お世話になります。2021年に放射線治療及び化学療法で乳ガンを完治したが、その後の5年間ずっとファイザーアロマシンを服用しております。お聞きしたいのは、その薬は今後も飲んだ方がよいか否かとのことです。お手数ですが、よろしくお願い致します。
術後に抗癌剤を行う目的は、どこかに潜んでいる可能性のある微小転移を根絶させることですが、結果は10年以上の長期の経過を見ていかなければ分かりません。ホルモン療法は、ホルモン受容体陽性の患者さんの手術後の初期治療として行うことで、再発や転移を最大で半分ほどに減らせます。
エストロゲンは乳癌細胞の増殖に関与し、増殖因子とよばれています。閉経後は卵巣機能が衰えるため、代わりに副腎で作られるアンドロゲンを基に、脂肪組織内にあるアロマターゼという酵素の働きでエストロゲンが作られます。アロマシンはアロマターゼの働きを完全に不活化することで、エストロゲンの生成を抑え乳癌細胞が増殖しないように働きます。
アロマシンの副作用は40%の服用者に現れる可能性があり、ほてり、多汗、悪心、高血圧、疲労などがあります。またエストロゲンには体温を調節したり、骨の形成を促進し、骨の吸収を抑える働きがありますが、エストロゲンが低下すると、体温調整がうまくできなくなるホットフラシュが起きたり、関節痛や骨密度の低下により骨がもろくなり骨折や骨粗鬆症が起こることがあります。
手術後の初期治療として5年~10年アロマシンを長期に内服することに因り、再発の減少をもたらすエビデンスがありますが、副作用も投与期間の長さとともに増加します。どのくらいの期間内服するかについては、術後の病理検査で判明した癌の性質や進行度などを勘案し、メリットとデメリットのバランスを考え、投与期間を決定する事になりますので、貴女の乳癌の情報を一番分かっている主治医に相談し、納得のいく治療をしてください。(文責 須田)




