年齢64歳、ルミナールA、ステージ1、0.8ミリの浸潤性乳管癌、リンパ転移なし、エストロゲン陽性8%、プロゲステロン陽性5%、HER染色法0.脈管浸潤陽性「静脈」、断端陰性、ki10-20% で、部分切除。切りとった部分の輪切り5ミリスライスから、たまたま2ミリの浸潤癌ありです。両方切除済み。 治療方法は、放射線2.8Gy 15回 追加照射3回の50Gyです(後7回で終了です)。ホルモン療法レトロゾーン10年。治療は始まっていますが、どうしても私の乳がんの事を知りたくて、オンコタイプ出して頂きました。先生には、私の大きさなら、オンコタイプをやる必要はなしと言われましたが、オンコタイプの結果は、再発スコア27、10年遠隔再発率16%でした。10年遠隔再発率の高さに驚きましたが、先生には、「私位の大きさの人は、余りオンコタイプをしていなくて、薬もタモキシフェンしか使用していなかった結果で、今は閉経後の人にはレトロゾールを飲んでもらっているので、26以上の人は抗がん剤を推奨されているが、0.8ミリの浸潤癌で、遠隔転移は余りなく、レトナゾールを飲んでいくので、余り遠隔転移を心配しなくて良い」と言われました。抗がん剤治療もしない予定です。
オンコタイプはいつ頃からあり、又レトロゾールは最近の薬療法なのでしょうか? オンコタイプは、タモキシフェンを飲んでいた時の結果と言われました。再発スコアも高いですが、10年後、私の結果から遠隔転移はどの位になるのでしょうか? 余りよくない結果で心配です。もう放射線、ホルモン療法も始めており、抗がん剤治療は先生は考えていないみたいです。オンコタイプの結果をどう捉えたらいいのか、よく分かりません。少しでも分かりやすく説明して頂けたら幸いです。宜しくお願い致します。
メールを拝見し『0.8ミリの浸潤性乳管癌』、『2ミリの浸潤癌』という言葉より、病理検査の全体像を推測しますと「微小な浸潤と考えられる乳癌の治療について」の質問と思われます。乳がんの発育の状態として、大部分が非浸潤癌で、ごく一部に浸潤癌があるものと推測いたします。
(1)乳がんの微小浸潤癌は、「微小浸潤は最大径1mm以下の浸潤巣で、微小浸潤癌は最大の間質浸潤巣の大きさが1mm以下の乳癌」と定義されています。病理検査で摘除された乳腺を5mm間隔のスライスで全割標本を作った場合を考えてみますと、1mm以上5mm以下までの浸潤巣がプレパラート上に割面として出ない可能性がありますが、全割標本はこのようにして作成されます。全割標本の病理結果と臨床データーにより検討された結果、非浸潤癌と定義通りの微小浸潤癌の予後は同等で良好であることが報告されています。また1mm以上5mm以下までの浸潤巣のある癌は、非浸潤癌・定義通りの微小浸潤癌と比較して無遠隔再発生存率に差は見られなかったと報告されており、一般には術後の薬物療法は行っていません。(ホルモン療法を行っているとありますが、念の為だと思います。) 定期的なフォローは重要で、もし万が一再発転移が見つかった場合、その時に化学療法を使うことになると思います。
(2)オンコタイプDXの検査は癌を構成する細胞の遺伝子検査で、適応となる患者さんは、「微小な浸潤と考えられる乳癌」よりさらに発育が進んだ浸潤癌で、早期・ホルモン受容体陽性、HER2陰性、リンパ節転移陰性またはリンパ節転移1~3個陽性の条件で、①「腫瘍が大きい」、②「ホルモンレセプターの発現が弱い」、③「増殖のスピードが速い」、④「リンパ節転移がある」といった化学療法をした方が良いのではと迷う方々です。オンコタイプDXの一番の目的は、化学療法が不要な患者さんを見つけ出すことだと考えられており、この検査では化学療法の必要性を完全に判定できるわけではありません。
従って(1)の状態であるので、それを構成する癌細胞のオンコタイプDXの検査(2)での結果がどうあろうと(1)の考え方を優先して現在の治療を主治医は提案されていると思います。癌の浸潤巣がごくごくわずかな場合、オンコタイプDXで化学療法の必要性を完全に判定できるわけではないということになります。主治医とよく相談して納得のいく治療を選択してください。(文責 須田)




