腫瘍を切除するかどうかは、99%大丈夫なら手術はしないという医師から、1%でも危険があれば切除すべきだという医師まで、医師が10人集まれば10通りの意見があると思います。手術をすれば、ちょっと痛い思いをして、傷が治るまでの約一週間は多少日常生活が不自由で、乳房に2cm位の傷がつきます。しかし、もうそのしこりに煩わされる事はなくなります。手術をしなければ、痛い思いも不自由も傷もありませんが、そのしこりと付き合っていかなければなりません。後は本人の考え方次第だと思います。ただ、癌の可能性が低いようなので、急いで決断する必要は無さそうですね。3ヶ月後に診察してもらって、その所見からもう一度考えてもいいと思います。
2)前にも述べたように、良性腫瘍を手術するかどうかは医師の考え方で異なってくるので、一概には言えません。その先生はどちらかというと切除派のようですね、だからそのような言い方をされたのだと思います。ちなみに私の個人的な見解は、10代、20代,30代前半までで、他の検査で線維腺腫だろうと診断された場合は、御本人の希望がなければ切除しません。30代後半から40代になると、例え他の検査が線維腺腫だと診断しても、この年代からは癌の発生頻度が高くなってくるので、どうしても手術したくないという人以外は手術を勧めています。
3)3ヶ月で大きさが変わらなければまず大丈夫ですが、ゆっくり大きくなる癌もありますから、念を入れれば1年くらい変わらなければ大丈夫だと思います。但し、手術をしないで経過を見る場合に気を付けていただきたいのは、数年大きさが変わらないとすっかり安心してしまい、10年20年経っていよいよ癌年令になってきた時に、その良性のしこりのそばに癌ができて、少しずつしこりが大きくなっているのに、”このしこりは10年以上も前からあって、良性と言われているから大丈夫”と決めつけてしまい。相当大きくなってからなんか変だといって受診される方がいます。諺に”喉元過ぎれば.....”というのがありますので注意して下さい。(文責 清水)

 

No.346】 00年12月07日 yumika
叔母の乳癌の再発について

叔母の乳癌の再発についてですが、お答えいただけると嬉しいです。彼女は10年前に左胸を全部摘出しています。その時、腹部の皮膚を胸に移植しました。それからは、現在まで再発の徴候は見られないと思われましたが、最近体重が落ち始め、10kg程度痩せました。また移植した皮膚が裂けているのですが、痛みは感じないとのことです。今日、医師に相談した所、乳癌を摘出した後、同じ場所にがんが再発するのはよくあるので、様子を見るために、また来るようにと言われたそうです。痛みを感じない、というのは良くないとも。ちなみに、摘出後の胸の触覚はもともと鈍かったそうです。これは乳癌の再発の可能性が高いのでしょうか?また、皮膚癌ではなく、乳癌でしょうか?病院に行った後、不安がった叔母に相談されたのですが、私にも分かりかねたので、お尋ねする次第です。よろしくお願いします。

誠に申し訳ありませんが、診察をしていないので、”移植した皮膚が裂けている”という状況がよくわかりません。ただ、確かに手術後10年位経って手術した傷の近くに癌が再発するという事は、頻度は多くありませんが、珍しい事ではありません。しかしそのような転移が疑われた場合は、通常は、切除するか、もしくは細い針を刺して細胞診を行うかして転移かどうかを確かめると思います。主治医の先生が様子を見ようというのであれば心配ないのではないでしょうか?可能であれば叔母さんと一緒に先生のところへ行って、よく話を聞かれた方がよいと思います。(文責 清水)

 

No.345-1】 00年12月06日 M.U.さん
九州でのハーセプチン療法

九州在住のM.U.です。8月に母の乳ガン再発が分かり(左胸脇と左首筋に各々1cm大)、CAF療法を3クール受けましたが、ガンの大きさもマーカーの値もほぼ変わりませんでした。11月からはホルモン療法(MPA)を始めましたが、母のガンはER(-)、PR(-)なので心もとない状況です。間もなく放射線療法も始まる予定ですが、この相談室のQ&Aを読んで、ハーセプチン療法が母のガンに効くのではと思い始めました。そこでお願いと質問です。
1.福岡県近辺で同様に既にハーセプチン療法を行っている病院があればご紹介下さい。
2.HER2の出方を調べるために手術でガン細胞をとり、検査をするそうですが、この手術が病状を悪くすることはないですか(ガンは切ったら余計悪くなると言う人もいて、実際、大腸ガンだった父が手術後に容態が悪化し亡くなったので心配です。また母は小心者なので手術と聞いただけで大きなストレスを受けます)。
3.主治医の先生によると、次に母が化学療法を受けるなら、タキサンを使う予定とのこと。ハーセプチンをこれと併用できますか。単独投与とどちらが効果が望めますか。

ちなみに母が最初に乳ガンと診断されたのは平成10年4月で、この時に左乳房と周辺リンパ節15ヵ所を切除(1つのみに転移確認、ステージUと判断)しました。術後は1カ月で退院し、経口でUFTを2年間服用(3包/日)していました。

1)申し訳ありませんが、私はそのような病院は知りません。但し、現時点の情報では、来年春から夏くらいには日本でも正式に使えるようになりそうだとのことです。どうしても今使いたい(Her2/neuが++だとして)というのであれば、Internetでアメリカの薬局(Internet上でクスリを売っている薬局)にaccsessして、主治医の先生に書類を書いてもらえば、購入することは可能です。しかし、日本の保険で認められていないクスリを日本で注射するというところにまた問題が生じます。主治医の先生にその病院で可能かどうか確認された方がよいと思います。
2)Her2/neuの過剰発現の有無は、はじめに手術をした摘出標本(お母さん乳癌の一部)を使って検査できますから、改めてそのために手術をする必要はありません。どこの病院でも手術で切除した標本は、パラフィン包埋ブロックという形で保存されていますから大丈夫です。
3)タキサンにハーセプチンを併用すると、単独より奏功率(10人中何人に効果があったか)奏功期間(クスリがどのくらい効いているか)ともに良くなることが、アメリカの臨床試験で証明されています。したがって、ハーセプチンが日本で使用可能となって、Her2/neuの過剰発現が証明されれば併用が勧められるでしょう。但しHer2/neuの過剰発現の頻度は25-30%位と言われていますから、過大な期待は持たない方が良いと思います。(文責 清水)

 

No.345-2】 00年12月21日 M.U.さん
ハーセプチン療法について

ハーセプチンの件は、11月にCAF療法の効果が今一つであると判明した段階で主治医の先生に相談したのですが、投与方法(量や頻度、他剤との組み合わせ)や効果、副作用について不明な部分が多い、との説明を受けました。母のガンはHER2を多く持つガンの特徴(ホルモン感受性や化学療法への反応に乏しい)を示していると思います。放射線やホルモン療法も体を弱らせるので、できたら先にハーセプチンを試したい気がします。今のところ他の部位への転移は見られないので、放射線で悪いところだけを叩くのも定石との情報もありますが、どちらが良いのでしょうか。実際、今から輸入の手続き等を始めてハーセプチンを投与できるまでには、どの程度の日数がかかるのですか。必要なら東海大学病院に母を連れて行き、セカンドオピニオンという形で投与方法等について情報をいただき、実際の投与はこちらの病院で行うということができたらと思うのですが・・・。

ハーセプチンを使用するかどうかを考える前に、まず標的であるタンパク質ががん細胞にあるかどうか至急調べるべきです。主治医に検査を依頼してください。もしできないようなら、組織のブロックを拝借できれば私どもで調べることは可能です。
検査の結果適応であった場合、使用するかどうかは患者さんの病状と非承認薬であることのデメリットを考慮して決める必要がありますので、直接お目にかかって、ご相談したく思います。ご本人の状態がよくなければ、ご家族の方で結構です。
個人輸入にかかる日数は、申し込みしてから早ければ1週間で入手できます。(文責 徳田)

 

No.345-3】 01年04月30日 M.U.さん
心臓への転移

母の再発した乳がんが、心臓に転移したと言われました。心臓本体とそれを覆う膜との間にガン性の体液が溜まり、心臓を圧迫し、心不全を引き起こしたため、心臓に針を刺して体液を抜く処置を4月9日(160ccを抜き取る)と21日(同450cc)に受けました。主治医によると、心臓に何度も針を刺すのは危険で、回数にも限界があり、水の溜まる速度を考えると、このままでは1カ月ももたないとのこと。また縦隔のリンパが腫れ、肺への転移も考えられるとのこと。
今後の対応としては
(1)積極的治療をせず緩和ケアに移行する、(2)タキソールを少量ずつ試す、という2つの選択しかなく、(2)の場合は奏効すれば延命が可能だが副作用で急変したり、特に骨髄抑制による血小板の減少で止血難となり、心臓に再び水が溜まった場合に針を刺して抜く処置ができなくなる恐れもあるとのこと。
この2つ以外に選択肢はないのでしょうか。
(1)を選んだ場合、心臓に針を刺す措置は何回まで可能なのでしょうか
(2)を選んだ場合、母に余計な苦痛を与えることになりませんか

母はH10年4月に乳がんで左乳房を切除し(ステージU)、その後、2年間UFTを服用していましたが、H12年8月に再発。(リンパ節転移、左鎖骨上と左脇下に大小複数の腫瘍)。その後、CAF療法を3クール受けましたが、奏効せず中止。11月からホルモン療法(ER-,PR-なのでMRPを選択)、12月〜H13年1月に並行して放射線療法(計30回照射)を行った結果、3月中旬には腫瘍の大半が消失していました。
最後にもう1つ質問です。心臓転移を早い段階で阻止または見つけることは不可能だったのでしょうか。再発以来、病院に通っていたのに、こういう結果は残念です。

お母様は、心臓ではなく、心臓を包む袋(心嚢)の膜に転移されたものと思います。このような転移を癌性心嚢膜炎といいます。これは、乳がんが進行して起こったものであり、防ぐことができません。何回も針を刺すと、膜と心臓に癒着が起こり、膜と心臓の間に隙間のない部分ができ、針を刺すことが危険になることがあります。時には、心嚢に細い管を入れ、膜と心臓を癒着させ、水が貯まるスペースを無くしてしまう治療をおこなうこともあります。心嚢に水が貯まるままにしておくと、心臓が圧迫された危険ですが、管や穿刺などで心嚢水が貯まらなくなると、心嚢水のために死に到る危険性が少なくなります。何回まで針を刺すことができるかは、それぞれの方の状態によります。積極的治療をせず緩和ケアに移行するか、タキソールを少量ずつ使用するかの選択は、お母様を拝見していませんので判断できません。(文責 福田)

 

No.344】 00年12月05日 ayaaya
乳癌の可能性はありますか?

現在25歳・独身です。自覚症状は特にありませんでしたが、母が婦人科の癌でなくなったこともあり(30代に乳癌・50代で卵巣癌)、定期的に診てもらおうと思い、先日乳腺外科専門医のクリニックに行き、マンモグラフィ→それを見た上での触診→エコーと触診の順で検査を受けました。最後のエコー検査で、左胸に、約2mmのしこりがあるといわれました。とても小さいので、先生もエコー後に触診して初めて「これかな?」とわかる程度、と仰っていました。触った感じは硬くはないとのこと。生検をしたいが、小さすぎてうまく組織が取れない可能性が高いということでした。同日中に、スポットを書いて再度マンモグラフィを撮りましたが、やはり写っていないので、結局3ヶ月の猶予を置いてまた検診に来るようにといわれました。3つ、ご相談させてください。
@2mmのしこり、というのは癌のごく初期にあたるものでしょうか。
Aこのまましこりが大きくならなかったら、癌である可能性は低いのでしょうか。
B再検診までの三ヶ月のあいだに、他の専門医の診察を受けようとする場合の注意点はありますでしょうか。

1)2mmのしこりが癌の初期である可能性はあります。しかし、癌以外の可能性はもっとあります。
2)しこりが癌であれば徐々に大きくなります。したがって、しこりが大きくならなければ、癌の可能性は低いです。
3)他の医師に診てもらう時(所謂2nd opinion)は、できたら、前の先生からレントゲンやエコーの写真などを借りていくと、無駄な検査が省略できて話が早いと思います。
mailの文面からは、十分な検査がされているので、3ヶ月後の再診でも大丈夫だと思いますが・・・。(文責 清水)

 

