いつも参考にさせて頂き不安な気持ちを和らげて下さり有難うございます。主題について、組織診でHER2 2+(術後病理で全体的に見るからという理由でFISHして頂けませんでした)、術後病理検査結果で0となりました。術後、病室で麻酔から覚めた時、摘出病変を医師から見せられました。(保管時間は不明ですが)摘出してからその時点までは室温で保管されていたとの事。乳癌診療ガイドライン2022 を拝読し、長時間室温保管により変性、病理結果が変わってしまったのではと危惧しています。
この場合、
1)組織診での検体、術後病理検体ともにFISHしてもらうことは可能なのでしょうか。
2)可能な場合、どちらの結果を信頼すべきでしょうか。鮮度という意味では組織診かと思いますが・・・。
3)手術摘出検体の不適切保管、固定不良があって、FISHやオンコタイプにかければ正確な結果がでるのでしょうか。
乳がんでは、①がん細胞の表面にHER2(人表皮成長因子受容体2型)というタンパクが通常より多く発現し、さらには②HER2タンパクを発現させる遺伝子(HER2遺伝子)が増加しているタイプの乳がんがあります。これらの乳がんの患者さんでは、このHER2をターゲットとした治療薬(抗HER2薬)が有効であることが示されているため、乳がんの診断時にはHER2が増えているかどうかを確認するHER2検査(①・②)が行われます。
①については、HER2タンパクの発現状況はIHC法という病理検査で確認します。結果は、スコア0(陰性)からスコア3+(陽性)の4段階で示されます。IHC法でスコア2+(疑陽性)であった場合は、②の遺伝子が増加しているかどうかについて、FISH法という別の方法で再度検査を行います。FISH法は、HER2遺伝子がどの程度増えているかを確認するもので、多く増えている場合に陽性と判定します。
IHC法でスコア3+(陽性)、もしくはFISH法で陽性と判定された場合、「HER2陽性」タイプの乳がんと診断され、抗HER2薬による治療の対象となります。
一般には、日本病理学会の「乳癌における HER2 検査・病理診断ガイドライン」により、HER2 の適正な検査・病理診断の標準化および精度管理が行われおり、摘除標本の扱いについても、乳癌の治療を行っている施設では一般に手順通り行われていると思います。
貴女の場合、『組織診(浸潤部かどうか不明)の時点ではHER2タンパクの発現状況はスコア2+(疑陽性)で陽性ではない状態であった。そして術後病理検査では日本病理学会のガイドラインに従って検索対象組織である浸潤部を検索したところ、浸潤部にはHER2タンパクの発現状況はスコア0(陰性)であった。』ということだと思われます。主治医の先生と充分ご相談の上、納得のいく治療を選択して下さい。(文責 須田)