No.13065  今後の治療について(HPNo.13056-2)

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2024.04.28 G 0 Comments

今後の治療についてご相談お願い致します。先日病理結果が出ました。同時性両側性乳癌で、悩んだ末、両側全摘手術を終えました。

右 : ステージ1 PT1bN0M0、浸潤性乳管癌10×8㎜、リンパ節転移なし、リンパ管脈管侵襲1y0v0、エストロゲン>90%、プロゲステロン50%、HER22+fish陰性、ki 10%、グレード1

左 : ステージ1、PT1cN0M0、アポクリン癌12×11㎜、リンパ節転移なし、リンパ管脈管侵襲1y0v0、エストロゲン0%プロゲステロン0%、HER22+fish境界域、ki <5%、グレードなし。「右はルミナルとの事、左がトリプルネガティブなので、半年の抗がん剤治療が必要であり、再発を防ぐ為に強い抗がん剤になる。3ヶ月×3ヶ月抗がん剤をする事で、左だけではなく右にも抗がん剤は効く。トリプルネガティブはかなりの確率で3年以内の再発率が高い。また抗がん剤治療には家族の協力が必要になってくる。」との話もありました。浸潤癌から術後アポクリン癌との事でしたが、「アポクリンなど考える必要はない、あくまでも患者はトリプルネガティブだから、抗がん剤しか治療法がない事だけを考えればよい。」とのことでした。

「抗がん剤をするなら早い方が良いですか?」と質問したところ、5ヶ月以内ならば良いので、次回までに抗がん剤をするかしないか、いつからするか決めてくるようにとの話がありました。抗がん剤をしなかった場合のデメリットを聞いたところ、「やはりかなりの確率で再発をします。」と言われ、一度考えますと返事をして、今、アポクリン癌について、ki67が低値な事で抗がん剤治療は必要か、調べてみているところでした。このような相談室があり、藁にもすがる気持ちでメールさせて頂いています。トリプルネガティブである以上、アポクリン癌だった事は考えずに抗がん剤治療を受けた方がやはり再発率は下がるのでしょうか? この場合、右側にも抗がん剤が効くからと言う事ですが、私としてはki値が<5%と低値である為、再発率を下げるとしても、どのくらい効果があるのか教えて頂きたいと思っています。ホルモン治療のみでは左には効かないと言われましたが、私としては抗がん剤治療はせずにホルモン治療で良いのではないかと考えていますが、先生でしたらどのような提案をされますでしょうか?  やはり抗がん剤治療しなければ、再発率高いでしょうか? ご教示、よろしくお願い致します。

追記

本日主治医より連絡があり、HER2境界域を遺伝子検査に出す事になりました。HER2が陽性になる確率は高いでしょうか? 精神的に追いつかずにおります。以前13056にてご相談させて頂きご丁寧なお返事をありがとうございました。本日受診をし、HER2の遺伝子検査は陰性となりました。また主治医の先生が本日から変更になり、右側はホルモン療法でレトロゾール内服10年間となりました。前回アポクリン癌の診断を受け、用紙に記入されており、確認したところ、「アポクリン癌の可能性はあるけど、トリプルネガティブだから浸潤癌と考えて化学療法をしないと5年以内には34%はいなくなる。再発した場合は12ヶ月~18ヶ月で亡くなる。」と言われました。アポクリン癌と書いてある用紙を持参しましたが、癌は変わるからと話され、何をもって判断すべきか、また精神的に不安定になっております。トリプルネガティブで考えた場合は、Ki値は関係なく、5%としても抗がん剤治療しなければ、再発率が高く、生存率は低くなるのでしょうか? 何もなくアポクリン癌などの診断が出る事はないように思ってならないのですが、トリプルネガティブは低値でも抗がん剤治療で再発率は変わりますか? 前回アポクリン癌はすべてトリプルネガティブとおっしゃって頂き、その通りだったと思っていたので、混乱して再度ご相談させて頂きました。取り留めのない文章で申し訳ありません。よろしくお願い致します。

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2024.04.28 清水 0 コメント

前回もお話ししたように乳がんの病理診断は浸潤性乳管がんなのか特殊型乳がんなのかに分けて考え、浸潤性乳管がんの場合そのsubtypeを考えるという順番で考えます。アポクリンがんは症例数も少ないため、通常の浸潤性乳管がんと比べることができにくいので、抗がん剤を使わないと再発率が高くなるかどうかという正確なデータはありません。それでも一生懸命探すと次のような論文がありました。

1)41例のアポクリンがんを集めたという私の個人の経験よりもう少しエビデンスレベルの高い報告です。その論文では、術前化学療法を行なったアポクリンがんでは化学療法はほとんど効いていなかった。しかし、約3年間追跡した41例の予後はtriple-negative1の浸潤性乳管がんより再発は少なかった、ということで、アポクリンがんは化学療法が効きにくいがんだが、予後の良い乳がんであると結論づけています。

2)もう一つの論文は米国のSEERという有名なデータベース(がん症例を集積したデータ)があるのですが、そのデータベースの2010年から2016年の間に乳がんと診断された31362例を調べたところ、アポクリンがん366例とtriple-negative浸潤性乳管がん30996例があり、5年死亡率はアポクリンがん9.1%、triple-negative浸潤性乳管がん22.9%と有意にアポクリンがんの方が少なかった、という報告。

3)もう一つはヨーロッパのデータベースからの報告で、210例のアポクリンがんで、T1,2 & n0 & Ki67<20%というアポクリンがん36例と、同じ条件のtriple-negative浸潤性乳管がん(このような乳がんは極めて少ないのですが、アポクリンがんと比較するためにこのような条件を設定したのだと思います)24例とを比較したところ七年半の追跡でアポクリンがんの再発はゼロで、triple-negative浸潤性乳管がんは4例の再発があった。(症例数が少ないので統計的有意差はありませんでした)ということです。

このようにいずれも症例数の少ない報告のため、強い口調ではないのですが、アポクリンがんはTriple-negativeではあるが、浸潤性乳管がんのtriple-negative乳がんよりおとなしい、再発の少ない乳がんである。また化学療法の効果も少ないという報告が多いように思います。(文責 清水)

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