No.343】 00年12月04日 M.T.さん
全摘・温存手術の選択について

母(65歳)が今月1日、乳ガンの宣告を受けました。O総合病院で、担当医師はF県立医大の医師です。しこりは右胸上部、1.7センチ(ステージTだと思いますが)、初期で、触診では「リンパ節のしこりはないようだ」といわれたそうです。浸潤か非浸潤かは本人は聞いていないようです。転移の可能性や術後の放射線治療の身体的負担、年齢的な事から、母は温存ではなく、乳房、リンパ節の摘出手術の方がよいのではと考えており、医師からもそのように勧められたとのことです。あわててこのHPなどで勉強しているところなのですが、年齢的な面から考えた術後の腕や肩の後遺症の負担、まだ初期という点、心理的な面などから自分としては「温存手術で済ませられれば」とも思っています。手術法選択についてアドバイスいただければ幸いです。(データが少なくて恐縮なのですが)
精神的にショックを受けている状態で、メンタルケアについてのご教示もいただければ幸いです。6日に手術法や入院日などについて医師と面談する事になっています。

1.7cmの乳癌で、乳房切除術か乳房温存療法かの選択に関する質問と理解しました。
まず第1に、どちらの治療法を選んでも再発率、生存率には差がないというのが大きな原則だと思います。次に、乳房切除すれば、片方の乳房がないという生活が強いられます。一方、乳房温存療法では、頻度は少ない(放射線治療をすれば5%以下)が、残した乳房内にもう一度乳癌が発生する"乳房内再発"という問題が残ります。この二つの問題のどちらを選択するかがpointになると思います。この二つの問題を選択するために、いくつかの要因を考えます。
年令?: 私個人としては年令は関係ないと思います。年令よりその人の生活環境(家族構成、仕事、趣味など)の方が大きな因子になると思います。
放射線治療: 乳房温存療法では術後温存乳房への放射線治療は原則として必須です。放射線治療は5-6週間、平日は毎日病院へ通わなければいけません。したがって、通院が大変という場合(足が悪い、遠いなど)は乳房切除の方がよいかも知れません。また、日本人には放射線アレルギーがあると言われており、放射線は絶対にかけたくないという人もいます。その場合も乳房切除の方がよいかも知れません。身体的負担というのはないとは言いませんが、照射するのは乳房だけなので、頭に照射した時におきる脱毛や、内臓に照射した時におこる白血球の減少や、食べ物のつかえといった症状はおきません。唯一の副作用は、照射部位の皮膚炎(ひどい日焼けの状態)ですが、これも時間が経てばよくなります。
腕や肩の後遺症: 手術した方の腕がむくんだり、動きの制限がくるのは、乳房切除のためではなく、腋窩郭清(脇のしたのリンパ節を全て切除)したことによっておこります。乳房温存療法でも腋窩郭清は乳房切除の時と同じように行ないますから、腕や肩の後遺症は同じと考えてよいとい思います。
心理面: 私個人はこれが一番大きいと思います。要するに、せっかく乳房を温存しても、”乳房内再発が起きるのでは”といつも心配して暮らしているような心配性の方なら、切除してあげた方がよいと思いますし、”もし乳房内再発が起きたらその時はその時で考える、それより、温泉に行ったりしたいのに乳房がないと困る”という割合とドライな考え方の方であれば、乳房温存がよいのではないでしょうか。お母さんの性格を考慮してadviceしてあげて下さい。医師には本人の性格まではわかりませんから。
Mental Care: 難しい問題です。基本的には家族の方が、まず本人の心配事をよく聞いてあげること。はじめは何となく不安なのですが、よく話を聞いていくと、具体的な心配事がわかってきて、中には家族でも解決できる問題もあります。以外と些細なことを心配している場合もありますから...。医療に関する心配は、きちんと治療すれば大丈夫だということを傍にいて言ってあげることが唯一できることでしょう。可能であれば、本人をひとりにしない方がいいかもしれません。ちょっと不安になった時、傍に誰かがいてくれるのは心強いものです。
6日の日は放射線治療の長所短所、腕や肩の後遺症の問題、乳房切除の長所短所乳房温存の長所短所をもう一度先生に聞いて確認して、お母さんの性格を考慮して決めたらどうでしょうか。本当はお母さん自身の問題ですから、本人が決めるのがbestだと思いますが、お母さん達の年代の方は、自己決定ということに慣れていないので、息子さんがadviceして決めるのもbetterだと思います。(文責 清水)

 

No.342】 00年12月04日 H.I.さん
咳をすると胸が痛みます

私は33才1児の母で、昨年5月に手術をし放射腺治療後は、ノルバテックスとリュ‐プリンの補助療法を行っています。この補助療法の影響で骨密度が下がり、骨を強化するダイドロネル錠も服用しております。この1週間ほど風邪で痰を伴った激しい咳をしていたところ(1日38度の熱もだしました)、土曜日から咳をすると胸(骨?筋肉?)が痛みます。咳きこまないときには指で押してみると軽い圧痛があります。11月に胸部レントゲン、骨シンチを終え、異常なしとのことですがやはり心配です。近くの開業医では風邪とのことですが、主治医のもとで早いうちにレントゲンなど撮った方がよいのでしょうか?それとももう少し様子をみても良いのでしょうか?

咳や痛み等の症状が出ると、確かに転移や再発のことが頭をよぎります。このような心配は、乳癌の手術を受けた人の多くが経験することで、術後1年、2年と経過するにつれて少しずつ少なくなってくるようですが、何年経ってもなくならないようです。このような時は、遠慮することなく主治医に相談し、診察を受け、自分の納得する検査を受けて、再発や転移でないことを確認するしかありません。主治医や他の人から見れば、”そんなことで心配して...”と思われるかも知れませんが、本人にとっては深刻な悩みなので、本人が納得できるような検査をしてもらうのが良いと思います。
11月に検査をされていて異常なしと言われているとのことで、再発である可能性は低いと思いますが、ひとりで心配しているより、主治医の診察を受けて、必要があれば検査をしてもらって、咳や痛みが再発の徴候でないということを確認した方がよいと思います。(文責 清水)

 

No.341】 00年12月03日 Kyrie
悪性度について

経過観察中の母のしこりが大きくなっていました。半年で5大きくなり1.1になっていました。今、細胞診の結果待ちです。毎日のように泣く声が聞こえてきてたまらなくなり、たくさんの物を調べてきました。レントゲンの結果、母はしこり内部の石灰化の固まりが大きくなっていて、その固まりから3本、ツノのようなものが伸びており、先生は「これがちょっと気にかかる」と話しているそうです。細胞診の時、注射針を刺す先生が「お、やわらかいな、柔らかいのはいい事やねんで。アレ(癌)は固くなっていきよるからな。」と言われたそうです。ちなみにその先生は一人で1日に100人もの患者さんが訪れる病院で、評判の院長先生です。実は母の母親(祖母)も同じ先生にかかっているのですが祖母のときは即「癌やな」と告知されたほど、はっきり物をおっしゃる先生でその先生が「ちょっと気になる」という程度だそうです。
悪性度という言葉を耳にしました。悪性度が高いと進行も早く増殖も速いというのですが、母のしこりも速い速度で大きくなってます。高い悪性度の乳癌は大きさだけでは1期のものでもリンパ節に転移している確率が高く再発の確率も高いということで、とても心配です。母は「早くにわかったのがよかった」と言っています。まだ結果待ちの段階ではありますがやはり心配です。そのことについて教えて下さい。

悪性度という言葉の説明は難しく誤解を招きやすいのですが、私なりに説明してみます。
今、癌を人間の社会でいう所の犯罪者に例えてみます。つまり、犯罪者は人間の正常な社会生活を脅かす存在であり、早く発見し捕まえなければいけません(ちょうど癌が正常な体を蝕んでいくように)。ひとくちに犯罪者といっても、スリや万引きのように悪い事をしているには違いないが、その罪の程度は軽く、社会への影響も比較的軽い犯罪者から、殺人を犯したり、爆弾テロなどの凶悪な犯罪者まで様々です。癌もちょうどそのように、同じ癌ではあるが成長も遅く、転移する頻度も少ない癌から、小さいうちに見つけても、あっという間に転移再発して人の命を奪う癌まで様々で、後者の様な癌を悪性度の高い癌と呼びます。乳癌で悪性度の高い癌の代表は炎症性乳癌です。そこまで悪性度が高くない通常の乳癌でも、一人一人の乳癌は少しづつ悪性度が違い、その差が同じ大きさの乳癌であっても予後に差が出るひとつの原因と考えられています。
それではある患者さんの癌の悪性度を調べるにはどうするか?これは大変難しい問題で、実際は手術をしてその経過を見ないと分からないのですが、それでは話にならないので、何とか手術の前に、もしくは手術後にその悪性度がわからないかと努力しています。手術の前に調べるのが、臨床的悪性度といい、"Kyrie"さんが書いているように、しこりの大きさの早くなり方が、悪性度の一つの目安であり、もう一つは、しこりの大きさが小さいのに、わきの下に大きなリンパ節があるような例が悪性度が高いと考えられています。一方、手術をすると癌の組織が採れるので、その組織の所見からその癌の悪性度を調べます。組織学的な悪性度といいます。内容は細かくなるので省略しますが、手術を受けた後に先生に聞いて下さい。
ところで、お母さんですが、"半年で5大きくなり1.1になった"という文面を、半年で5mm大きくなって1.1cmになったと解釈すれば、そんなに悪性度の高い方ではないと思います。何よりも、まだ結果が出ていないわけですから、今から先のことを心配するより、まず細胞診の結果をお母さんと一緒に聞きに行って、よく先生の説明を聞いて下さい。癌であると決まったら、先生に悪性度について質問されたらいかがでしょうか。(文責 清水)

 

No.340】 00年11月30日 K.N.さん
妻の腹部のしこりについて

妻の乳癌手術後に、腹部の脂肪の中に1〜2cmのしこりがあるのが触手でわかりました。(左脇腹の脂肪の中)妻は再発したのではないかと思い病院に行くのが怖くてなかなか診断を受けようとしません。おなかの脂肪に転移癌ができるのでしょうか?妻の乳癌のクラスはVAです。手術後、約4年になります。又、乳房摘出手術後、へその周りに贅肉がたくさんつくようになりました。助言よろしくお願いします。

腹部の脂肪の中のしこりで多いのは脂肪腫、また皮下のしこりで多いのは粉瘤(アテローム)など主に良性のもので、悪性のしこりの方がまれです。乳癌の軟部組織(脂肪や皮下組織)への転移・再発は局所(手術した所)が最も多く、もしも腹部の脂肪組織に転移を起こしたとすれば、おそらく血行性の遠隔転移ということになると思います。可能性は少ないと思いますが、やはり主治医の先生に相談されて、指示を仰ぐのが一番だと考えます。(文責 片山)

 

No.339】 00年11月28日 AK
炎症性乳癌について

48歳、姉のことです。 高齢出産(46才時・初産、特に異常はありませんでした。)で女児を出産し育児におわれていましたが、11月になって『炎症性乳がん』と診断されました。細胞を採っての検査を終えましたが今度は、組織を採って検査をすると言うことです。本などで『炎症性乳がん』について調べましたが、記述が少なく症状や療養、治療等についてお知らせ下さい。また知人を通して、癌の患部を温熱で暖めると良いときき、通販で患部を温める為のコテ状の物を購入しました。乳房は多少腫れて熱をおび、痛みもある状況です。そのような患部を温めても良いものでしょうか。以上、2点についてお知らせ下さい。

炎症性乳癌は、癌病巣が短期間にびまん性に進展し、熱感・疼痛などの軽度の急性炎症症状を呈したものをいいます。本来臨床診断名であることから独立した病理組織型分類はされていません。組織学的には乳腺内に癌巣腫瘤をもつものと、明らかな癌巣腫瘤形成を欠くものとがありますが、いずれにしても本来の組織型により分類します。かなり進行性の病態であり、治療はいわゆる集学的治療といって、局所の動注療法をふくめた術前補助化学療法や手術療法、内分泌療法などが行われます。(文責 片山)

 

No.338】 00年11月28日 Y.H.さん
手術後の分泌液について

8才の妻(子供無し)が2000年9月19日に右乳房温存手術(ステージ1、リンパ節転移なし、ホルモンレセプター陽性、悪性度Grade3、現在経口抗がん剤フルツロンカプセル/毎日、ホルモンカプセル皮下/毎月、投与中)を受け、その後30回の放射線治療を先日11月22日に終了致しました。実は昨日その右乳房乳首から少し黄色っぽい分泌液が出てきました(血液は混じっていない様です)妻はハイリスクだと思われるので、がんの再発やがん残存の可能性は有るのでしょうか、それとも単なる放射線治療や投薬の影響なのでしょうか、また分泌液にがん細胞が混じっている場合、私が吸引して何か悪影響はあるのでしょうか?妻と共にとても心配しております、どうぞ宜しくお願い致します。

乳頭部が放射線治療による軽度の熱傷でビラン様になっていないでしょうか?そこからの分泌物であるとすれば、次第に軽快してくると考えられます。明らかに乳管からの分泌物であれば、黄色でも目に見えない血液が混じていることもありますので、主治医の先生に細胞診などの検査を相談されては如何でしょうか?
吸引した側に悪影響は無いと思いますが、放射線治療後のデリケートな時期で、上記のように軽度の熱傷のあとなので、あまり強い刺激は与えない方がよろしいと思います。(文責 片山)

