No.12309 骨転移について

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2019.12.18 匿名 0 Comments

骨転移についてお伺いいたします。よろしくお願いいたします。

1) どんな症状が出たときに検査が必要でしょうか?

2) どんな検査をどんな順番でするものですか?

3) MRI検査結果の画像がどんな時に骨転移と診断されるのでしょうか? 診断の時には、整形外科の医師も関係するのでしょうか? 骨転移の最終診断はどういうことで決まるのでしょうか?

4) MRI検査する時に造影剤なしでしたら、診断ということがしづらいのでしょうか?

5) 骨転移も早期発見が大切でしょうか?

6) どんな治療法がありますでしょうか?

7) 骨転移した場合、そのあたりを押すと痛いものですか? 特徴的な痛みや出方はありますか? また体を動かさなくても、痛みが続くものですか? 痛みはだんだん強くなるものですか? もし首の頸椎に転移した場合、そこの部分が膨らんだりしてわかるものですか? また、その部分の近くの肩や背中が痛んだりするものですか?

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2019.12.19 清水 0 コメント

1)骨転移の基本的な症状は痛みです。骨転移によって骨が破壊され、その部分の強度が低下するので、転移の部分に負荷がかかった時に痛みを感じるというのが最初の症状です。したがって日常生活で負荷がかかることが多い、脊椎、骨盤骨、大腿骨転移による、背部痛、腰痛、股関節痛、坐骨神経痛などが比較的多く見られる症状です。しかし、これらの症状は転移でない場合にもよくある症状なので、痛ければすぐ検査というわけではありませんが、今までにない痛み、時間的に長引く痛みなどがある場合は、転移の可能性も考えて検査をします。

2)通常は痛い部分のレントゲン写真を撮ります。一昔前は骨転移の検索目的で骨シンチが行われていましたが、無症状の場合は検査しない方針になり、あまり頻回には使われなくなりました。それよりも、骨転移を疑っている場合はMRIを先行させることが多いようです。また、CT検査でも骨転移がよくわかるようになってきたので、他の転移部位の検索も兼ねてCT検査を先に行う場合もあります。全身の骨を調べるためには骨シンチが適しています。順番は状況によって異なります。

3)溶骨性病変の場合、T1強調で低信号、T2強調で高信号が典型的なMRIの骨転移所見です。画像の診断は放射線科の先生が行います。その結果、乳がんの転移が疑われれば、乳腺外科の医師が治療にあたり、転移以外の病気であれば整形外科の医師が治療にあたります。骨転移の最終診断は、画像所見に加えて、腫瘍マーカーや、臨床経過を踏まえて総合的に診断します。骨一箇所だけの転移が疑われるような場合、整形外科の先生にお願いして全身麻酔下に骨生検を行って、確定診断をつけることもあります。

4)骨転移の診断目的であれば、造影なしのMRI検査で可能ですが、微妙な病変の場合、造影MRIの方が良い場合もあります。

5)初発の乳がんの診断は早期発見が大切ですが、転移の診断の場合は早期発見が大切ではありません。それは、転移を早期発見したからといって、その後の生存期間が延びるわけではないという臨床試験の結果があるからです。それなので、術後、定期的に画像検査を行なって転移を早期に探すということが、診療ガイドラインから削除されているのです。

6)骨転移の治療は3本柱が必要です。一つは癌細胞に対する治療で、これは原発がんのsubtypeに応じて、内分泌療法、化学療法、分子標的治療薬を選択します。骨転移はER陽性乳がんであることが多いので、内分泌療法が選択されることが多いです。次は、骨転移によって弱くなった骨を強くして骨折を予防する治療です。骨転移部の癌細胞が死滅しても、そこは空洞になっていて骨折しやすい状況です。ゾレドロン酸(ZOMETA)やランマークといった骨にCaを沈着させる薬(正確には破骨細胞の働きを抑える薬)を使います。そして最後が痛みの治療です。消炎鎮痛剤から最強の麻薬に至るまでの範囲で、その痛みを取る治療をしっかり行います。痛みが限局していれば、除痛目的の放射線治療も大変有効な治療法です。

7)体表に近い部位であれば、押すと痛むことがあります。転移部位や転移の大きさなどが様々なので、骨転移に特徴的な痛みというのはありません。前に述べたように、力が加わった時に痛くなるというのが特徴ですが、どのような動作をすれば自分の体のどの骨に力がかかるのかは意外と知られていません。一例をあげると、椅子から立ち上がるという動作というのは、腰椎に相当の負担をかけます。そのため、歩いても走っても痛くないが、椅子から立ち上がる時にちょっと痛いのです、という症状の場合、検査をお勧めしています。繰り返すようですが、力が加わった時に痛みが出るので、痛みが続くということはあまりありません。転移が広がっていけば、痛みは強くなってきます。そして、脊椎の圧迫骨折や、大腿骨骨折などを起こせば当然強い痛みがきます。頸椎に転移しても、その部分が膨らんでくることはありません。それは頸椎として触れるのは頸椎の棘突起と言われる部分です。通常転移は椎体に起きこることが多いので、棘突起にまで転移が及ばない限り触れません。胸骨転移のような場合、痛みも起きず、骨折も起きないので、転移巣が膨隆して気付くことはあります。肩や背中の痛みも転移部位によってはあります。例えば、肩甲骨に転移すると、肩を動かした時に痛みを感じることがありますし、胸椎や肋骨転移の場合、背中が痛くて気付く場合もあります。しかし、このような痛みは骨転移以外でもよく出る症状なので、痛みだけで転移と決めつけるわけにいきません。(文責 清水)

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