48歳で、左乳がんで全摘術後です。病理は、ER/PR陽性、HER2陰性、Ki67約6%、pT2N1 (センチネルリンパ節1/1に3mm)です。センチネルリンパ節生検のみ施行し、郭清は行っていません。放射線治療は今後予定しています。オンコタイプDXはRS9で、5年遠隔再発率4%、化学療法の上乗せ効果2.3%と説明を受けました。婦人科での検査ではFSH 92、LH 44、E2 25で、閉経に近い状態ではないかと言われています。今後の治療として、タモキシフェンは行う予定で、タモキシフェン+リュープリンまたはタモキシフェン+TS-1のどちらが自分により適しているのか悩んでいます。私のように閉経に近い状態でも、リュープリンの上乗せ効果があるのか気になっています。また、副作用や更年期症状の強さも心配しています。私のような条件では、タモキシフェンに追加する治療として、リュープリンとTS-1のどちらを優先して考えるべきでしょうか。
1)タモキシフェン+リュープリンの治療について
ホルモンレセプター陽性乳癌では、エストロゲン(女性ホルモン)は乳癌を増殖させる因子です。エストロゲンは、閉経前の女性では主に卵巣で作られ、卵巣機能が低下した閉経後は副腎や脂肪組織で作られます。タモキシフェンは乳癌細胞内のホルモンレセプターにエストロゲンに対し競合的に働き、エストロゲンがレセプターに結びつくのをブロックすることにより、手術後の肉眼的に見えないどこかに潜んでいる乳癌の増殖を抑え、転移や再発を減らします。リュープリンはエストロゲンを作る卵巣に作用し、閉経状態を作って体内のエストロゲンの量を減少させ、乳癌の増殖を抑えます。タモキシフェン単独治療とタモキシフェン+リュープリン(卵巣機能抑制)のグループを比較した試験にはSOFT試験があり、対象はホルモンレセプター陽性の乳がん患者さんです。SOFT試験の結果で関係する部分を要約しますと、15年間の無再発生存率は、タモキシフェン単独治療グループとタモキシフェン+リュープリン(卵巣機能抑制)治療グループを比較すると、卵巣機能抑制を加えることにより、3.7%高くなっていました。
2)タモキシフェン+TS1の治療について
タモキシフェン単独とタモキシフェン+経口抗がん剤TS1の併用療法の比較試験は日本で行われたPOTENT試験です。対象は、①再発リスクが中等度または高度(腋窩リンパ節転移があれば無い人より再発リスクは中等度以上)②ER陽性かつHER2 陰性の患者さんです。5年間の標準的術後内分泌療法に1年間のTS1を併用した群に分け、浸潤性の病変のない生存延長をするかを比較しました。結果はTS1を併用することにより、乳癌の再発や新たな癌のリスクを37%改善しました。乳癌診療ガイドラインでは、再発のリスクの高い場合(リンパ節転移がある場合は適格基準に当てはまる)、内分泌療法にTS1を1年間併用することを強く推奨しています。
以上より、貴女の場合、SOFT試験とPOTENT試験のいずれの対象者にも当てはまりますので、主治医はタモキシフェン+リュープリンまたはタモキシフェン+経口抗がん剤TS1を勧めたものと思われます。費用や副作用については別として、治療に重点を置いて考えるとすれば、センチネルリンパ節に転移があるのでPOTENT試験に従ってタモキシフェン+ TS1が第1選択と思われます。貴女の乳癌の情報を一番よく分かっている主治医に副作用・費用等、情報を伺って納得のいく治療を選択して下さい。(文責 須田)