 

No.337】 00年11月27日 naka
ローヤルゼリーについて

私の姉(37歳)が乳癌で10月に手術を行い約2週間で退院し、現在、自宅にて療養中です。術後の体力回復のためにとローヤルゼリーとアガリクス(粉末)を送ったのですが、ローヤルゼリーにはホルモンを活発にする効能・効果があるため飲まないほうがよいと聞きました。現在、病院からホルモンの活動を抑える薬を処方してもらい継続的に服用している模様です。よかれと思い送ったローヤルゼリーが術後の体に対して逆効果であれば意味がありません。以上の件に対しましてよいアドバイスをいただければ幸いです。何卒よろしくお願いいたします。

ローヤルゼリーが乳癌に対して悪さをするという科学的なデータは無いと思います。また逆に、効能があるというデータも無いので、積極的に用いて下さいというアドバイスも出来ません。患者さんや御家族の方から、栄養食品や効能があるといわれている温泉の可否などについてよく質問されますが、いずれも上記のようにお答えするしか無く、いつも通常の食生活でバランス良く栄養を取り、規則正しい生活をして下さい、とお答えしています。(文責 片山)

 

No.336】 00年11月26日 dori
右胸横のひきつれがあるのですが・・・

年齢35歳、未婚、出産経験無しです。1週間くらい前から右胸のひきつれがあります。背伸びをしたときに、ひきつれを感じ、右胸のした肋骨あたりになんだか違和感があって、触ってみたのですが、しこりのようなものはありませんでした。乳房全体や脇の下を調べてもそのようなものはありません。でも、鏡を見てみると確かに線があるのです。以前はありませんでした。生理はこの前の日曜日から4日間、周期は以前は28日で正確でしたが、最近は24日から26日くらいになりました。丁度、生理の前と生理中だからかとも思いましたが、今までにそんなことはありませんでした。病歴は2年半前に胆嚢腺筋症で腹空鏡下の手術を受けました。そして去年は早期の自然流産をしています。不安でしかたありません。ご意見を聞かせて頂けませんでしょうか。

基本的に乳腺外科の外来を受診していただくしかないと思いますが、お話を拝見した限りで乳腺疾患ではない可能性が2つあります。1つは腹腔鏡下胆嚢摘出術の際、右の肋骨の下にもトロッカーを入れるための5mm位の穴を開けるので、その跡による引きつれではないか?ということ。もう1つは、腹壁−乳房に向かっての静脈に血栓ができて静脈炎を起こし、索状の線を形成することがあり、モンド−ル病といいます。経過観察のみで2ー3週間ぐらいで軽快することが多いので、心配いりません。ただ、乳腺にしこりがあって、それによってひきつれて線を形成することもあり得ますので、一度是非専門医を受診して下さい。(文責 片山)

 

No.335】 00年11月24日 しお
しこりについて

先日、大きさ1センチほどのしこりがあることがわかり検査をしたところ、そのしこりはミルクかす(乳汁)が詰まってしまったものではないかと言われました。そのしこりは悪性に変化する事はあるのでしょうか?またそのしこりは取らなくてもいいのでしょうか?ほおって置いて大丈夫でしょうか。

特に授乳期の患者さんで、乳汁のたまりができて、それをしこりとして自覚することはよく経験されます。これ自体が悪性化することはなく、切除も不要ですが、このたまりから乳腺炎を起こすことがあり、赤く腫れて痛むなどの症状がでたら専門医の診察を受けて下さい。(文責 片山)

 

No.334】 00年11月24日 M.H.さん
抗エストロジェン剤の服用期間について

私は現在52歳です。1pと4oの乳癌を温存療法で切除しました。リンパ節への転移はありません。転移のリスクは低いと言われました。ゾラデックス1年の予定でしたが、1年が終了したところで主治医にゾラデックスを続けるか内服薬にするか聞かれ、迷っていると後6回やって中止にしましょうと言われ、現在14回目が終了しました。主治医の話ですと、ゾラデックス終了後は5年間内服薬を飲むらしいのです。私は5年前に子宮筋腫で子宮を切除しているためゾラデックスを中止しても生理が終わっているかわかりませんが、私の友人は既にほとんどの人が閉経しています。5年間薬を飲むとすれば私は57歳になっています。その頃はいくら何でも閉経しているとはおもいますが、5年間も服用する必要があるのでしょうか。

ゾラデックスは閉経前の乳癌患者さんへの投与が適応となっている薬で、至適投与期間がどれぐらいかはまだ分かっていません。一応1ー2年としていることが多いと思われます。その後中止にすれば生理は再開するのですが、あなたのように閉経前後の方はそのまま閉経となってしまうことも考えられます。その後に投与を考慮されている経口薬は、おそらくタモキシフェンという抗エストロジェン剤だと思われますが、これはゾラデックスとは作用機序が違い、体内のエストロジェンと結びつくことで乳癌の再発を抑制しようとする薬です。2年間よりも5年間服用した方が再発をより抑制することが分かっており、閉経後のエストロジェンレセプター陽性例のほうが有効であるとされています。(文責 片山)

 

No.333】 00年11月17日 M.S.さん
乳癌の骨転移について

左乳房温存治療後4ヶ月経過しました。現在、ホルモン療法を受けています。最近、患側の肩甲骨が打撲していないのに痛みます(特定の部分だけに圧痛)。そのため左側臥位ができないほどです。肩甲骨に骨転移したのではないかとちょっとナーバスになっています。もし骨転移していたらどのような症状が生じるのでしょうか。また骨シンチ以外の検査法はありますか。あともう一点、HER2overexpressionとは何か教えて下さい。ご多忙中、恐縮ですがよろしくお願いいたします。

乳癌の骨転移は脊柱、肋骨、骨盤など身体の正中に沿って起こることが多く、肩甲骨に単独に見られることは少ないと思います。脊椎に起こった場合はその神経圧迫症状により、痛みや麻痺が出ることがあります。また、骨盤ではその場所や程度により、痛みや歩行困難が症状となり得ます。肩甲骨の場合も痛みが出ておかしくありません。前述のように考えにくいとは思いますが・・・
検査としては骨シンチグラムの他に、単純X線撮影やCTスキャンも有用です。あまり症状が続いて心配なようでしたら、一度主治医の先生と相談されては如何でしょうか。
HER2は遺伝子操作薬であるTrastuzumab(ツラスツズマブ、ハーセプチン)が作用する蛋白質であり、overexpressionとはその過剰発現で、これが高いほど、この薬を使った場合の進行性乳癌患者の生存率を高める効果があることが分かっており、日本では来年認可される予定になっていて、乳癌患者さんにとってまた新しい治療法の選択肢ができることになります。(文責 片山)

 

No.332】 00年11月16日 E.I.さん
右胸の痛み

今年の7月に右胸にしこり(2〜3センチ)を見つけて、病院で触診・エコー・注射針により細胞をとる検査をし、99%腺維線種だろうということでした。なので、そのままで大丈夫だろうということで、何もせずにいました。その時は、痛み等まったくなかったのですが、10月の中旬ころからおもに右胸のしこりのあるあたり(時々、脇や左胸も)にチクチクとした痛みや、ぎゅーっとした痛みが出始めました。普段から排卵時の出血があり、過去に2度病院で検査しましたが異常はないということでした。が、今回は不正出血が1週間くらいあり、その時から痛みが始まった気がします。生理前ということもあったので、生理が終わればなくなるかと思ったのですが、生理が終わった今も痛みが続き、逆に痛みが強くなっている気がします。お忙しいとは思いますが、よろしくお願いします

排卵時出血は中間(期)出血ともいい、排卵時、一時的にエストロジェン分泌が中断されるために生ずる消退出血であると考えられています。今回出血の頃から乳腺の痛みが始まったということで、これが中間期出血であったとすれば、やはり生理的な痛みであると考えるのが妥当かと思います。排卵から生理まではエストロジェンやプロゲステロンの分泌が盛んで、これに伴って乳腺の張りや痛みが出現することはよくあることです。あなたの年令が分かりませんが、個人差はあるものの、30才前後からこうした生理的な周期の中で、乳腺の変性も始まるとされ、総称して乳腺症と呼んでいます。痛みが生理後も続くということも、外来で拝見していると皆さんよくおっしゃいますし、次の生理のときには何でもなかった、ということもよくあります。いずれにしても乳癌は痛むことは比較的少ないですから、あまりナーバスにならなくてよろしいと思いますが、線維腺腫があるので定期的に診てもらうようにはして下さい。(文責 片山)

 

No.331】 00年11月16日 eriko
乳癌治療について

沖縄県からの質問です。私の叔母が、乳癌と診断されました。県内のお医者さんに、本土の専門病院が良いのでは?と薦められました。まったく情報がないため、できましたらそういう所をご紹介頂けないでしょうか。よろしくお願い致します。

私は神奈川の人間で、沖縄−九州方面の病院には詳しくないのでよく分かりませんが、ひとつ、鹿児島大学医学部附属病院は如何でしょうか?
 http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/ がアドレスです。ここにアクセスし、第一外科・乳腺外来はここ、とたどってみて下さい。参考になればと思います。(文責 片山)

 

No.330】 00年11月14日 M.O.さん
乳腺線維腺腫

1年前に乳腺線維腺腫と診断された者です。1年前は、右乳房に1cmのしこりが一つでしたが、今年再検査したところ、1cmのしこりが1、5cmの大きさになっており、その他に2つ(両方とも1cm大)しこりが増えておりました。 念の為、生検をしましたが、良性という結果を得ました。 乳腺外科の先生は、このままいくと、来年あたりに切除した方が無難であるといわれました。 (もちろん、大きさが変わらなければ、もっていても大丈夫とのことでしたが) 
手術の際は、局所麻酔で日帰りできると聞いていますが、生検で経験したあの痛みをまたすると思うと逃げ腰になってしまいます。(生検は麻酔なしでしたが) 先生曰く、乳腺は麻酔が効きにくいので仕方がないとのお話でした。局所麻酔が嫌なら、全身麻酔しかないと説明されましたが、局所麻酔でなるべく痛みがなく切除してくれる病院をご存知であれば、お教え下さい。ちなみに現在通院している病院は大田区旗の台にある大学病院です。
お忙しいところ勝手なお願いで申し訳ございません。宜しくお願い致します。

あなたが受けた検査は、おそらく穿刺吸引細胞診という検査で、私も通常無麻酔でやります。その結果良性とのことで、他の画像検査等と総合して良性の線維腺腫という判断であれば経過観察でよろしいかと思われます。だだ、短期間に急速に大きくなるものは局所麻酔で取ることが次第に困難になるのと、中に極稀に悪性の葉状肉腫という腫瘍があるので、手術をおすすめすることがあります。
あなたの場合、1ー1.5cmの腫瘍が3個ということで、多分局所麻酔で切除可能かと思われます。乳腺のしこりは確かに意外と深い所にあるので、私も途中で麻酔を追加することがあります。しかし、局所麻酔には患者さんがしっかり覚醒しているので、気分などを確認しながらできるという全身麻酔にはないメリットもあります。私自身も局所麻酔による手術を何回か受けたことがありますが、最初の注入のときには確かに痛みを感じますが、効いてしまった後は大丈夫でした。
いずれにしても主治医の先生との信頼関係が大事だと思いますので、よく説明を聞いてコミュニケーションをとって決めて下さい。大学病院の先生とのことで、心配はいらないと思います。(文責 片山)

 

No.329】 00年11月10日 JIN
乳癌再発の心のケアーについて

母のことでご相談したいと思います。平成2年6月に左乳癌で手術を行っております。その後抗がん剤及びホルモン療法を行いましたが、肝機能等の問題で中断しました。平成9年、癌性胸膜炎で、胸水が溜まり治療し、その後抗がん剤の化学療法にて軽快しました。平成11年夏頃より腹水が溜まり、再度、化学療法の再開となり行っておりましたが、10本を過ぎる頃(本年6月頃)から、食欲が全くなくなり、便秘等の胃腸症状が強くなり、全身的に苦痛が強く、歩くことも困難となり、9月に入院いたしました。しかし入院しても特に行う治療がない、ということで、3週間程度で退院することになりました。(食欲は少し戻りました。) 腫瘍マーカーは落ち着いており、胸水及び腹水はX−Pでは問題なく、また胃透視、CT検査でも何か問題があるという訳ではないということです。しかし、本人は、息苦しさ、腹部の苦しさなどあり、立つこと歩くことなど、とても辛く通院も大変です。在宅酸素療法を行っておりますが、あまり楽ではありません。現在、息苦しさ、腹部の圧迫(苦しさ)、歩行困難、便通異常、腰痛、などさまざま訴えがあります。そのうち、どれかが強くあると、そのことに集中してしまい、ほかの症状は薄れるようです。このような患者の場合、入院の対象とはならないのでしょうか?横浜市立の病院なので、手術待ちの方がたくさんいらっしゃるので仕方がないとは思いますが・・・。父と二人暮らしなので、仕事に父が出でいる時には、母がひとりでおります。こういったケースはメンタル的な面とは考えないのでしょうか。例えば、抗神経薬などの併用はしないものなのでしょうか。検査の結果大きな問題がないのでしたら、心の治療を行い苦痛を取り除いて頂きたいと思うのですが・・・。ご意見を伺いたいと思います。宜しくお願い致します。

