初めまして。母(63歳)の事でお尋ねします。2022年に右側線維腺腫の疑い(4mm)と診断され、翌年の検診では「異常なし」と診断されました。ところが、2024年の検診で再び右乳房に腫瘍が見つかり乳癌と診断されました。診断後、2025年1月下旬に全摘手術を受けました。その際の病理検査の結果が下記になります。
浸潤性乳管癌、ステージⅠA、腫瘍径:11×9 mm、リンパ節転移:陰性、切除断端:陰性、悪性度:2、Ki67:11~30%、ER:陽性、PR:陰性、HER2:陰性
主治医が、「ホルモン療法だけで効果が得られない恐れがあるので、化学療法(TC)も追加で行うか判断に悩む」とのことで、OncotypeDXを行いました。OncotypeDXの結果は下記になります。
再発スコア:24、9年遠隔再発率:10%、化学療法の上乗せ効果:<1%、定量的単一遺伝子スコア:ER陽性(11.5)、PR陰性(<3.2)、HER2陰性(8.8)
以上の結果より、「化学療法なし、アナストロゾール5年服用」の治療となりました。OncotypeDXに関する記事を読み、「閉経後で再発スコア24」の場合、化学療法が必要ない事は承知しております。母に幾度か説明をしたのですが、本人はとても不安に感じております。特に「化学療法が必要なスコア26と値が近いのに、アナストロゾールの服用のみ」という点を1番気にしています。26と24でスコア的に差がないのに、上乗せ効果が「<1%」になるのかが気になるみたいです。私も「試験の結果だから…」としか言うことができず困っております。そこで、①「治療方針は主治医と同じであるか」、②「スコア26では上乗せ効果があるのに24では「<1%」になるのか」をご教示頂きたいです。お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
貴女のお母様の主治医は、「悪性度:2」「Ki67 11~30%」であるので、「化学療法を追加で行うか判断に悩む」言われたのだと思います。そこでホルモン受容体陽性乳癌の予後を予測する多遺伝子検査のオンコタイプDX検査(化学療法を追加しなくてよいかどうかの根拠となる検査)をした訳です。
オンコタイプDX検査は21の遺伝子に基づく検査で、0~100までの数字で再発スコア(RS)を示し予後を予測します。そして、この再発スコア検査の臨床的妥当性及び有用性は85,000例を超える患者さんを対象とした広範囲な臨床研究により確立されています。その内容の中に、TAILORx試験の探索的サブグループ解析及びNSABP B-20試験による、RS結果及び年齢別の化学療法の上乗せ効果の報告があります。
これによりますと、サブグループは、ⒶRS 0~10 ⒷRS11~15 ⒸRS16~20 ⒹRS21~25 Ⓔ26~100とすると、50歳越えの患者さんでは化学療法の上乗せ効果なし(<1%)は、ⒶⒷⒸⒹのグループで、Ⓔのグループで上乗せ効果は>15%でした。50歳以下では、上乗せ効果がない(<1%)のはⒶⒷのグループで、Ⓒのグループで1.6%、Ⓓのグループで6.5%、Ⓔのグループで>15%の上乗せ効果となっています。
従って、貴女のお母様はRSは24なので、Ⓓのグループとなり、50歳越えなので「化学療法上乗せ効果はなし」となり、化学療法は行わなくてよいことになります。
化学療法の上乗せ効果とは、ホルモン療法に化学療法を加えることで、がんの遠隔再発(再発又は死亡)のリスクをどのくらい下げられるかを示します。個別ではなく、再発スコア結果の値によって分けられたグループごとに算出されます。従ってスコア26はⒺグループで、スコア24はⒹグループとなり、50歳越えではⒺグループは上乗せ効果は>15%で、Ⓓグループは上乗せ効果なし(<1%)となります。
主治医ともご相談の上、納得のいく治療法を選択し、頑張っていただきたいと思います。(文責 須田)