乳がんの術後補助療法(TS-1)の継続についてご意見を伺いたく相談いたしました。
* 年齢:57歳(閉経後)
* サブタイプ:ホルモン受容体陽性(ER陽性、PR陽性)、HER2陰性
* リンパ節転移:微小転移およびリンパ節転移陽性(1個)
* オンコタイプDX(RxPONDER試験):
* 再発スコア(RS):10(超低リスク群)
* 内分泌療法単独での5年遠隔再発率:2%
* 化学療法の上乗せ効果:明らかな上乗せ効果なし(<1%)
【現在の状況と副作用の経過】
リンパ節転移陽性ということで、術後補助療法としてTS-1(100mg/日)を勧められ内服を開始しました。しかし内服9日目頃から泥状便となり、14日間の内服終了後の休薬6日目に激しい腸炎・腸痙攣と水様便を起こし、日常生活が完全に破綻するほどの強い苦痛を経験しました。現在は減量(80mg/日)や内服日数の短縮(10日内服・11日休薬)での再開を提案されていますが、仕事(講義・授業)や生活への支障に対する不安が極めて強い状態です。
【ご相談したい点】
1)オンコタイプDXでRS=10、化学療法の上乗せ効果が1%未満と出ている閉経後患者において、重篤な腸炎リスクやQOLの低下を伴ってまでTS-1を継続する医学的な必要性・妥当性は、どれほどあると考えられますでしょうか。
2)TS-1を中止し、内分泌療法(ホルモン療法)単独で治療を進めた場合、再発予防として十分な効果が担保されていると判断してよいでしょうか。
客観的な専門医のご見解をいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
ホルモン受容体陽性乳がん術後の化学療法をどうするかについては歴史的な流れがあります。第一世代:腫瘤の大きさが大きい、もしくはリンパ節転移がある場合(特にリンパ節転移がある場合)は予後不良(再発が多い)なので積極的に化学療法を行うとしていた時代。第二世代:乳がんのsubtypeが調べられるようになると、腫瘤の大きさやリンパ節転移の有無よりもそのガンの持つ性質(subtype分類)が重視されるようになり、Luminal A(ER,PgRが強陽性でHer2(-)かつKi67が低値)の場合は、リンパ節転移が三個以内なら化学療法は不要で内分泌療法単独が推奨され、逆にtriple negativeやHer2 Typeの場合はリンパ節転移がなくても化学療法が推奨されました。第三世代:腫瘍の遺伝子検査ができるようになると、Oncotype Dxを始めとする遺伝子検査の結果に基づく判断が推奨されるようになってきました。subtypeに基づく判断とOncotype Dxに基づく判断は8割方は一致しますが、一致しないケースもあり、その場合はOncotype Dxの検査結果を優先します。日本でも遅ればせながら一昨年にOncotype Dxが健康保険で承認され、少しずつ普及してきます。前置きが長くなりましたが、回答は
1)私は基本的に継続する必要性は低いと思います。もっと言えば、副作用が出ているならば中止すべきだと思います。
2)Oncotype Dxが示す通り内分泌療法単独で十分な効果が担保されると思います。(文責 清水)