お母さまは術後7年で再発され、その後3年間治療がある程度奏効されているものとお見受けします。再発までの無病期間が長く、その後の病状の進みかたも比較的ゆっくりなのだと思われます。しかし、癌性胸膜炎ー胸水の貯留、また、1年前からの腹水貯留が癌性のものだとすれば、私自身の経験と照らせば相当長く頑張ってこられたと思うし、反面これからの予後はかなり厳しいと考えます。
お母さまの年令や、ホルモンレセプターなど手術時の腫瘍の情報がありませんが、今後は内分泌療法などを試してみるか、苦痛除去などの保存的治療を主体にしていくべき時期なのかもしれません。その一環として、個々の症例で社会的条件など差はありますが、できるだけ自宅で社会生活をというのが、患者さん本人の希望であり、主治医の気持ちであることが多いと思います。その場合、睡眠薬や、鎮痛剤、軽い安定剤などを併用することは患者さんの状況に応じて考えて良いと思いますので、主治医の先生とよく相談して下さい。そして患者さんを、御家族、主治医、時に訪問看護やホームドクターといった周囲が一体化してサポートすることが最も大切だと思います。(文責 片山)

 

No.328】 00年11月10日 T.M.さん
乳癌患者の下着等について

32歳の主婦です。私自身に事ではないのですが、私の主人の母(70歳)が、10年前に乳癌の手術をして、胸を切断しました。今度母を温泉連れて行ってあげたいと思っています。温泉に入る時に胸を隠すサポータの様な物はないでしょうか?調べたのですが、あるのは下着の様なものばかりで、濡れてもいいような素材ではありません。水着では、少し大げさな様な気がしますし・・・・
できれば、濡れてもいいような素材で、胸の部分だけ隠すようなサポータがないでしょうか?お手数ですが、お調べくだされば幸いです。

正直申し上げて、乳癌術後の患者さんが温泉に行くというような本当の意味での社会復帰という点に関して、我々医師をはじめ医療従事者は無力なのかもしれません。私自身も外来では看護婦さんや彼女達が紹介してくれる、近くの医療器具の問屋さんを案内するぐらいです。 総じて下着(ブラジャーなど)の下につける人工のパッドのような装具が多く、入浴時に素肌をカバーする適当なサポーターを思い付きません。ひとつもう御存知かもしれませんし、目的とするものとは違うかもしれませんが、中村ブレイス株式会社という所で出している人工乳房ビビファイという製品がありましたのでアドレスを書いておきます。  http://www.nakamura-brace.co.jp/vivify.htm
お答えになっていないかもしれません。申し訳ありません。(文責 片山)

 

No.327】 00年11月10日 M.S.さん
抗癌剤投与後の白血球減少に関して

母親の乳癌治療が始まってから早3ヶ月が経ちました。現在、3クールの抗癌剤投与を終え、癌細胞摘出の手術待ちの状況です。先週火曜日(10/31)及び今週火曜日(11/7)に診察を受けましたが、白血球の数が3,500未満である為、当初11/10頃の予定であった手術の日程も延期しなくてはならないかも知れないとの状況です。現在はとにかく3,500以上に回復することを待っている状態です。そこで質問です。
(1) 白血球の増加を促進する為に何か出来ることはございませんでしょうか? 出来るだけ動いた方が良いでしょうか? 飲食で気を付けるべ きことはございますでしょうか?
(2) 白血球増加の為の注射も以前してもらっていますが、これにはどの様な副作用が考えられるのでしょうか?
焦ってもしかたないのかも知れませんが、少し気になっております。大変お手数ですが宜しくお願い申し上げます。

抗癌剤を投与する際、私達が日常遭遇する副作用のうちで最も多く、またやっかいなのが骨髄抑制による白血球の減少です。飲食で白血球を増やす良い方法というのは私は存じ上げませんが、感染症に対して抵抗が弱まっている状態と考えれますので、人ごみや過労を避け、風邪から肺炎などへ進めぬよう注意が肝要かと思われます。
私が外来治療中にお出しする薬でロイコン(副作用として高尿酸血症、痛風、尿路結石、急性腎不全等)、セファランチン(副作用として胃腸障害、過敏症等)などがあります。白血球増加のための注射とは、おそらくグランやノイトロジン、ノイアップといったいわゆる顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating facter:G-CSF)のことだと思います。副作用としてショック、間質性肺炎、急性呼吸窮迫症候群、発疹、発赤、肝障害、悪心・嘔吐、骨痛、腰痛、発熱などがあります。 私自身それ程使用経験は多くありませんが、今までに重篤な合併症を経験したことはありません。(文責 片山)

 

 

No.325-1】 00年11月05日 S.Y.さん
診断書について(1)

乳癌で手術し、その後 抗がん剤の投薬治療をうけています。2ヶ月ほど休職するための診断書を頼んだところ、主治医に断られました。一般的にそういった診断書はいただけないものでしょうか?

抗癌剤の種類、投与方法、副作用の程度などが分からず、また、休職する理由がその治療によるものなのか、あるいは病気の状態によるものなのかなどが不明なため、残念ながらお答えできません。このような問題は主治医の先生との微妙なニュアンスもあると思いますので、直接相談されるのがよろしいと考えます。(文責 片山)

 

No.325-2】 00年11月07日 S.Y.さん
診断書について(2)

早速の回答ありがとうございました。実は、私本人が患者という訳ではなく、悩んでいる人から相談を受け、こちらに伺おう、ということになったのです。
患者さんは38歳。北海道の病院で、悪性の乳癌と診断され、片方の乳房を全摘の手術をうけました。患者本人に知らされた手術の結果は「肉眼で見た限りリンパに転移はなかった」というものでした。その後の治療の方針を医師から選択するよう言われたのですが、選択肢が、(1)なにもしない。(2)薬を飲んで治療(3年ほどかかる) (3)抗がん剤を点滴、だったそうで、彼女は(2)を選んだということです。
仕事を持っている人なので、(2)についての副作用(吐き気や、脱毛のことなど)を聞いたとき、すぐに復帰して職場に迷惑がかかっては申し訳ないと思い、2ヶ月休職したいと考えました。入院中にその考えを主治医にも言ってあったのですが、退院後 2ヶ月分の診断書をお願いしたところ、2週間分しか書けない、との返答でした。直接連絡をとりたくても、主治医と電話で話すことすらできず、看護婦さんに聞いても「看護婦ではわからない」という返事が返ってくるのみで不安が募っています。これから治療を受けていく上で、主治医との人間関係も大切だと思い、強くお願いすることもできないのか、とも考えるのですが、何か参考になることを伺うことができたらと思います。よろしくお願いします。

今回はいろいろと細かい情報を明記していただいていますが、正直に申し上げてこれでもまだ第3者としては情報量として少ないのです。まず、『肉眼的で見た限り』とありますが、通常組織学的に見た結果で治療法は選択されます。仮に組織学的に見た最終結果であった場合、リンパ節への転移が無かったと考えると、通常マイルドな治療法が選択されると思いますが、まだ38歳とお若く、しこりが大きかったとすると(3)の抗癌剤の点滴という治療法も考慮されると思います。この場合は副作用も強く出る可能性もありますから、長期の休業も必要になることもあるでしょう。(2)の薬を飲むはホルモン剤なのか、抗癌剤(あるいは両方)なのかが分かりません。ホルモン剤のみであれば、あまり強い副作用はありません。そのあたりを考えて主治医の先生は診断書を書かれたのかもしれません。
通常診断書は1ヶ月以内の期間で、その都度患者さんの状況を見ながら書きたしていくことが多いと思います。知人の方も診察を受け、薬をもらいに通院することになると思いますので、その折に主治医の先生によく相談されて、診断書を書いてもらうのがよろしいと思います。(文責 片山)

 

No.324-1】 00年11月03日 ゆう
右胸の痛みについて

右胸にしこりと痛みがあり、診察を受け、エコーとレントゲン検査を受けました。レントゲン検査後20日以上たちますが、検査の際、胸をムギュ〜っと挟まれた痛みがまだ続きます(現在生理後なので普段はあまり痛まない時期なのですが・・・)。今は冷シップを貼って痛みを凌いでいます。検査結果は郵便で報告を受ける予定なので、まだわかりません。痛みってこんなに長く続くのでしょうか?

私も外来に見えた患者さんにマンモグラフィーの検査をよく行いますが、程度の差はあるものの、たいていの方が『痛かった』とおっしゃいますし、結構長く続く方もいらっしゃいます。乳房をかなりしっかりと挟み込まないと良い写真が撮れないので、皆さんには辛抱していただいています。検査結果が郵送とのことで、異常がなければ再受診する機会がないものと思われます。余り痛みが続いて気になるようでしたら、鎮痛剤の投与などを、検査された病院に相談されてもかまわないと思います。(文責 片山)

 

No.324-2】 00年11月05日 ゆう
微小石灰化って何ですか?

No.324-1でご相談しました、‘ゆう’です。早々のご返信ありがとうございました。右胸に痛みと、しこりがあり、検査を受け、病院から、エコーと、レントゲンの検査結果が郵便で届いたのですが、エコーの結果は、異常なし。レントゲンの結果、左胸に‘微小石灰化+’で3ヵ月後に来院するようにとのことでした。(来院時にまた、レントゲン検査をするとのこと)
@微小石灰化って何ですか?
A左胸は全く痛み等は無いのですが、石灰化ができても自覚症状って無いのですか?

微小石灰化は、乳腺組織の変性に伴って起こる石灰成分の沈着のことで、乳腺症や、良性の繊維腺腫の変性で見られることが多いですが、時に乳癌でも現れることがあります。その大きさや数、集まり具合で良悪性の判断をしますが、あなたの場合は3ヶ月後の再検とのことで、今すぐに悪性を疑っている訳ではないが、少し間隔を開けて変化を見てみようということだと思います。微小石灰化がしこりと一致してある場合は、そのしこりの触知といった自覚症状と結びつくこともありますが、痛みのような自覚症状とは直接の関係は普通ありません。(文責 片山)

 

No.323-1】 00年11月03日 たの
断乳後のしこりについて

28才です。過去に4回流産していますが、去年9月に出産し1年間母乳をやっていました。断乳のときに乳腺炎になり(発熱はなかったです)、そのとき右乳輪に小豆大のしこりができてしまいました。断乳から2ヶ月たった現在は、コリコリした感じでつまむと痛いです。乳首をおさえるとほんの少しですが、母乳?もでます。授乳中もたびたび乳腺炎になり、常に乳房にしこりがある状態でした。マッサージしていただいた助産婦さんからは、乳腺が細いとよく言われていました(しかも陥没乳頭なのです)。来年には2人目も希望しているのですが、癌になったら・・・と考えると怖いです。このしこりはこのままにしておいていいのでしょうか?ぜひアドバイスをお願いします。

現在ある乳輪のしこりはおそらく乳腺の詰まりによるもので、乳腺炎の名残りかと思われます。また断乳後もしばらく乳汁様の分泌物が出ることはあるので、出血でなければ心配ありません。陥没乳頭の方は乳腺炎になりやすく、また繰り返すことも多いと思われますが、特に癌になりやすいということはありません。(文責 片山)

 

No.323-2】 01年05月21日 たの
乳頭のしこりについて

現在断乳して9ヶ月立つのですが、その後2人目を妊娠し今妊娠5ヶ月です。前回相談した右乳頭のしこりは、大きさも変わらずそのままあります。先日あるネットで、断乳の時にできたしこりは場合によっては取った方がよい、次に妊娠した場合は母乳のことも考えて乳腺外科に受診した方がよいと書いてあり、悩んでいます。痛みはないのですが、やはり受診して診ていただいたほうがいいのでしょうか。お忙しい所申し訳ありませんが、アドバイスをお願いします。

前回の授乳時から大きさの変わらない乳輪部の腫瘤であれば、前回のご回答の先生と同じご返事になると思います。まず癌の心配はありません。しかし陥没乳頭もあり、また前回も乳腺炎を繰り返していたとのこと、できれば乳腺外来を受診してください。(文責 福間)

 

