2023年12月に乳房部分切除術を受けました。術当時49歳 閉経前。病理検査の結果、8.0mm×8.0mm 進展度 f 、 pT1b、リンパ節転移なし(センチネルリンパ節生検2箇所)Surgical margin(-) intraductal spread(+) comedo pattern(-) calcification(-)Nuclear grade 1 Histological grade II リンパ管侵襲像あり 静脈侵襲像なしHER 2/neu 1+ ER3+ PR3+ ki67 32.4% p53−術後放射線療法を受け、現在タモキシフェンを内服中です。 オンコタイプDX RS値9で、9年遠隔再発率3%で化学療法をしておりません。
1)主治医は被曝の問題もあるので、最近は術後画像診断をしない場合が多いと言います。もちろん希望があればするのは構わないとも。するなら5年とか10年の区切りですれば良いのでは?とも言われました。乳癌の部分切除後ホルモン療法を受けた知人が、術後10年でCTで肺転移が見つかったと聞き心配になりました。腫瘍マーカーが上がってからより、転移の検索ならPETが早く診断できるかなと思いますが、PETがやりすぎなら、造影MRIでやや広範囲で調べるのもいいのかなとも思っています。一般的に術後の遠隔転移の検索をするなら、私くらいの病状の場合、どのくらいのタイミングで、どの画像検索でする場合が多いのでしょうか?
2)術後、徐々に傷口のひきつれが目立ってきました。左上外側の部分切除で、左乳房組織を切除したと思われるところから傷口にかけて硬結している感じです。ちなみに術後1年目くらいに、数ヶ月、モンドール病を併発しました。血管炎(索状血管)が違う時期に2本の血管になってしばらく大変な思いをしました。当時Dダイマーは異常なしでした。このような硬結は、モンドール病になった体質によるものなのでしょうか、それとも一般的によくあることなのでしょうか? 他の先生方は硬結に対してどのような対処法を指導をされているのかお聞きしたいです。主治医は、その部分をゴリゴリマッサージするしかない、腕のストレッチをしないと硬くなって腕が上がらなくなる人もいると言いますが、マッサージしたり、ストレットした翌日がやや痛みが増すので、本当に大丈夫なのかなと心配しております。
お忙しいところ大変恐縮ですが、急ぎませんのでお答えいただければ助かります。
1)先に結論を言いますと、ガイドラインにも書いてあるように、乳癌術後の遠隔転移を探す目的の画像検査は行わないのが現在の主流の考え方です。何故検査しないのか不思議に思うでしょうね。その理由は三つです。A)ガイドラインに書いてあるように、術後毎年遠隔転移を見つける画像検査を行なった群と行わなかった群の比較試験の結果、両群間の生存率に差がなかったという事実から、毎年検査を行ったからといって長生きできるわけではないこと。B)どの画像検査でも100%転移が見つけられるわけではない(転移をみおとす偽陰性がある)と同時に、どの検査にも転移でないのに転移かもしれないと疑う所見(偽陽性)が出る可能性がある、つまりどの検査も不確かな検査であること。C)一番大切なのが三番目の理由です。貴女が乳がんと診断された時から貴女は所謂キャンサーサーバイバー(Cancer Surviver)になるのです。サーバイバーには共通の思いがあります。それは0期と診断されたサーバイバーにも3期と診断されたサーバイバーにも共通の思い“転移再発の恐怖”です。更に4期のサーバイバーも含めると、“転移再発による死の恐怖“です。この思いを持っているかいないかがサーバイバーと非サーバイバー(がんと診断されたことが無い人)の大きな違いです。非サーバイバーから見れば転移の可能性が0に近い0期のサーバイバーが転移を心配するなんておかしいと思うのですが、現実的には0期のサーバイバーでっても自分は転移再発しないと安心しているサーバイバーは少ないと思います。では心配に対処するためにどうするのが良いでしょう?心配を払拭するために画像検査を行う?確かにその検査を行い、結果異常ないと言われた日はとても安心するかもしれません。がその翌日からまた心配が始まります。転移を探す検査をするということはこの繰り返しです。そこで考え方を変えてみましょう。転移がないことは良いことで、転移があることは悪いことというように白黒つけて考えるのではなく、全員灰色(白っぽい灰色も黒っぽい灰色もありますが)と考えてはどうでしょう。白黒決めずに灰色として現実を受け止めるのはどうでしょう。よく言われる“がんと共に生きる”ということです。がんになる前は真剣に考えることがなかった、人生とは?生きるとは?幸せとは?家族とは?仕事とは?友人とは?…について改めて考えてみましょう。人の人生には限りがあるということを今の目の前に突きつけられました。その中でどう生きていくかを考えることが大切で、転移があるかないかを探す(灰色が白なのか黒なのか決める)ことの意味は小さなことではないでしょうか。貴女の状況も9年目の遠隔転移の確率が3%と極めて低い状況ですよね。他の乳がんの患者さんからみれば心配するなんておかしいと言われますよ。
2)“傷口のひきつれ“がどのようなものかは、診察していないのでよくわかりません。主治医の先生に診てもらって対応を考えて下さい。一般論として、術後の創の治り方は切除範囲の大きさ、切除部位、その人の体質などさまざまな因子が絡んでくるので一概に”こうなる“と決められません。創の下も硬くなって治る人、柔らかく治る人など様々です。自分の傷はこういう形で治るのだなと受け入れていただくのがよいのではないでしょうか。無理にマッサージなどしない方が良いと思います。(文責 清水)