No.322】 00年11月01日 K.Y.さん
姉のことなのですが・・・

姉の胸に1年ほど前からしこりができていたらしいのですが、何も気にしていなっかたそうです。回りの進めで、この間検査に行きました。その時は、9割がた大丈夫でしょうと言われたようですが、結果悪性の可能性があると言われました。しこりもだいぶ大きいみたいで、わきの下にもしこりがあるといっています。痛みはないみたいです。1回目の検査のときに比べるとしこりが固くなったそうです。あとは、今年・去年の七月ごろにせきが止まらなくなり病院に通っていました。体調的には、だるいだけだそうです。突然のことで私も気持ちの整理がつきません。もしものことを考えてしまうのです。乳ガンなのでしょうか、心配です。 姉は出産歴なし、37歳です。 

お姉さまがどのような検査を受けられたのかは分かりませんが、視診・触診・マンモグラフィー・超音波・細胞診などの検査を受けた結果、9割がた大丈夫と言われたのでしょうか?それならばあまり心配いらないと思いますが、悪性の可能性があるとのことで、後は検査をされた先生にお伺いするしかないと思います。しこりが大きく、固くなっており、わきの下にもしこりがあって、しこり自体には痛みがないとのことで、少し心配です。せきが出たり、身体がだるいというのとしこりとの直接の関係は分かりません。いずれにしても、検査をされた主治医の先生に直接遠慮なく尋ねられるのが一番です。(文責 片山)

 

No.321】 00年10月31日 さとみ
乳房の痛み

はじめまして。今日、ここに投稿させて頂いた理由は乳がんかもしれないという不安にかられてです。最近になって乳房に強い痛みが襲ってきました。どこかにぶつけたワケでもなく、いつもの様に普通に生活をしています。胸が急にズキンズキン痛み息も荒くなり横になれば大分、楽になります。しこりはないと思っていました。だけど、よぉーく触ってみるとコリコリしたものがあります。両胸にあり大きさもデカく感じます。これはしこりなのかそうではないのか分りません。周りに相談する人もなく、友人や彼は「早く病院に行って検査してもらいな」って言ってくれたのですが怖くて足を運ぶ事ができないのです。ガンに関しての知識がまったくないためインターネットで少し症状を見てからでも遅くないと思い乳がんのHPにお邪魔したのですが、乳がんの症状とは一致はしないので安心したのですが、なりやすい体質のとこを見てまた不安が蘇ってきたのです。ガンになりやすい年齢は私とは全然、一致しませんが高脂肪による肥満、は一致しました。私は19歳で年齢による一致はなくとも高脂肪による肥満の言葉がひっかかってなりません。医師に相談するのもみなさんの意見を聞いてからの方がいいと思いましたのでよければ意見を頂けないでしょうか?お願い致します。

まず第一にお返事したいことは病院に行くことを怖がってはいけないという事です。癌であるのによく病院にいって癌だといわれるのが怖くてなかなか受診せず、かなり進行した段階になってしまう方がいらっしゃいます。病院に行って仮に何かの病気が見つかったとしても、別に責められるわけではないし(稀にお医者さんの中にはいろいろ責める人がいるかも知れませんが)、早く見つかればそれだけ治る可能性が高くなるわけだし、また病気でないと診断されたなら、安心できるわけだし、病院に行かないであれこれ不安に思う毎日を暮らす方が損だと思います。直接あなたを診ていない私より、実際に診察した医師の方が確実な診断も下せます。最後になりましたが、メールを読む限りでは乳癌の可能性は低いと思います。もっと気楽な気持ちで病院に行くようにして下さい。(文責 稲葉)

 

No.320】 00年10月30日 M.Y.さん
乳癌の治療方法について

ホームページを拝見させていただきました。実は私の母が乳がんと診断されました。よりよい治療方法を求めているところです。ご多忙中、申し訳ありませんが、何かよいアドバイスがございましたらお教え下さい。
概要 
63歳(女性)160センチ、68キロ、夫と2人暮し。自営業。今年の8月下旬にしこりに気がつく。9月10日、転倒して右足首を骨折、現在も治療中。10月25日、近所の病院で恐らく悪性と診断。10月26日、愛知県癌センターで第二期の癌(しこり2センチ)と診断。リンパ節の方へも転移かも(現在、診断中)。センターでは切除の手術を予定。(11月上旬)。本人の希望は出来るだけ乳房をとらない方がいいが、だめなら切除もやむをえないがということです。

乳癌の治療には手術、放射線、抗ガン剤、ホルモン剤などがありますが、手術の適応であればまず手術を行います(抗ガン剤でしこりを小さくしてから手術を行うということもありますが)。 かなりの高齢であるとか他に重い病気にかかっていて手術に耐えられないとか手術ができない場合を除いて適応があれば手術をします。薬だけや放射線だけでしこりが完全になくなるというのは稀です。手術は乳房切除術と乳房温存術がありますが、温存術の適応は一般的にしこりの大きさが3〜4cmぐらいまで、脇のリンパ節の転移は特に問わない、しこりよりもかなり広い範囲に癌細胞が拡がっている場合は除く、しこりが同じ乳房内にいくつもあるものは除くなどの条件を満たした方です。もちろん病院によって細かな点は多少異なります。またリンパ節の転移が高度である場合や癌が予想以上に拡がっている場合など切除術で行う場合もありますし、手術中の判断で切除術に変更することもあります。手術後その取った癌の組織の結果で、必要なら抗ガン剤やホルモン剤の治療で再発を予防したり、温存で行ったなら乳房に放射線をかけたりすることになります。愛知県がんセンターは乳癌に関して全国でも有数の病院であり(もちろん乳癌以外の他の癌でもそうです)、診断及び治療については信頼のおける病院でまず間違いはありません。手術の術式など主治医の先生に相談して、決まったら先生を信頼して治療を受けて下さい。一日も早く元気になられることをお祈りします。(文責 稲葉)

 

No.319】 00年10月30日 あゆみ
乳癌でしょうか?

はじめまして。私は16歳の学生ですが、この頃左胸が硬くなっている事に気がつきました。以前まで多少右胸のほうが大きかったのですが、今では左胸の方が大きくなっている気がします。また大きなしこりのようなものが乳房の上部にあり、おすと痛みも感じます。これは乳癌の可能性がありますか。

メールの内容を読む限りでは乳癌の可能性は低いと思います。年齢的にも10代というのはかなり稀です。ただ10,20代で良性のしこりで急に大きくなるタイプのものがあります。また乳癌はかなり稀といっても100%癌が否定されるわけではありません。乳腺専門の先生に診てもらうことをお勧めします。(文責 稲葉)

 

No.318】 00年10月29日 なつ
しこりと分泌物について

31歳独身の女性です。7、8年前から両胸のしこりと分泌物の事で悩んでいます。しこりの方は何度か数軒の病院へ行き検査をしてもらって乳癌ではないと言われたのですが、(1件だけ乳腺炎と言われました。)最近、右胸だけが時々痛みます。(生理前でなくても) また妊娠もしていないのに乳頭に白い分泌物がでます。(乳頭が陥没している為、溜まります。) 出産して母乳をあげる時の事を考えると不安になります。なんらかの治療が必要なのでしょうか? よきアドバイスをお願いします。

メールを読む限りでは、両胸のしこりは恐らく乳腺症でないかと思いますが、時に乳癌と乳腺症の区別が難しいこともありますので、できれば定期的に診てもらった方が安心だと思います。乳頭からの分泌物は白いものであれば特に心配ないことが多いです。ただ生理がなくなって(妊娠ではなく)乳汁様の分泌物が多い場合、乳汁漏出症という疾患もありますので、このような病気が考えられる場合は病院で調べてもらった方が良いでしょう。また分泌物に血液が混じって赤色や褐色、黒色になるようでしたら、やはり詳しい検査が必要となります。陥没乳頭は大抵の場合は手指などのマッサージでなるべく乳頭を引き出すようにしたり、感染などを防ぐため清潔にするよう心がけることでよいのですが、陥没の程度がひどいときは乳頭の修正手術を行うこともあるようです。手術に関しては数多くやられている形成外科の先生に話を聞かれるのが良いと思います。(申し訳ありませんが、どの先生が乳頭の修正を多くやっているか私には分かりません)(文責 稲葉)

 

No.317-1】 00年10月29日 Y.K.さん
マンモグラフィ&エコーの写り方について

31歳、6歳の子供が一人おります。右胸の内側左上に(胸ギリギリの骨の上)ボコっというかんじのしこりを見つけ、近くの病院へ行った所2センチのしこりがエコーで写り、心配ないと思うが他の病院で検査をと言われ、今日マンモグラフィとエコーをしてきました。マンモグラフィで、上下で胸をはさんだ際、しこりまではさみきれてなかったと思います。というのも、しこりの場所が胸ぎりぎりで、ほとんど胸のふくらみのない平らな所だったからです。そしてエコーではしこりはみつからないと言われてしまいました。結局、特に問題ないでしょうと言われて帰ってきましたが、自分で触って明らかにボコっと動く感じのしこりがあるのがわかるし、最初の病院で2センチのものが写ったのに本当に大丈夫なのか心配です。質問ですが、エコーで前日写っていたものが写らないと言う事はどういう場合なのでしょうか?最初のエコーは産婦人科でとったものです。それとマンモグラフィではかなり上の方まできちんと写るのでしょうか?教えて下さい。

右胸の内側左上という位置ではマンモグラフィでうまくはさみきれていない可能性があります。乳房の端の方にあるしこりをマンモグラフィでうまく写し出すのは難しいことがあります。そのようなことを避けるために、とる方向を工夫したり3方向でとってみたりするのですが、うまくはさまっておらずしこりを触診で触れるのにマンモグラフィでは写っていないということを私たちも経験します。これに対してエコーは直接しこりの直上からエコーの機器をあてますのでしこりを見逃すということは少ないと思います。ただしこりが骨の上や骨の脇などにありますと、うまくエコーのプローブ(直接皮膚にあてる部分です)が当たらずしこりが写らないこともあります。もう一度マンモグラフィとエコー検査をやることをお勧めします。その際にレントゲンの技師さんやエコー検査の技師さん(病院によっては医師が直接エコーをやるかも知れませんが)にしこりの位置を指さして見落としのないようにしてもらって下さい。(文責 稲葉)

 

No.317-2】 00年10月31日 Y.K.さん
乳腺症と診断されました

先日は早速のお返事ありがとうございました。今日もう一度最初に行った病院でエコーをしてきました。丹念に見てもらった結果、やはり乳腺症であるだろうとの事です。血液検査で、プロラクチンの値が26で少し高いので、しこりを小さくしたければ薬を飲むと小さくなると言われ、パーロデル2.5を処方されました。最初は四分の一錠から始めるそうです。私としては心配のないしこりなら、薬とかできるだけ飲みたくないのですが、きちんと飲んでしこりを小さくしておいたほうがいいのでしょうか?そしてこの薬でしこりは小さくなるのでしょうか?お忙しい中何度もすみません。よろしくお願い致します。

バーロデルという薬ですが、これはプロラクチンが高いことによって生ずる乳汁漏出症や排卵障害、産後に乳汁分泌を止める場合、下垂体の腫瘍によってプロラクチンが高い場合などに用います。プロラクチンの値が26とやや高いので処方されたのだと思います。乳腺症は痛みなどの症状がかなり強い場合を除いて、殆どが薬を飲まずに経過をみることが多いです。以前のこのホームページにもありますように乳腺症自体は乳癌のリスクファクターにはなりません。乳腺症の方は乳腺が硬いので、癌が見つかりにくいためレントゲンやエコーなどの検査をしていく必要があります。そのため経過をみていくわけです。薬に関してはあなたの希望を主治医の先生に伝えてよく相談するようにして下さい。(文責 稲葉)

 

No.316】 00年10月29日 syuumai
乳癌術後の治療方法について

大阪市在住。私の妻が(47歳)、今年8月26日の検査で左胸に乳癌を発見し9月8日に摘出手術をしました。術後の担当の先生の話ではリンパ節への転移が9つ認められたとの事です。全身のレントゲンや骨のレントゲンでは他の臓器への転移は今のところなしとの事です。その後、抗がん剤投与のための検査入院を10月2日より10月16日までの2週間しました。投与した薬の内容は詳しくはわかりませんが、エンドキサン、ファルモルビシン等の薬です。 
健康保険の適用、適用外を別にしてとにかく今なら治る、あるいは少しでも良い方に向かうと思われる方法を教えていただきたいのです。何かで読んだのですが、リンパ液を入れ替えるという治療方法はあるのでしょうか?あるいは他の治療法をお教え願います。
直、今現在下記に示しました健康食品や漢方薬を使っておりますが問題は無いものでしょうか?特に朝鮮人参を使った薬は、せっかく抗がん剤で弱らせ殺そうとしている癌細胞を活性化するのではと心配しております。また、アガリクスに関してはどんなものでしょうか?免疫力の強化に、あるいは、まったく抗癌剤に対して反作用的な働きをしないなら使用したいのです。お教え願います。小林製薬のシイタゲン(栄養補助食品)、日本粉末薬品(株)の日粉コウジン末Nです。

乳癌はリンパ節転移の個数が増えれば増えるほど、再発の可能性が高くなります。転移個数が9個ということですので、術後は強力な補助療法をする必要があります。アドリアシンかファルモルビシンといった抗ガン剤を含んだ多剤併用の治療を行うのが普通です。エンドキサン、ファルモルビシンを使っているとのことですが、これはCEF療法といってリンパ節転移が多いときに行う治療ですので、適当な治療だと思います。また最近は転移個数が多い場合はアドリアシンやファルモルビシンの後にタキソテールやタキソールといった薬を使う方法も試みられています。その他にリンパ節転移が10個以上といったかなり多くの転移がみられる場合は、造血幹細胞移植を伴った高用量の抗ガン剤の治療も選択肢の一つになるかも知れません。(ただこれに関しては有用であるとのきちんとしたデータはまだでていません。)抗ガン剤による治療の他にホルモン受容体が(+)であればホルモン剤による治療も行います。次にリンパ液を入れ替えるというのはリンパ球による免疫療法のことと思いますが、これは患者さんから取り出したリンパ球を、リンパ球を活性化させるものと一緒に培養して、リンパ球を活性化させ患者さんの体内に戻して免疫力を高めて癌を治療するというものです。乳癌での免疫療法の効果に関しては報告が色々でまだ研究段階にある治療です。健康食品や漢方薬については効果などについてきちんと科学的な検証をされていないものが多く、また成分が明らかでないものも多いのであまり過度の期待はしない方が良いと思います。抗ガン剤と併用した場合、どのように作用するのかきちんとしたデータはないのではないかと思います。また私自身も残念ながら分かりません。最後にまとめますと抗ガン剤やホルモン剤による治療は確かに副作用などがありますが、効果や副作用など科学的に検証されたデータが豊富にあり、最も信頼できる治療法であると思います。造血幹細胞移植や免疫療法はどこの病院でも行っているわけではありません。大阪近辺の情報は分かりませんので、もしこれらの治療法について話を聞いてみたいと思うなら主治医の先生に尋ねて、行っている病院を教えてもらうのが良いと思います。(文責 稲葉)

 

No.315】 00年10月29日 NISHI
良性だといわれたのですが...

胸のしこり(葡萄粒大1つと小2つ)の組織検査の結果は良性と言われましたが切除しました。ですがその1週間後に詳しく調べたらやはり悪性だったので周囲組織の切除が必要と言われました。どうしても手術が必要でしょうか。

結論から言いますと、悪性であるとの最終的な診断(確定診断)ですので、手術の適応となります。診断とは、「医師が患者を診察して、病気を判断すること」であり、診察とは、「医師が患者の体を検査して、病状、原因を調べること」です。乳腺に関する検査には画像検査(乳房撮影、超音波検査etc )、細胞診検査、組織検査などがあり、一般的にはこれらの検査結果を総合的に判断して診断することになります。また検査には原則的な順番があり、痛みなどの苦痛を伴わない検査、入院しなくてすむ検査から始めます。
あなたの場合、「組織検査の結果は良性と言われたが,切除した」とありますが、一般的には切除したものを調べることを組織検査と言いますので、貴方が言う『組織検査』とは、それ以前に行われる『細胞診検査』のことだと思われます。細胞診の場合、しこりの一部分の細胞しか調べていないので、悪性であるという判断に達する細胞がとれないこともあります。「一週間後に詳しく調べたらーーー 」との部分が『組織検査』だと思います。この場合は、細胞診と違ってしこりの細胞をすべて直接とって調べるので、悪性かどうかの確定診断を下すことが出来るのです。また、2つ目の可能性としては、間違いなく組織検査を行っていた場合、境界病変があって悪性とは判断が出来ず、更に別の部分を調べると癌があったということも考えられます。
いずれにしても主治医の先生のお話しをよく伺い、納得された上で手術なさることをお勧めいたします。(文責 須田)

 

No.314】 00年10月29日 makichama
石灰化

26歳、未婚、妊娠経験なし。1年半前ぐらいに右胸にビー玉ぐらいのしこりを発見しました。生理も不順で(遅れ気味)産婦人科に行きエコーで診てもらいました。その時は、「良性なので特に問題はないが、子宮が弱っていると言うことで漢方薬を頂き(1週間分)基礎体温を付けて1ヶ月後に又来なさい。」と言う事でしたが、面倒臭がりの私はそのままほっといていました。しかしここ3ヶ月生理が月に2回来るようになり、偏頭痛がひどく、胸のしこりが5cmほどに大きくなったため、また1年ぶりに来院しました。すると、「大きくなってるからとった方がいい」と言われ、大きい病院を紹介されました。大きい病院では、まず触診し、「多分良性だけど、一応マンモグラフィーで撮ってみましょう。」と言われました。レントゲン技師のお姉さんもしこりがころころ動くので良性だから大丈夫と二人で笑いながら小さいおっぱいを一生懸命板に挟んで撮りました。「撮れてなかったらもう1回撮るので待ってて下さい。」と言われ待っていたところ、「石灰化しているのでその部分をもう1回詳しく撮ります。」と言われました。そして、「前の病院で何て言われましたか?」と聞かれ、その後、「良性でも取るんですかね?」とか聞いても、次回の診察で先生に直接聞いてください。と急に言葉少なくなってしまいました。次回の診察は30日です。多分、しこりも動くし良性だと思いますが・・・。親には心配かけるし、話さないつもりです。例えば、良性でも大きいので取らないといけないなら入院は必要でしょうか? 又、傷はどれくらい付くものなのでしょうか? 30日になれば分かるというのにせっかちですみません。よろしくおねがいします。

乳房のしこりが良性か悪性か鑑別するために、触診やレントゲン、超音波検査、細胞診検査などを行います。これらの検査で大部分は診断がつきますが、中にはこれらの検査だけでは良性か悪性か判断が困難なこともあります。このような場合はしこりをとってその組織を調べることになります。細胞診だけでも良性、悪性の診断は大部分で可能ですが、細胞診はしこりの一部分の細胞しか調べていませんので、悪性の可能性が完全に否定できない場合はやはりしこりをとって調べることになります。あなたの様にしこりが急に大きくなった場合もしこりをとって組織を調べた方が望ましいと思います。しこりを取るだけなら、通常は入院せずに外来で局所麻酔による手術で可能です。ただしこりが大きい場合、局所麻酔だけでは痛みを十分抑えられないこともたまにあり、入院して全身麻酔でやることもあります。傷の長さはしこりの大きさより1〜2cm程度大きめの長さです。しこりの大きさが5cmで急に大きくなったのであれば、しこりをとって組織をきちんと調べることをお勧めします。(文責 稲葉)

 

No.313-1】 00年10月26日 INA
乳癌だと宣告されました(1)

5年前から組織を取って調べていて、結果は乳腺症で良性だと言われていましたが、どうしてもしこりが気になるので9月25日にとって調べたら悪性で乳癌だと言われました。 組織検査ではずっと良性だったのに、とって見たら癌だったなんて・・・。それにL1と言われましたが、そんな表記が見かけられないのです。たいていは0期とかTとかなのに。母はかなりまいってしまっています。ただでさえ、病気とかには不安でいっぱいの人なのに・・・。

メールを拝読いたしました。まず、状況がハッキリ分からないので、こちらから質問させて下さい。
1)”5年前から、組織を取って調べていた結果は乳線症と言われ..”とありますが、これは、局所麻酔下に組織を切除して調べていたのですか?それとも、穿刺吸引細胞診という、細い針を刺して細胞の一部を吸引して、その細胞を検査していたのですか?
2)”L1”というのもわかりません。他に何か言われませんでしたか?
3)このメールの内容は、直接先生から聞いた話ですか?それとも、お母さんから聞いた話ですか?
何はともあれ、今一番大変なのはお母さんなのですから、お母さんが順調に治療が受けられるように、家族の方の支えが必要だと思います。(文責:清水)

 

No.313-2】 00年10月27日 INA
乳癌だと宣告されました(2)

早々の御返信を頂いき、有難うございます。このメールの内容は母から聞いたものです。ただ本人自身、言われている時はすでに頭の中が真っ白だったと言ってました。
検査の内容ですが、今までは細い針を刺してとって病理に出していたと言ってました。先日しこりその物を取り出して分かったのが癌だったという事です。今日もまた行って来たようですが、何度も検査をしていて、それでこんな事になってしまって申し訳ないとの事だったそうです。組織(細胞?)の取れていた場所ではガンの疑いのない所だったから疑い無しと言う判断でしたがなんで分からなかったのか、本当に申し訳なかったとの事だったそうです。
L1の他になにか言われなかったのかと聞いても覚えていないとの事でした。ただリンパの方にもいっているみたいで、あけてみない事にはなんともいえないとの事です。抗癌剤も内服ではなく、投与でなければならない状況らしいです。髪の毛もなくなりますと言われてきていました。抗癌剤の副作用で抜けてしまった髪の毛はもう普通には伸びないのでしょうか?
残す方法もあるけれど、母の場合は全部取ってしまった方がよいとの事でした。放射線治療をするにしても、皮膚も弱いし神経質なので、「再発したら」という不安をまた何年も抱えるくらいならば取ってしまった方が安心だと言われてきたようでした。ただ、いろんな体験談を読んでいると、大概の方は2〜3週間で退院されているようなのに、なぜうちの母は、2ヶ月の入院を言われてしまったのでしょうか。それだけ進んでいるとのことですか? 大きさは関係なく転移していないかどうかが心配だと言われてきたようです。初期段階でこんなに長く入院して、抗癌剤も飲み薬ではない場合ってあるのでしょうか?
まわりが不安がると、きっと本人はもっと不安になってしまうと思うので、笑い飛ばして、なんでもない事のように振る舞ってはいるのですが、やっぱり心配です。でも、先生のおっしゃるように、今はとにかく家族が支えないと…と、頑張るつもりです。手術は11月2日との事です。明日(26日)色々と検査をするといっていました。
平均的な「乳癌で手術をして入院をして、抗癌剤を投与して…」2ヶ月くらいだと、いくらほどかかりますか?本人は自分の体の事より(というか考えたくないのでしょうけれど…)そっちの方を心配しています。
また長々と書いてすみません。今はただ、ひとつでも少しでも情報が欲しくて、安心させてやれるような要素が欲しくて、ついついこんなに長くになってしまいました。またご返信頂ければ幸いです。

実際に診察をしているわけではないので、一般的な話としてお答えします。
1)まず初めに、手術前には家族を含めて主治医の先生から話があるはずですから、その時に、自分で疑問に思っている事は、直接主治医の先生に尋ねる事をお勧めします。"また聞き"の話では、誤解を生じる可能性がありますので。また、病名や治療の話もできるだけ、本人だけでなく、誰か御家族の方と一緒に聞かれる事をお勧めします。お母さんが話しているように、本人は頭の中が真っ白になって...という方は多いので。
2)細胞診をくり返してしているにもかかわらず、癌を見逃す可能性について。
穿刺吸引細胞診という検査は直接病巣の細胞をとってくるので、レントゲンや超音波(エコー)検査に比べるとかなり正診率の高い検査です。しかし、正確に病巣を穿刺し、十分な細胞が吸引され、良い条件で固定され、優秀なscreenerがscreening(一次検査)をし、細胞診の読める病理医が診断をくだす。と多くのstepを踏む検査なので、どこか一つが欠けても、正確な診断はできません。たとえ全部が揃っていても、細胞診で診断がつかず、組織検査(生検)で診断がつくという場合も決して珍しい事ではありません。御相談の例も、何度も検査をしたというのは、あやしいと考えていたから何度も針を刺したのでしょうし、細胞診で悪性と判断されないが、臨床的に(触診や、レントゲン、超音波検査で)癌が否定できなかったので、組織を切除する検査(生検)に踏み切って、癌と診断がついたのではないでしょうか。
3)乳房の全摘か乳房温存かについて。
今までの質問でもあったように、どちらの術式でも再発死亡のriskは変わりません。しかし、乳房温存療法では、残した乳房にもう一度癌ができるriskがあり、主治医の先生はそれを心配して全摘を勧めているのではないでしょうか、どうしても乳房温存が御希望であれば、その旨を主治医の先生に話したら良いと思います。
4)術後抗癌剤について。
術後の抗癌剤は手術をして、病理の検査が終わらないとどのような治療が良いかは決まりません。ただ、乳癌の抗癌剤の治療(ホルモン療法剤は除いて、所謂化学療法の抗癌剤)で、内服で手術後に補助的に使って有効な抗癌剤はあまりありません(ちょっと極端な意見ですが)。点滴での抗癌剤の治療が行われる事が多いと思います。脱毛については、ほとんど全部抜けてしまう薬剤から、抜け毛が増える程度の薬剤まで様々です。主治医の先生は、一番ひどい例の話をしたのだと思いますが、その場合でも、治療が終了すれば、髪の毛は必ず元通りに戻ってきます。
5)入院期間。
通常は、手術だけであれば2-3週間だと思います。2ヶ月というのは、手術後の抗癌剤治療を入院で行う事を考えているのではないでしょうか、混んでいる病院では、そんなにゆっくり入院できないので、外来通院で手術後の抗癌剤の点滴を行っています(大体は問題がないので)が、入院ベットに余裕があれば、最初の1コース(3-4週間)くらいは入院で治療ができれば、本人、家族の方にとっては、抗癌剤治療によってどのような副作用が出るか入院中に確認できるので安心だと思います。
6)費用について。
病院によって多少ばらつきがあると思いますが、通常2-3週間の手術入院で、50-100万円の間くらいだと思います。女性は健康保険の3割負担の人が多いので、実際に支払う額はその3割で15-30万円位でしょう。その後の抗癌剤治療はどの薬を使うかで変わってきますが、手術に要した費用まではかからないと思います。
参考になりましたでしょうか。また分からない事はお尋ねください、お答えできる範囲で回答します。
また、他の方の質問と回答も参考になると思いますので、併せて御利用ください。(文責:清水)

 

No.312】 00年10月26日 K.M.さん
ノルバデックスについて

組織検査の結果、癌細胞を取り去っているという結果が出て理論的には何もしなくて良いと言われたのですが、ノルバデックスを予防も兼ねて飲み始めました。多少オリモノが増えたり便秘になったり等の副作用のようなものが出ました(聞いていたとおりです)が、それと関係があるのかどうか? また手術した方の胸に湿疹のようなものがちょっと出ています。この可能性としては、左胸の血流などが悪くなっているからでしょうか? 再発した時もそういう湿疹が出来ることがあるとも聞いてますが、1ヶ月前に手術したばかりなので、その影響が今も残っている可能性がありますか? この薬を飲み始めたら健康な方の片方の胸が小さくなっている気がします。そんなことってあるでしょうか? 教えて下さい。

ノルバデックスというホルモン薬を飲み始めたとのことですが、メールにあるようにオリモノがふえたりといった副作用はよく知られています。胸部の湿疹ですが、ノルバデックスでも発疹がでることがあり、この薬と関係がある可能性はあります。手術後1ヶ月経っていれば、血流が悪くなっているということはないと思います。皮膚の再発の可能性については、組織検査の結果で癌を取り去っており何もしなくて良いといわれたことを考えると、比較的早期の癌だったと思われますのであまり可能性はないと思います。特に心配することはないと思いますが、湿疹については主治医の先生にも相談してください。片方の乳房が小さくなっている気がすることについては、この薬との関係はないと思います。(文責 稲葉)

 

No.311】 00年10月26日 K.N.さん
術後療法について

36才、1児の母親です。StageIIIaの浸潤性乳癌を手術し、リンパ節3個に転移していました。ホルモンレセプターは共にプラスだったため、術後からノルバデックスを服用しています。退院した現在、CMF6回のうち、1回を終了したところです。
1)CMF投与期間でも、ノルバデックスを服用していますが、効果を相殺するようなことはないでしょうか?
2)CMF後は、腹部に月に1度、ホルモン剤を注射する治療を勧められています。以前、卵巣嚢腫の手術(卵巣は残した)をした際、子宮筋腫を指摘されたので、卵巣や子宮に影響する治療は抵抗があります。
不安な毎日です。どうかアドバイスをお願いします。

1)ホルモンレセプターがプラスということは女性ホルモンの影響で癌が大きくなったり、再発しやすくなるタイプの癌ということです。ですから女性ホルモンの作用を抑えることが癌の治療や再発予防につながるわけです。乳癌の治療で用いるホルモンの薬は女性ホルモンの作用を抑える方向に働くものが殆どで、通常はホルモンレセプターがプラスの方に使います。CMFなどの抗ガン剤は直接癌細胞が増えるのを抑える作用があり、ホルモンレセプターがプラスの方でもマイナスの方でも使います。このようにCMFとノルバデックスは癌細胞に作用する仕組みが異なります。どちらも癌細胞を抑える方向に作用しますので、効果を相殺するということはありません。両者一緒に使うことはよくあることです。
2)36歳という年齢を考えるとノルバデックスだけでは女性ホルモンの作用を抑えるのは不十分であると考えます。CMF療法自体にも卵巣の機能を抑える作用があるので、この薬を投与中に月経がなくなる方もいます。StageIIIaでリンパ節転移が3個という事を考えると、CMF投与中はノルバデックスとの併用でよいとしても、CMF終了後は確実に女性ホルモンを抑える治療が必要と考えます。閉経前の方は卵巣の機能を抑える方向に働くホルモンの薬剤であるゾラデックス、リュープリンといったものを使うと思います。子宮筋腫に対して女性ホルモンはどちらかといえば大きくする方向に作用するので、筋腫が大きくなるということはないと思います。卵巣や子宮に影響する治療は抵抗があるとのことですが、リンパ節転移の状況など考えると抗ガン剤だけでなく、確実に女性ホルモンの影響を抑えるために、ホルモン剤の注射を行うことを勧めます。(文責 稲葉)

 

No.310】 00年10月26日 C.M.さん
左胸と左脇の痛みについて

はじめまして。39歳の主婦です。2人子どもがいます。半年くらい前に気づいたのですが左の乳輪の横に薄いピンクのあざのようなものができていました。触るとちょっと痛いような気がしていました。2人とも母乳で育てて、胸はぺったんこになっています。いま、やせているので肋骨が透けるくらいです。だから、しこりとか、引きつりとかはないのですが、最近左の乳房が痛いように思います。ずっと重いようなジーンとしているような感じです。気にしすぎるせいか脇の方まで痛いような気がしています。病院で診察を受けたほうが良いでしょうか。

メールに書かれてあるピンクのあざのようなものとは出血斑なのでしょうか。それとも何かの皮膚の色素斑のようなものでしょうか。内容を読む限りでは乳癌の症状である可能性は低いように思われますが、直接診ておりませんので、心配ならば病院で診察を受けることをお勧めします。(文責 稲葉)

 

No.309】 00年10月25日 Y.I.さん
乳癌の疑いがあります

私の母(53歳)は今日、乳癌の疑いがあり病院へ行ってきました。結果は右乳房の左側に野球ボール位のかたまりがありました。今は良性か悪性かの結果待ちです。やはり発見がおくれたみたいでした。このような状態でも治療方法はあるのでしょうか?悪性だとしても助かった例はあるのでしょうか?私達、家族は最高の治療を与えて乳癌を治したいです。突然のことでとまどってしまい、どうして良いか分かりません。どうかアドバイスをおねがいします。

学会で返事が遅くなり、申し訳ありません。右乳房のしこりの検査結果がでるまでは御本人、御家族とも心配なことと思います。このしこりが悪性、即ち癌であると仮定してお返事いたします。乳癌がどれだけ進んでいるかどうかを判断するには、しこりの大きさや脇の下にリンパ節を触れるかどうか、他の臓器に転移しているかどうかなどを調べます。しこりの大きさでいえば、大きいほど進んでいるということになります。野球ボール大ということであれば、確かに大きい部類に入ると思いますが、だからといってあきらめてはいけません。しこりが大きくても、リンパ節や内臓に転移していないこともあります。またリンパ節や他の臓器に転移していても、抗ガン剤やホルモン剤などの薬に反応して小さくなることもあります。乳癌の治療は手術、放射線、抗ガン剤、ホルモン剤などいろいろな治療法を組み合わせて行っていきます。20年前・30年前に比較して成績もよくなっています。どんなに進んでいても、治ることはあります。恐らく癌という確かな診断がついたら、治療法や予後など先生から説明があると思います。仮に予想以上に進んでいたとしてもあきらめずに治療をきちんと受けることが大事です。患者さんや御家族の方はどうしても不安になり、結果ばかり考えてしまいがちですが、今は結果などを考えるより、治療を受けるということを第一に考えるようにして下さい。よいアドバイズとなったかどうか分かりませんが、がんばってくれることを期待しております。(文責 稲葉)

 

No.308-1】 00年10月22日 K.T.さん
乳癌と宣告されて(1)

義母が10月17日に乳癌だと宣告されました。私は本当にガーンという感じで居てもたってもいられずにメールを書いております。それからというもの、毎日のようにインターネットでいろいろと調べてはみるものの、なんだかよくわからずに、どうしても教えていただきたく、よろしくお願い致します。
S病院に10月24日に入院をする予定です。右乳に2・5cmぐらい、左に0.5mmぐらいの癌が発見され、リンパ節にもどうやらあるようです。素人の私にとっては、早くその癌を切除して欲しいと思いますが、手術までに検査をするそうですが、MRIとCT、それと骨に転移しているかどうかを見る検査をする予定だそうです。普通MRI、CTを2回もするんですか?なんだか、2回もすると相当進んでいる癌なのかと不安になってしまいます。あと、HPを参考にさせていただくと、あんまり、2回も受けたとは、書いてないような気がして、仕方ありません。あと、骨に転移しているかどうかの検査を受けるってことはかなり進んでいる癌だということですか?教えてください。もうひとつS病院には、乳腺科というものはないんですか?それとも、S大学病院の方から先生がお見えになるのでしょうか?何分素人の者で、言っていることが伝わるかどうか心配ですが、よろしくお願いします。

MRI検査とCT検査の両方を行うかについてですが、この文面からだけでは分かりませんが、MRIとCTそれぞれ違う部位をとるのであればもちろん両方行います。また同じ部位を検査するにしてもMRI検査とCT検査では守備範囲が違います。例えばMRIよりCT検査の方がわかりやすい病変やその逆にMRIの方が発見しやすい病変などありますので、両方行なうこともあります。また骨の検査については乳癌では骨転移は割と頻度が高く、しこりが小さくても骨転移があることがあります。私のいる病院でも手術前になるべく骨転移を調べるために検査をするようにしております。もちろん検査をするからといって、かなり進行しているというわけではありません。S病院は乳腺科という独立した科はないと思います。乳癌の治療は外科が担当すると思います。S大学病院は乳腺内分泌外科という診療科はありますが、そこから先生がS病院にきているかどうかは分かりません。
診断されてから入院まで1週間のようです。手術日が決まっているのかどうか分かりませんが、入院まで1週間というのは早いほうだと思います(もちろん癌が進んでいるからというわけではない)。あせらず心配せずに治療を受けて下さい。(文責 稲葉)

 

No.308-2】 00年12月03日 K.T.さん
乳癌と宣告されて(2)

先日はお忙しいところ早々とお返事頂き、ありがとうございました。11月1日に右乳房全切除、癌の大きさ4.5cm、リンパ節摘出手術を受けました。リンパ節の転移も35個中32個悪性だったということで、只今放射線治療を受けています。ところでリンパ節って何個あるんでしょうか?まったく素人の質問ですみません。他の方のご相談を拝見していると転移が1個だとか、少数の方が多いのですが、32個も悪性だと多臓器とかに転移する可能性が高いのではととても不安です。放射線治療を5週間受ける予定ですが、だいたい放射線治療では妥当な期間なのでしょうか?その後も引き続きという事があるんですか?放射線も3箇所受けています。右胸、わきの下はわかるのですが、鎖骨のちょっと上にも当てているみたいです。なぜ首にもあてるのでしょうか?そちらに転移している可能性があるからでしょうか。放射線治療が終了したら、抗癌剤の治療をするみたいですが、進行性だと言われ強い薬を使うのではと副作用が心配です。以上についてご返事いただければ幸いです。

1)まず、腋窩(わきの下)のリンパ節の数ですが、個人差があり、10個くらいの人から、数十個ある人まで様々です。
2)”35個中32個悪性”というのは35個中32個に乳癌の転移があったという意味だと思いますが、確かにリンパ節転移が10個以上あるという状況は、残念ですが、再発のriskはかなり高いと考えた方がよいと思います。今後再発のriskを下げるために、きちんとした補助療法が必要になると思います。
3)現在の一番新しい国際的なguidelineでは、リンパ節転移が多い場合(4個以上ある場合)は、乳房切除術後に放射線治療を勧めています。その場合、胸壁と腋窩と鎖骨上(鎖骨のちょっと上)、胸骨傍にかけるのが一般的で、かける量は総量で50-60GY、日数にすると5-6週間になります。胸壁と腋窩は手術をしてあるのですが、細かい細胞が残っているといけないということで照射します。鎖骨上と胸骨傍は通常の手術では切除できないリンパ節で、とくに鎖骨上は腋窩の次に転移が現れる場所なので、腋窩にたくさんの転移があった場合は、鎖骨上のリンパ節が腫れていなくても、鎖骨上のリンパ節にまで癌細胞が流れていると考えて照射します。但し、乳房切除後の放射線治療は、手術した方の腕がむくむという副作用が問題です。
4)放射線治療の後の全身の抗癌剤治療は、義母さんの場合は再発のriskを減らすために必須と考えます。当然強い薬が必要になるでしょうし、それに伴って、強い副作用が現れます。使う薬の種類によって効果、副作用は違います。薬の効果と副作用については、十分に主治医の先生に聞いて、どの治療を選択するかをよく相談して決める必要があります。蛇足ですが、ホルモン治療が効くかどうか(乳癌細胞のエストロゲンレセプターが陽性かどうか)も確認しておいた方がよいと思います。(文責 清水)

 

No.307】 00年10月22日 K.S.さん
乳房のチクチクした痛みについて

ここ最近左乳房がチクチク痛いときがたまにあります。何かにあたるとか体を動かした時に痛いというわけではなく、普通にしている時に、チクっとくることがあります。気になりだすと何も手につかなくなってしまうので、質問させていただきました。乳房を指でなでてみても特にしこりがあるようには思わないのですが・・・。また、それに伴ってかどうかはよく分かりませんが、肩こりもここ最近あります。肩こりと乳房の痛みと関係があるのでしょうか?また、一昨年、卵巣脳腫という病気になり卵巣をひとつとりました。こういった病気になる人というのは、乳がんなどにもなりやすいなどということはありますか?近々会社で健康診断がありますが、現在26歳なので、婦人科系の検診を受けることはありません。しかし、レントゲンなどはとると思います。それで乳房の病気などは発見できますか?やはりちゃんと病院へ行ったほうがよいでしょうか?今月の生理は約5日前に終わりました。また、病院に診察に行くとしたらどういった病院を選択し、何科に診察に行けばよいでしょうか?詳しく教えていただけると幸いです。一度婦人科系の病気になっているので、心配でたまりません。「相談室」の内容も読み乳房の痛みなどについても書かれてありましたが、直接お聞きしたくて。。。どうぞ、ご回答くださいますようお願いいたします。

乳房の痛みはその多くがホルモンの影響による乳房のはれる感じからおこるといわれています。乳癌の症状として多いのは、しこりや硬い部分がある、乳首から分泌液がある、ひきつれやへこみを認めるなどです。肩こりと乳房の痛みが関係があるかどうかはっきりと分かりませんが、外来では両方の痛みを訴える方はわりといます。卵巣嚢腫と乳癌は直接的な関係はないと思います。一般の会社検診でのレントゲンというのは恐らく胸のレントゲンと思われますが、これでは乳癌はわかりません。マンモグラフィー(乳房をはさんでレントゲンをとります)というレントゲン検査でなければ乳房の病気はなかなか分かりません。(もちろん乳房の超音波検査を会社検診でやればよろしいのですが、通常の会社検診はマンモグラフィーも乳房超音波もやらないことが多いです) メールの文面からは心配ないように思いますが、心配なら病院に行かれることをお勧めします。ある程度の規模の公的総合病院、例えば市・県・国立、共済組合や日赤、済生会などの準公的総合病院や癌専門病院や大学病院などであれば大丈夫です。ただし癌専門病院や大学病院は病院によっては、いわゆる癌の検診での受診は受け付けないところもありますので、受診する前に問い合わせされたのが確実と思われます。受診する科は外科です。乳腺外科とか乳腺内分泌外科などと専門の科があればそこを受診してください。専門の科に分かれてなくても、公的な総合病院であれば、外科の医者は数人いますので、乳腺を専門に診ている医師が大抵一人ぐらいは、いることが多いです。(文責 稲葉)

 

No.306】 00年10月22日 サリー
乳頭異常分泌の生検について

右乳頭からの異常分泌が3年前からあります。1年前はエコーと細胞検査だけで「異常なし」と言われましたが、今夏やはり不安で別の病院に通い始めました。エコーもマンモも乳管造影も分泌物の細胞検査もやりましたが確定診断がつかず、来週生検(乳管腺葉区分切除)を行うことになりました。マーカー値(?)が高いとも言われており、癌の可能性も示唆されています。しこりはなく、症状は分泌(明らかに血)のみですが、このような癌もあるものでしょうか。また、生検の後遺症(先生からは多少へこむが傷はそう目立たないといわれています)及び、生検を受けることの妥当性について教えていただければと思います。

血性乳頭分泌は乳管の増殖性病変でみられる症状で、良性の病気(乳腺症や乳頭腫など)でも癌でもみられます。病変が小さければしこりとして触れずに、乳頭分泌だけが唯一の症状となることもあります。マンモグラフィ-、エコー、乳管造影、分泌物の細胞診検査とやって、確定診断がつかないとなると、生検を行うのは妥当であると考えます。乳管腺葉区分切除であれば、傷は小さいですし切除する範囲は小さいので、重大な後遺症というのはあまりないと思います。(文責 稲葉)

 

【No.305】 00年10月18日 K.Y.さん
乳癌手術と検査日程

45才の独身女性です。10月6日に大学病院の乳腺専門の医師に診てもらって、いきなり、「癌だと思います」と言われました。若い時から胸にしこりがあったので、自分でも安心していたのですが、2年前に3cmぐらいになってそれからは徐々に大きくなっています。ここ2ヶ月さすがにおかしくて、病院に行ったのです。12日に、組織検査の結果も癌だと言われました。リンパもはれていると言う事です。大きさは、5cmだと言う事で、直ぐに手術できないそうです。右手が何時もしびれていたので、それも癌の影響でしょうか。今後、骨の検査とエコー検査があるのですが、10月24日と11月2日なのです。自分では毎日が地獄のような日々なのに、検査が遅すぎて、先生の時間と検査の空きでこうなったのですけど、その前に死にそうな気分です。先生からは、大きいとか、初期で無いのは間違いが無いとか、末期でも手術はすると言われ、心はずたずたです。
今は転移がどの程度なのか心配です。7月6日に会社の健康診断をしたのですけど、血液検査では、お酒を飲むのに肝機能はAでした。肺のレントゲンも異常なしです。その後に、肺や肝臓に転移した可能性は有るのでしょうか?この手の痛みは骨の転移なのでしょうか? 

患者さんみなさんがよくおっしゃることですが、乳癌と診断されて手術をするまで待っている間がいちばん精神的につらいといいます。自分の病気の段階はどの程度か、どこか他の臓器に転移はしていないだろうか、手術はうまくいくだろうか、手術後の治療はどうなるのだろうかなどと考えれば考えるほど不安になるといいます。私たち医者側にとってはいつも言っていることが、患者さん一人一人にとっては初めてのことですからみなさん不安になるのは当然だと思います。転移がどの程度か心配だとのことですが、今は他の臓器への転移よりも手術のことを考えるようにして下さい。癌の治療は癌細胞の数を減らすことから始まります。仮にどこかに転移があったとしても、手術で少しでも癌細胞を減らすことで、その後に行う抗癌剤などの全身治療に期待がもてるようになります。
手の痛みやしびれが癌によるものかどうか、診察していませんのではっきりとは分かりませんが、手足の先の方の骨転移というのは少なく、乳癌の骨転移は体の中心に近い部位(例えば背骨や骨盤、肋骨など)に多いという傾向があります。
おそらく手術が終わるまでは不安な気持ちでいっぱいでしょうが、がんばってください。(文責 稲葉)

 

【No.304】 00年10月17日 みかん
骨髄移植について

はじめまして。29歳で8歳の子供がいます。私は6年前に乳房摘出術を受け、去年、肺と骨に再発しCMF療法を2回受けたのですが効果は無く、タキソテールとゾラデックスに切り替えました。ちなみに、明日から8回目に入ります。効果はかなりあると思います。在宅酸素のお世話になっていたのに、走り回れるほど回復したので・・・。多少の呼吸苦はありますが。
今回からタキソテールの治療を外来で行う事にしたのですが、自分からお願いした事なのに少し心配です。注意する点はありますか?
切りかえる前に、骨髄移植も勧められたのですが効果のほどはどうなのでしょうか?胸水が溜まり、体力も落ちてしまったので見送られましたが・・・。今後、骨髄移植の事も考えた方が良いのでしょうか?

骨髄移植を伴う抗ガン剤による治療についてのご相談ですが、私のいる病院で乳癌の患者さんで行った例はなく、私自身もこのような治療に携わった経験がないので、一般的なことしかお答えできません。乳癌で骨髄移植を伴った抗ガン剤の治療が有用であるかどうかはまだはっきりと結論がでていません。骨髄移植を伴わないまでも通常量より多い量での抗ガン剤治療と骨髄移植を伴った高用量の抗ガン剤治療を比較した欧米でのデータをみますと結果がまちまちであり、また治療後の経過をみている期間が短いこともあり、骨髄移植についてまだはっきりと結論がでておりません。今後の方針としてはこの文面からのみ判断した私自身の個人的な意見としては、タキソテールとゾラデックスで症状の改善が多少みられたことから、もう少し今の治療を続けていっても良いような気がしますが、ただ骨髄移植を伴った抗ガン剤の治療について、私自身も具体的な経験がないので、乳癌の治療で骨髄移植に携わっている専門の先生にセカンドオピニオンという形で直接診てもらい、意見を聞くというのも良いと思います。タキソテールの外来治療ですが、私のいる病院では、タキソテールの治療では大部分の方が外来通院で行っています。白血球が減ることが多いので、私自身患者さんに高熱がでたら病院に連絡する様、説明しております。はっきりとしたお答えができなくてすみません。(文責 稲葉)

 

【No.303】 00年10月16日 J.T.さん
母乳なのか乳汁なのかわかりません

何気なく乳首をしぼったら乳白色の液が右乳首からでました。昨年10月に出産して以来、今年の5月まで母乳をあげていました。母乳のときのように2〜3個所の穴からでるようなのですが、量は、3,4滴で出なくなるのですが気になります。

おそらく母乳であると思います。乳白色の液体ということですから特に心配はないと思います。(文責 稲葉)

 

【No.302】 00年10月16日 M.S.さん
脇下リンパ腺の腫れ

私は38歳既婚、2人の子供がいる主婦です。この3ヶ月の間に3度乳腺の検査を受ける機会がありました。いずれの場合も検査はマンモグラヒィーと超音波で、“のう胞は見られるが癌はない” という診断でした。ただ、“左脇下のリンパ線が少し腫れている” と言われたことが気になっています(1回目と3回目の検査の際言われました)。特に風邪をひいていたとかいうこともなかったのですが、生理的にリンパ腺がはれているということもあるのでしょうか。

脇の下のリンパ節が少しはれているとのことですが、そのリンパ節が1cmぐらいの小さく軟らかなもので1,2個触れるぐらいであれば、特に心配ないことが多いです。特にはっきりした原因がなくても小さなリンパ節を触れることはあります。また本人が風邪などのウイルス感染や細菌感染に気づかずに、リンパ節がはれるということもあります。このような感染症以外でも、もちろん乳癌でも脇の下のリンパ節がはれることはありますが、3回検査をして癌の所見はないとのことですから、おそらく大丈夫であると思います。まれに乳房にしこりを触れずに脇の下のリンパ節のみ腫れて見つかるということもありますが、このような例はごくまれです。経過をみて3ヶ月後ぐらいにまた診察を受けるのでよいと思います。もちろんリンパ節が増えたり大きくなったり、硬くなったりした場合はすぐに診察を受けて下さい。(文責 稲葉)

 

【No.301】 00年10月15日 ゆん
乳房の変化

34歳の子供なしの主婦です。8ヶ月前に触診・マンモグラフィー・超音波の検診を受けて異常はありませんでした。それから最近まで自己検診を怠ってしまいました。先月右胸にズキンと痛みが走り、またいつもの生理前の胸が痛くなる症状かと思って触ってみると、左右差があまりなかった乳房が右胸だけ弱冠小さくなっている事に気がつきました(元々あまり乳房は大きくありませんが)。自己検診してみて、しこりらしきもの・くぼみ・分泌物は無いですし、乳頭位置の変化はありません。「乳房の左右差は当然ある」とのお話しですが、右胸だけ小さくなったのは事実ですので、何故こうなったのかとても気になっています。

乳房の大きさに左右差があるのは通常よくみられる事です。ではどのくらい差があればおかしいといえるのか、はっきりと決まってはいません。右の乳房が小さくなったとのことですが、残念ながら直接診察していませんのでなぜこのようになったのかはわかりません。まず心配ないと思いますが、念のため一度検診か専門医の診察を受けることを勧めます。(文責 稲葉)